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最近読んだ本まとめ③

アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー

「百合」とあるものの、全ての話に女性同士の恋愛要素があるというわけではなく、恋愛感情に限らない女性同士のクソデカ感情+SFアンソロジーと言った方が正確だと思う。

普段全くSFというものを読まないので、あまりにも世界観や設定が作りこまれているものだとまず理解するのに大変で、SF読むのにも慣れ不慣れがあるんだなあと思った。

個人的にお気に入りなのは

四十九日恋文/森田季節

亡くなってしまった人と49日間という期間限定かつ、49文字から始まり1日1文字ずつ送信できる文字数が減っていくというルールつきでやりとりができる世界で、亡くなった恋人とやりとりする女性の話。そこで使われるのがガラケーってところがまた良い。

最初は短歌から始まって普通の文章になり、終盤になると単語や短文になり……といった変化もすごく良かったし、最終日に送る1文字は何だろう?と思いながら読み進めていったところ、そうくるか!といった感じですごくエモかった。好き。


彼岸花/伴名練

大正ロマン×女学院(姉妹システム!)×吸血鬼というとにかく属性盛ったもん勝ちや!と言わんばかりの作品。主人公とお姉さまの交換日記スタイルで話が進んでいくのだけど、話を読み進めていくうちに世界の全貌がどんどん明かされていくスタイルなので、ただ属性をてんこ盛りにしているだけでなく、話としても純粋に面白い。短編でよくこれだけの要素をさばききったな……と感心してしまったし、もちろん中二病心もかきたてる最高の作品だった。


色のない緑/陸秋槎

SF色が強いというか学術的な言葉のオンパレードであらすじを書くのがすごく難しいのだけど……。ザックリ言うと、かつて仲の良かった学者3人組のうち1人が自殺していまい、残りの2人がその理由を探るという話。

言語学とか数学的な話がめっちゃ出てくる。全然わからんと思いながら読み進めていた。でも人工知能や機械の発達でどんどん人間の領分が侵されていくのとか、自殺の原因の切なさとか、タイトルの元ネタである「色のない緑の考えが猛烈に眠る」とか、めっちゃ感情に訴えかけてくるポイントがあるのですごく印象的な話だった。


ツインスター・サイクロン・ランナウェイ/小川一水

1番好きな話。1番最後に収録されていて、多分1番楽しい話。作中きっての爽快で明るい話が1番最後に収録されているという順番が最高にいい。この2つの前の海と双翼、1つ前の色のない緑でだいぶ「しんどい……」となってしまったので、この明るさには救われた。

作者曰くこの話は

らしい。この世界では宇宙での漁は2人1組の男女で行かないといけないというルールがあるのだけど、そこを女性同士で行っちゃうバディもの。この時点でオタク大好きやんけ。高身長巨乳明るいお姉さんとクール系ロリという組み合わせも良く、お互いが違う方向に才能が突き抜けているというね!絶対好きやんな!


満願/米澤穂信

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが…。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。

同じ作者の儚い羊たちの祝宴が面白かったので買ってみた。こちらも短編ミステリ。個人的には儚い~の方が尖った感じがして好きだった。

この中で好きなのは、新人警官が殉職した本当の理由を追う「夜警」と、交通事故が絶えない峠の秘密を探る「関守」。前者は真相にあっ!と言わされたのでミステリとしては1番好きで、後者は良くできた話だわ!!!という意味で好き。


家守/歌野晶午

何の変哲もない家で、主婦の死体が発見された。完全な密室状態だったため事故死と思われたが、捜査のうちに30年前の事件が浮上する。歌野晶午が巧みに描く「家」に宿る5つの悪意と謎――傑作推理短編集!

1番最後の「転居先不明」が断トツ好き。九州から東京に引っ越してきた夫婦が主人公で、妻が誰かに見られている気がするとしきりに訴えるので夫が調べたところ、実はこの家で過去に一家惨殺事件が起きていて……という話。

過去の事件とこの夫婦がどう絡んでいくのか全く読めなかったのだけど、オチのつけ方がめちゃくちゃ面白かった。


絶対正義/秋吉理香子

由美子たち四人には、強烈な同級生がいた。正義だけで動く女・範子だ。彼女の正義感は異常で、法から逸れることを絶対に許さない。由美子たちも、やっと摑んだ夢や恋人との関係、家族までも壊されそうになり……。このままでは人生を滅茶苦茶にされてしまう!追い詰められた四人は範子を殺した。五年後、死んだはずの彼女から一通の招待状が届く!

ずっと「キッッッッッッツ!!!!!!!!!!」と思いながら読んでいた。マジでキツい。よくできているけどもう読みたくない。キツいので。

範子は正義感が異常に強く、とにかく法や規範を犯すことが許せない女なのだけど、別にそこに世の中を良くしていきたいとか、弱い人を救いたいみたいな理想や目的があるわけではなく、法や正論を振りかざして他人を制裁することに快感を覚えているだけなので悪質さが半端ない。自分が気持ちよくなるための正義なのがマジで気持ち悪くてキツい。範子はあの4人がやらずともいつか誰かに殺されてると思うし長生きできないと思う。

人を追い詰めるのって正論だったり正しさであることが多いし、正しさだけじゃどうにもならないことばかりだし、正しかったら人の心を踏みにじっていいわけないし、本当にイヤな読後感が残る話だった。

結末もそうなっちゃうか~~~!!!といった感じで、これがいやミスか……と思い知らされた。結構引きずっているので次は明るい話が読みたい!!!

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