左にタグ付けされた人生
労働中、お昼休みの開始時間は一応12時というが、そうしっかりとは始まらない。いつもタスクを終えて他の人が丁度なんとか場を回せるようになった時から入る。1時間は今のところ確保されている。
労働場所内でお弁当などを食べてもいいのだが、喫煙所が近くにないし、労働から一旦は離れたいので外で食べている。
近くには薄汚れているがやや客は入っている中華屋とコンビニがある。たいてい中華屋でランチメニューを頼んで、コンビニで喫煙する。中華屋は妙に静かで、BGMがないからだろうが金魚のポンプ音だけが聞こえる。照明も暗く涼しい。他のお客がいるときは、ほぼ皆瓶ビールを飲んでいる。労働からほんの数十メートル離れた世界だけど、全く違う世界が流れており、それは隣に座る他の客もそうだ。
中華屋に行く前に、労働で着なければならないポロシャツから私服に着替える。着替えなくても良いのだけど、着替える。そしてコンビニのトイレでまた労働服に着替えて労働場所に戻る。このトイレが暑い。
クーラーはトイレを冷やさない。手早く着替えないとせっかく冷えきらした身体がムダである。インナーのテロっとしたシャツは、そんなときに前後をはっきりさせないで僕をまごつかせる。罠めいている。
しかし、今日は何かこれまで見過ごしていた小さいものに目がいった。シャツのサイドについているタグである。もしやと思ってポロシャツのタグも確認してみる。すると、どちらのタグも正しく着た場合に左側にくるようになっている。頭がクラクラし始めた。ああっと叫びそうになった。とりすまして、労働に戻ったけど。
誰も教えてくれなかったけど、僕以外の皆は当然のように知っていて、だから教えてくれなかったんだろうか。ちなみに職場の人も知っていた。こういうことが実は多いんだろうか?
確かめるには、知らなかったということを知る必要があって、それは自分に対して悪魔の証明を行わんとすることっぽい。
今日の昼は豚肉とピーマンのスタミナ炒めを食べた。
タグの件は今年一番の衝撃である。
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