見出し画像

難民キャンプへ(25)

 翌日はきのう耕した部分に、保湿剤を埋めて、ホウレンソウの種をまき、また土をかけ、水をまくという単純な作業を始めた。水は、畑の横に掘削された井戸からひいていて、一遍にたくさん水がまけるホースをつけて、畑に水をまいて回る。とても貴重な水だ。一日に使える水の量は決まっており、それによって畑の広さも測ってある。慣れない陽射し、体力勝負の単純作業で、いつもランニングを欠かさず、体力には少し自信のあった私も2日目にはふらふらだった。農作業を始めてから一週間、パン作りの体験もしながら、あっという間の日々だった。私たちの派遣は10日余り、明日から3日は南ポルに移動して、医療救援物資と食糧支援物資を難民キャンプに運ぶことだった。貧富の差が激しいことからくる民族対立で村を追われた人たちの支援に当たる手はずだった。治安が落ち着いた今も戻る場所がなくて宙ぶらりんに浮いた難民キャンプで過ごしている人たちがいるのだ。
 朝から、皆がリュックを抱えて、輸送のトラックを待った。皆、今は危険が比較的に少ないとはいえ、昔の紛争地帯で、インフラも整備されていないようなところに行くので、ちょっと緊張の面持ちだった。奈津がこっそり「ねえ、マヤ、難民キャンプはここよりたぶんひどいだろうね」とトラックに揺られながら小声で言った。私も「耐えられるかなあ、ちょっと不安だね」と答えた。後は、皆とたわいないおしゃべりをして過ごした。朝9時に出て、昼ごろ難民キャンプに到着した。スタッフの幸子さんと、キャンプの責任者の間で軽く挨拶をした。お昼はビスケット菓子のような栄養補助食品とスポーツドリンクで慌ただしく済ませると、私たちが運んできた大量のスポーツドリンクの荷物、飲料水の荷物の運び出しに早速とりかかった。1個1個の段ボールが重いので、台車を持ってきていた。

難民キャンプへ(25)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?