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手を動かしながら3年かけて得たイノシシ獣害の知見を公開します。

衣食住をクリエイトする道草屋です。
12年くらい前にけっこうな田舎に移住して、家庭菜園レベルで畑で野菜を栽培している。衣食住をクリエイトしたいわけだから畑でとれた野菜なんかを料理したり、加工したりそんな暮らしをするために栽培しているんだけど、栽培しているだけでここ4年ほどは収穫はほとんどできていない。
というのも、この4年くらいは毎年収穫期になると徹底的なイノシシの獣害にあってるからだ。もはや、イノシシの餌やりのためにせっせと畑を耕していると言っても過言ではない。

畑は自然農法っぽい感じでやっているのだけど、自然農法っていうのは運が良くなければまともに収穫できるようになるまでに数年かかる。土を育てて、微生物がうんぬんなどいろいろ理由があるんだけど、よく言われるのが7年は土を育てる時間と言われる。
うちもご多分にもれず7年目くらいは自分でも自信がつくくらいよく収穫できていた。
何年もまともに収穫できない自然農法はまじで心が折れるんですよ。

たくさん収穫できてうれしかった年

と、思いきや8年目くらいからイノシシがむちゃくちゃに畑を荒らすようになってきた。
イノシシの獣害というのは、長期にわたって少しずつひどくなっていくのでもちろん4~5年目くらいからちょっとは荒らされていたわけだけど、畑の調子が良くなり始めた8年目くらいはもう目もあてられないレベルの被害になってきたわけです。

そこから始まりました。
毎年毎年心が折られるイノシシ獣害との闘いの日々が。
まともに収穫できず一晩で工事現場のようになった畑をまた整える3年間、栽培のノウハウやスキルなどまったく身につかず、三途の川で壊されるために石を積み上げる子どもたちのようにただただ繰り返される土木作業。
だけどイノシシの行動と獣害に対する知見だけは蓄積された。
せっかくなのでここでそのすべてをここでシェアしたいと思う。

さすがにこんなに大きくはない。

基本情報

自分の畑スペック

  • 広さは3畝くらい

  • 集落の中に立地していて、向かいに住んでいる家が一軒ある

  • 畑の前の道もよく車も人も通る

  • 基本的には不耕起、無農薬、少量施肥の自然農法ちっくな農法

  • 刈った雑草を積み上げるので、ミミズからダンゴムシから大量にいる

環境スペック

  • 人口300人くらいの集落

  • なのであまり外で人は見ない

  • 山に囲まれているが、平地も100haくらいあってまあ広い

  • 全田んぼの9割くらいは放棄されている(そこは全てイノシシの領域)

  • 7~8年くらい前から集落の路地にまでイノシシが歩くようになった

では、3年間の闘いを順に見ていきたいが、その前に被害がひどくなるまでの数年間をおさらいしておきたい。
また、イノシシがヤッホーイってなるのはだいたい春と秋の2回なので、ぼくとの闘いも年に2回が基本となる。

バトル前夜

つまり被害がヒドくなる頃を1年目とした場合の、そこからさらに数年前のことだ。
このころはよかった。栽培スキルも上がってゆき収穫も少しずつ増えていった。彼ら(イノシシ)もときどき様子を見に来ては遠慮がちに食べたいものだけ食べていくという感じだ。
とは言え丁寧に収穫してくれるわけではないので、畝もぼこぼこにされるし嫌なので対策する。彼らは基本的に最初の晩は畑をふらっと見に来てちょっと食べてみてすぐ帰る。で、いけると思ったら翌晩に腹いっぱい食べようとする傾向にある。
なので、最初の晩にちょっと入られたなと気づいたら簡単な対策でいい。

・びろびろテープ

荷造り用のPPテープだ。撚ってないやつ。あれを四方にぐるっと張っておくと風で「びろびろ、びろびろ」と鳴ってくれる。
彼らの心境はこうだ。
「なんか変な音する。ここに来るのはちょっとやめよう」

