人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた/横川良明

 とんでもない本に出会ってしまった……。ドルオタと若手声優オタの二足のわらじを履くオタクとして、この手のタイトルの本は手に取らざるをえないので何も考えずに買い秒速で読み終えた。

 この本、あまりにも本質本すぎるのでは……??????

 読んでいる間「わかる」「それな」「それはそう」以外の語彙を失い、的確な比喩や、ユーモア溢れるパワーワードのオンパレードで共感しっぱなしだったし、何となく頭の中でモヤモヤしていたことが綺麗に言語化されていて発見もすごくたくさんあった。

 「推し」や「オタク」を取り上げた作品にはザックリわけて光の作品(トクサツガガガ、推し武道)と闇の作品(りさ子、推し、燃ゆ)があるけれど、これはタイトルからもわかる通り光の作品。もちろん明るいトピックだけで構成されているわけではないが、オタクの闇よりも推しがいることや推すことの楽しさを存分に取り上げている。

 個人的には推し武道と雰囲気近い気がする。読み終わった後推しを推すのって楽しいーーー!!!!ってポジティブな気分になれる。ジャンル問わず推しがいるオタクなら共感しっぱなしだと思うが、著者が若手俳優オタクなので若手俳優オタクが1番共感できる。あげられている俳優や作品がわかるとより楽しいと思う。「松田凌」とか「おっさんずラブ」とか。

 オタクが顔が良いを連呼しがちって項目で、松田凌の話が出てくるんだけど、いや松田凌ならそうなるわな……ってめっちゃ納得して笑ってた。

 全体的に文才のある面白いオタクのブログを読んでいるような感覚であっという間に読み終われる。最近だと「推し、燃ゆ」が芥川賞受賞して読んだオタクめっちゃ多いと思うけど、あれでしんどくなったオタクはこれ読んで元気出そ!?

 マーカー引きながら読んでいたら3ページに1回くらいのペースでマーカーを引いていて、合計したら45か所もマーカーを引いていたので特にここが刺さった!!!!っていうのマジで選べない。

 「この人のために何かしたいと思ったら推しの始まり」とか「動いているだけでこんなに気持ちを幸せにしてくれるなんて、乳児か推しくらいでは」とか「ガチ恋とか夢女子だとかいろいろあるけど、僕たちが今こんなに推しを求めるのって、『神様が欲しいから』では?」とかもう本質&パワーワードが散りばめられていて……。


 その中でも(めっちゃ迷ったけど)特に1つ取り上げるならこれ。ずっとステージで歌って踊るアイドルにしか本気になれない、役者のオタクの気持ちがわからないと思っていたわたしには鈍器で殴られたような衝撃だった。

 著者の横川さんは俳優に対しては軽率に推し増しをするのに、アイドルにはレーダーがはたらかないそうで、その理由についてこう語っている。

俳優オタクの楽しさは、役と本人で二度恋に落ちることができること。
二度どころか、新しい役を演じるたびにまた恋に落ちることができる。永遠に終わらない一目惚れを経験させてくれるところが、俳優という職業に選ばれた推したちを性懲りもなく愛し続ける理由です。

 本質じゃん……?!?!?!?!?!?!?!と電車の中で絶叫しそうになった。本質な上に「永遠に終わらない一目惚れ」っていうこの!!!!言語センス!!!!最高!!!!!!言ってもわたしも最近俳優ではなく声優だけれど役者のオタクに目覚めたので、マジでそれ……としか言えなかった。

 何か全ての役が新しい出会いで初めましてなんだよな。似たような系統のキャラクターだったり、似たようなトーンだとしても、もちろん別人だから、毎回新しさを感じるっていうか。新しい人格を宿して新しい人生を生きていて、そんなお芝居を聞いてそのたびに心を鷲掴みにされるのって一目惚れ繰り返してるわ……そうだわ……。納得しかできねえ。役者のオタクって楽しいなあーーー!?!?!?!?


 あとこれにアイドルオタクとしてコメントするならば、アイドルは自分ではない誰かの役を持つことはないけれど、「アイドルある自分」という役を常に演じている存在であって。役者は基本他人を演じるから自分と役は分けられるものだけど、アイドルは「アイドルでない自分」と「アイドルである自分」のスイッチだから役者のそれよりずっと不可分。そのどこまでが素でどこまでが作り物なのかわからないところがものすごい魔力を持っている気がする。何だろうこう素の自分の成分を作り物として魅力的に昇華してる感じっていうのかな……それがめっちゃ好き。

 で、他人という役を通さないからこそアイドルから放たれるエネルギーっめっちゃ剥き出しですごい。自分の人生、成功も挫折もエンターテイメント、商品にしてしまう。もうこのすごさにひれ伏すしかないし、この剥き出しっぷりとかありのまま感はアイドルにしかもらえないと思う。

 まとめるとアイドルのオタクも役者のオタクもめっちゃ楽しい!!!!


 この本、推しを推すことを全力で肯定してくれるので、読み終わったあとすごくハッピーになれるし、明日も推しを推そう!って気持ちにさせてくれる。言語化できなかったことを綺麗に面白く言語化してくれてスッキリもするし、推しを推すオタクにはぜひおすすめしたい本。

 

 

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