Vシリーズ/森博嗣

これを最後にしばらく読書感想文をサボっていたのだが、感想文をサボっていただけでVシリーズも四季シリーズも読破して今は短編集を読んでいる。

今回はVシリーズ全体の感想。


あと感想行く前に1番大事なことを言うと、読む気があるなら絶対に「Vシリーズ」とか後々のシリーズの名前やキャラクター名でググるのは絶対にダメ!!!!!わたしはそれで重要なネタバレを踏んだ!!!!!!各作品のトリックより全体通したトリックが1番面白いから!!!!!


Vシリーズ全作を読んでみて思ったのは、S&Mシリーズと比べてキャラ小説としての色合いが物凄く濃い。出てくるキャラの名前も個性的で、ほぼほぼラノベと言っても過言ではない。ラノベにしては出てくる理系パートが本気すぎて文系脳には理解不能だなということくらい。

S&Mはキャラ小説の面白さとミステリとしての面白さが両立している作品もあったけれど(キャラ小説全振りのものもある)、Vはミステリとして面白いのはなかったかな……。しいて言えば5巻の魔剣天翔は面白かった。

というわけで、Vシリーズはメインキャラを好きになれるかにかかった作品である。キャラクターの考え方や会話が肝になるシリーズなので、そこに好感持てなかったら最後まで乗り切れないだろうと思う。何せミステリとして面白い作品はないので……。

ただVシリーズを読むのと読まないのとでは、この後に続く四季シリーズの面白さが全く変わってしまうので、その後の森作品を読むつもりがあるなら最後まで読んでほしい。


そんなわたしといえば、紅子と七夏と林の三角関係がどうにもノリきれなくて、そのへんの描写が結構しんどかったのはある。紅子と七夏は前妻と愛人の関係で気まずくないわけがないのだが、林がそのへんを配慮しないで一緒に行動するように仕向けたりするので、お前さぁ……となる。

ただ保呂草さんは好きだった。キャラ設定ズルい。特に恋恋蓮歩は良かった。好き。

全体として面白かったか?と聞かれれば微妙なのだが、10巻を読み終えたときに、もうこのメンバーでの物語は終わりなんだという寂しさを覚えた不思議なシリーズで、そう思ったのは練無と紫子さんの存在が大きいと感じている。この2人いいよね。紫子さんなんかは森作品のメインキャラの中ではだいぶ普通のキャラなんだけど、もはや普通であることが異質で面白いみたいな感じだった。ぶっ飛んだ天才多いからさ……。


ここからは特に好きな作品。

S&Mは10冊は多いと思うならとりあえず「すべてがFになる」「笑わない数学者」「封印再度」「有限と微小のパン」くらい読んでおけばいいんじゃないかって言えるんだけど、Vはミステリとしては微妙だけどキャラの掘り下げという意味では重要みたいな作品ばかりなので、「月は幽咽のデバイス」と「夢・出逢い・魔性」は読まなくてもいいと思うとしか言えない。8巻の「捩れ屋敷の利鈍」もスピンオフ的なやつだから読まなくてもいいけど、西之園萌絵登場巻を飛ばせるなら飛ばしてみろという気持ち。

前置きが長くなってしまった。

・5巻「魔剣天翔」

アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに触き明かす。

これはVシリーズの中だとトリックが割と正統派。Amazonレビューでも「トリックがフェア」と書かれていたが本当にそう。納得できたようなできないようなというトリックが多いVの中でも、これは素直に納得できた。

そういう面白さもあるがキャラ小説、シリーズものとしても重要な一作。ここで初登場する各務亜樹良は今後も登場するし、エンジェル・マヌーヴァもこれ以降も名前があがる。練無の人間関係的にも重要。


・6巻「恋恋蓮歩の演習」

航海中の豪華客船で完全密室から人間が消失する! 世界一周中の豪華客船ヒミコ号に持ち込まれた天才画家・関根朔太の自画像を巡る陰謀。仕事のためその客船に乗り込んだ保呂草と紫子、無賃乗船した紅子と練無は、完全密室たる航海中の船内で男性客の奇妙な消失事件に遭遇する。交錯する謎、ロマンティックな罠、スリリングに深まるVシリーズ長編第6作!

保呂草さんメインなのでまあ好きだよね……。5巻読まないとわからない描写があるので注意。

てかもうタイトルの優勝っぷりがすごい。V1番で1番秀逸なのは「夢・出逢い・魔性 You May Die in My Show」だと思うけど、こちらも声に出して読みたくなるタイトルなのが好き。

ミステリというより豪華客船と名画とロマンスというシチュエーションを楽しむ作品。事件とは別のトリックについては最初から薄々気付いていたので、ああやっぱりとなった。


・8巻「捩れ屋敷の利鈍」

エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る“メビウスの帯”構造の巨大なオブジェの捩れ屋敷。密室状態の建物内部で死体が発見され、宝剣も消えた。そして発見される第二の死体。屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵が、事件の真相に至る。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ。

「屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵が、事件の真相に至る」もうこれだけで好きな理由はわかっていただけたかと思う。こんなん好きに決まってるやろ。S&MとVのコラボだけでアドレナリンバシャバシャ出るのに、ページ数が少ないのもあってマジで秒で読み終わった。


以上。去年末から森作品しか読んでいなくて、森先生の作品って理系パートとか哲学っぽい話とか全然わかんないから雰囲気で読んでるんだけど、全然わからないのに読ませる力がすごいなーと思う。

これ以降のシリーズも読んでいきたい。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?