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「兎、波を走る」@新歌舞伎座 【観劇感想文】
※ネタバレ有り感想文です。考察ではないです。
※一度きりの観劇だったので、間違い・見逃し・勘違い多いはずです。
【まず最初に】今回もNODAMAPらしさ満載で満足。
劇団のなかでも特に好きな劇団のひとつが、NODAMAPです。
十年どころでなく追っかけてます。
なので、
・「比喩や隠喩を使いまくったトリッキーな台詞回し」
・「シンプルな布や棒などの道具を使い見立てを駆使し、群舞を生かした演出や舞台転換」
・「実は多重構造な世界表現」
・「最終的にはかつての現実の事件のモチーフがほぼ必ず浮き上がってくる」
という共通要素には、なじんでいます。むしろ楽しみにしています。
その期待を充分に、十二分に今作もまた応えてくれました。たいへん満足です。
ひとつずつ短く「スキ!」ポイントを書いてみます。
【台詞回しについて】
早口で怒涛のようにまくしたてる台詞群には、初見だと特に圧倒されがちです。序盤だと自分も聞き逃すことが多いです。
それでも、
単純な言い回しを何度も使って印象付けたり、
同じ台詞を意味の違えるものとして使ってみたり、言葉や文章を「遊び道具」として柔軟に扱っているのが楽しくて仕方ないです。
印象的で(まだ覚えている)のを少しだけ挙げます。
・もう、そうするしかない国 = 妄想するしかない国
・兎、波を走る = USA GI NAMIWO HASHIRU
・「ドキッとした」
・「お母さん、お母さん、お母さん、……」
・「何か、大切なことを忘れてしまった気がする」
【演出について】
今回は「らしいなー!」というのと、「新しいなあ!」というのとがありより新鮮な感覚が強かったです。
【らしさ】、は
布(紙)をダイナミックに使った演出、多重に見える時計や鏡などシンプルな小道具から想起できたアリスの世界、統率のとれたエキストラの方々のうつくしい群舞。
【新しさ】、は
極彩色の人形が埋め尽くすさま、最先端のVR・映像を取り入れていたこと、です。
ピーターパンが世界を飛ぶ映像の見せ方や、バーチャルアイドルをチェーホフ(偽)たちと論争させるとか、目新しすぎました。
【物語、世界観について】
まず冒頭はどこともしれない場所をさまよう兎。
つづけてその誌的な兎の台詞をメタ的に一刀両断する元カリスマ女優が登場する廃墟の遊園地跡。
そして娘を探す母親の登場する迷子相談所、アリスがさまよう不思議の国、また遊園地跡、そのいくつもの世界を跳梁する兎、……とシームレスに世界が入れ替わり立ち替わり目まぐるしくにぎにぎしく、どこへ観客を連れていくのだろうと心をかき乱されますが、
すっと終盤、わかりやすく、「なんの物語だったのか」が示されます。
このわかりやすさは、前作「フェイクスピア」と同じくらい直截的で、だからなおさら、「忘れかかっていた、忘れてはいけない現実」の物語だとつけつけられた気がします。
「拉致」の物語だったと気づかされてからの、アリスとその母親、脱兎、そのほんとうの役柄のあまりの「そのままさ」に、かえってなんで気づかなかったんだろうと思いました。半ズボン教官なんて、半ズボンに気をとられたけれど、制服、そのままかの国のものじゃないか。
お母さん、お母さん、お母さん、……
とエンドレスに響く呼び声の切なさが今も耳に残ります。
アリスは元の世界に帰りたい。母親に逢いたい。
母親だってアリスに逢いたい。それが、叶わない。いや、それは、駄目でしょう……?なんとかしなきゃ、駄目でしょう?自分は、脱兎ではなく、まだいま生きている人間なのだから。
【俳優について】
・高橋一生さん、バイタリティの塊。
フェイクスピアしかり、一人芝居も拝見しましたが、露伴を例に出すまでもなく憑依するように役に徹して、眼を離させない。魂から演技をしている。
・松たか子さん、この方も舞台で見なければ「上手い役者さん」としてだけ観ていただろうけど、舞台、とくにノダマップでのサラブレッドなのに泥臭さも感じる役への取り組み方は毎回惚れる。台詞の聞き取りやすさが群を抜いている。
・多部未華子さん、舞台に向いた良く響く声をしていて、とても小柄で顔なんておにぎりくらいしかないのに(幻)、人を惹きつける小悪魔的な立ち回りが適役過ぎる。他作品ですが「キレイ」のケガレ役が好きでした。
・秋山奈津子さん、大好きなんです。
艶っぽい佇まいとシリアス・コミカルどちらにもナチュラルに振り分けられる技量、この方がいれば舞台が締まるという安心感が随一。
・大倉孝二さん、ほかの方にはない味があって大好きです。
ナイロン100℃も好きな劇団で、コミカルに場をにぎわせて、作品そのものを柔らかく手に取りやすいものにしてくれる気がします。
・大鶴佐助さん、初見の方でしたが、まず目を惹く身体能力だけでなく、
台詞回しも滑らかで、柔軟にいろんな役回りに向いてそうで期待です。
・山崎一さん、渋くて安心して観られる重鎮のひとりの方。
真面目にちょっとおかしなことをこなせる、ほっとできる存在です。
・野田秀樹さん、今作もパワフルでエネルギッシュ。
いつもいつも凄い舞台を有難うございます。の気持ちしかない。
【最後に】
NODAMAPって、一度きりの観劇だと終盤に明らかになる「事件」「事象」の、含められていただろう序盤の伏線がとらえきれないのが、ちょっと悔しい部分はあります。
それでも、ほかの方の感想や考察をみて、そうだったのか、とたくさん気づける、二時間でよくこんなに中身を詰め込めたな、と思える舞台であり続けるので、やっぱり見逃せない舞台なのは確かです。
だから観ると必ず、新作が楽しみだな…!生きよう…!となるのですね。
と、
だらだらと長くなりましたが、読んでいただけた方がおられましたら、
ありがとうございます!
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