・髪の毛

散髪屋さんで切られた髪の毛をもらってくる。あれを四方にぐるっと撒いておく。なんかいろんな人のいろんな匂いがついたやつがばっちりだ。
「なんか変な匂いがする。ここに来るのはちょっとやめよう」となる。

これを初日に対策できればOK。本気でかかってくる二日目の晩を防ぐことができる。
ただ問題は何日もは効かないことだ。経験上効力は2週間。
これくらいで彼らも慣れてくるし、髪の毛にいたっては雨でも降られたら匂いがなくなって意味がなくなってしまう。

しかも、初日に対策できなかった場合2晩目にがっちりいかれてしまう。
惨敗だ。惨敗を繰り返せば繰り返すほど彼らは調子にのってくる。
腹いっぱいに食べるどころか、より美味いものを探して畑を全面掘り返しはじめるのだ。

バトル開始1年目

春の闘い

あまりに全面掘り返すので、柵を張ることにした。
ぐるっと畑をワイヤーメッシュで囲む。ワイヤーメッシュというのは本来コンクリートを張るときに中に入れる鉄でできた格子状の建材のことだ。
太い棒で格子にしたやつと細い棒のやつと2種類ある。
すべてもらいものですましたのでこの2種類をまぜまぜで使った。
高さは1mくらい。
これには彼らも驚いたようだ。ちょっと柵の周りを掘るが入ってこれない。
勝利を確信したある晩やられた。
力技できたのだ。
ワイヤーメッシュの足元を曲げて侵入した。ちょっと人間だと考えられない。力自慢の人でも相当苦労するであろう固さの建築資材なのだ。

秋の闘い

仕方がないので、全ての柵の地面から20cmくらいの高さに直径3cmくらいの鉄のパイプを渡していくことにした。
彼らからしたらこうだ。
「この程度の防御力で守れると思ったか。おれも舐められたものだ。」
曲げられた。
もうこのレベルになると人間では無理だ。
相手はイノシシなんだ、人間の常識では測れない攻撃力を持っているという前提で対策しなきゃならない。

2年目

春の闘い

とは言え、こっちとしてもやれることはもうそんなにない。鉄パイプを曲げる相手に勝てる資材なんて思いつかない。
でもここで気づいた。
先程言ったように柵に使ったワイヤーメッシュは2種類ある。太いバージョンと細いへにゃへにゃのバージョン。力技で入られた場所は太いバージョンの箇所ばかりだ。
なぜか。
へにゃへにゃバージョンの方はあまりにへにゃへにゃなので、気休めにトタン板を張っておいたのだ。
そこからは入られていない。

そう。たぶん、彼らは中が見えないところからは力技ではいかないのだ。

予想するに、向こう側がどうなっているかわからないところを体当たりだかなんだかで思いっきり突っ込むのは確かに怖いんだろう。同情する。
力で勝てないのなら工夫で勝負だ。
厚かろうと薄かろうと板を集めてきて全ての柵を覆った。
彼らの心境はこうだ。
「こちとら一晩中すきまを探してるんですよ。」

・・・中が覗ける10cmくらいの隙間から力技で入られた。

秋の闘い

とにかく入られた箇所に板を張り、目隠しする。
もうここらあたりでぼくの心はばきばきに折れている。
ちなみに何度も言うようだが、イノシシに侵入されるということは一晩で畑中をぼこぼこの工事現場みたいにされるということだ。
それをまた平らにしたり、畝を立てたりと整える。
ぼくは機械を持ってないので鍬でやるのだ。
イノシシももちろん機械をもっていないので、互いに徒手空拳の闘いだ。
なんのためにこの不毛な闘いを続けているのかわからない。
野菜なんて買った方が早いじゃないか。

