季節感を深呼吸! いまにつながる江戸時代の暮らし「長崎歳時記手帖」 第3回 くんち(その2)
いまに伝わる年中行事や風俗習慣を、江戸後期の長崎で生まれた「絵」と「文」ふたつの歳時記を中心に、一年間かけてご紹介していきます。
「絵」は、町絵師で出島出入り絵師の川原慶賀が描いた「長崎歳時記」のシリーズ。時に「シーボルトのカメラ」とも言われた慶賀さんの絵は、西洋人が日本人の生活を知るための依頼によって描かれていますので、当時の生活の様子を、まさに写真のように伝えてくれます。
慶賀作品は原則として長崎歴史文化博物館のウェブサイト内にある「川原慶賀が見た江戸時代の日本(I)」からの引用でご紹介します。
「文」は、長崎の地役人であり、国学者でもあったという野口文龍による「長崎歳時記」。元旦から大晦日までの年中行事やならわしが、細かく記されています。鎖国時代において国際貿易港であった長崎には、日本全国に共通していた年中行事に加えて独特の文化や風習がありました。文龍さんはそれがとにかく面白く、書きとめずにはいられなかったようです。
ふたつの「長崎歳時記」をまとめた拙著「川原慶賀の『日本』画帳」をお手元に置いていただくのも、もちろんおすすめです!
コロナ禍で、お祭りや行事ごとが中止・縮小されがちないま、江戸時代の長崎の歳時記を通して、ほんのひとときでも、四季折々の風をお届けできたらと考えています。
秋の大祭、くんち
第二回目、そして第三回目は、長崎の秋の大祭「くんち」についてお届けしています。
くんち奉納踊りと「お下り」「お上り」の神輿の行列は、去年も取りやめになったのですが、去年は「非常事態」という感覚でした。しかし今年は、なにかじわじわと、季節を感じるセンサーが封じられたような、空気がちょっと薄くなってしまったような、去年にはない寂しさが感じられました。
http://www.nmhc.jp/keiga01/kawaharasite///target/kgdetail.php?id=970&cfcid=142&search_div=kglist
さて、前回は「小屋入り(こやいり)」、「庭見せ(にわみせ)」、「人数揃い(にぞろい、にいぞろい)」、「傘鉾(かさぼこ)」、そして奉納踊りをいくつかご紹介しました。今回は、くんちに賑わう町の様子と、奉納踊りとは別に行われる流鏑馬などの行事、そして周辺地域で行われる「郷(さと)くんち」について見ていきます。
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