なので、畑を整えて何も植えずに、何も植える気力もないまま秋の闘いを迎えた。
・・・入られた。ぼこぼこ。食べるものもないのに。

ここで気付いた。彼らの悪意に。

彼らは飯を食うためにぼくの畑を荒らしているわけではないのだ。
毎年毎年腹いっぱい食べられるこの畑は彼らからしたらもはや「自分の縄張り」なのだ。そこで余計なことをしてくるぼくに彼らは「ここはおれらの場所!」と主張しているのだ。
ここからは、この場所は一体誰のものなのか、という戦国時代さながらの土地争奪戦に発展していく。

3年目

春の闘い

とにかく隙間を全てくまなく見てまわり、中が見えないように目隠ししてまわる。
もはやこれは意地の張り合いだ。
彼らは無限に時間を持っている。人生の全てを食うことに賭けているのだ。
それに比べてこちらは現代人だ。金儲けにもならない畑に割くリソースは最小限に抑えたい。

・・・そこを突かれた。

上からの攻撃だった。
下の方は完璧だったのに一箇所イノシシ目線で上から中を覗ける場所があったのだ。しかもそこがへにゃへにゃ系ワイヤーメッシュだったのが致命的だった。のしかかられて、へにゃってなったワイヤーメッシュを乗り越えられた。
とは言え、鉄の素材だしひっかき傷ができただろうし、痛いだろうに気にしないのだろうか?それが、人生の全てをこの闘いに捧げている彼らと、現代人であるぼくの力の差なのだろうか?

秋の闘い

もちろん、前回やられた箇所は目隠しをして対策はした。
しかしもう彼らの圧倒的な意地に勝てる気がしていない。
なんだか人知を尽くしたという実感があるのだ。
天命を待っても、神さまはイノシシの味方なのだろうか?
そんなことはないはずだ。
まだ神さまを味方につけるという発想では行動してこなかった。
打つ対策はこうだ。
これまでの栽培しやすいようにまっすぐに畝を立てるというのをやめて、なんか文様みたいに畝をたてる。魔法陣。呪術だ。
今回は呪術で勝負だ。

・・・入られた。今回は出入り口のところだ。
出入り口はワイヤーメッシュを扉みたいにしているだけど、出入りする都合上板は張っていないそこを狙われた。

4年目

実は心はもうとっくに折れている。
なんか勝てない気がするのだ。
もし希望があるとするならば、縄張り争いという様相を呈している以上相手は不特定多数のイノシシではなく、ある個体だという気がする。
そいつがぼくと意地の張り合いをしているのだろう。
だから勝機があるとすれば、このまま闘い続けて他のイノシシに入られないように対策しつつ、そのぼくの相手の個体が寿命だか事故だかで亡くなられるのを待つしかない。

そんな毛ほどの光を待ちつづけることに今年は挑戦する。
心優しい友人がトマトの苗をくれたからだ。
絶望しかなかった今年の春を、その苗のために耕した。

さて今回の闘いはどうなるのだろう?

まとめ

イノシシの行動・対策をまとめておきます。

  • 基本的には警戒心が強く、ちょっと環境を変えてあげればしばらく来ない

  • 垂直跳び80cm跳ぶらしいが、原則として下を力技で入ろうとする

  • 人に慣れるので里山(山と集落の境界線)がなくなると集落に来る

  • 何度も食料をゲットできた畑は自分の縄張りにする

  • そうなると、なにがなんでも入ってくる

  • 背の高い草がボーボーのとことか、切った竹を置いてあるところとか歩きにくいところは意外とイノシシも嫌がる

  • 柵の中が見えないと無茶してこない

  • 芋、米大好きだけど、ミミズも相当好きなので草を積んだりしてるとそこ中心に掘り返す

  • なので草マルチ中心、ミミズを増やして土壌改良の自然農法とは相性が悪い

  • バジル等匂いのあるものは嫌いっぽい

  • 本気を出されるとたぶん人では勝てない


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