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変わらないモノの中に見る新たな価値 Vol.81

海岸沿いの国道を走り続けると、無骨で荒々しい岩肌を携え雄大な景色が広がってくる。

「あぁ、ようやく着いた」

風はなく海は穏やか。
山を取り巻く環境は変わっても、山自体は変わらずに私を出迎えてくれる。

『ある一生』ローベルト・ゼーターラー著      浅井晶子訳

アルプスの山とともに生きた、名もなき男の生涯。
決して恵まれた環境ではなく、義父に育てられた。自然の脅威に晒され、大戦を経験し、経済の発展に伴い変わりゆく街並み。

時代が加速度的に変わるなか、主人公「エッガー」は変化を感じ、不器用で少しずつ変化しながらも心根は変わらない。

小さなことにも『幸福』を感じる感性を持つ。自然にも人にも。

必要としてくれる人がいる。
必要とされる場所がある。

ここで言う必要とは「いいこと」だけでない。人を利用して利益を得るために、その人(カモ)を必要とするモノ。

悪知恵が働く者にとって『カモ』は、
必要な存在。

人生で失うものなどなかったが、それでも人生かまだ得られるものはあると思っていた

本文より

私の生まれ育った町もずいぶん変わった。
小学生のころ「週刊少年ジャンプ」を買いに自転車で15分かけて、小さなスーパーまで通っていた。

今では5分も歩けばコンビニがある。15分も自転車に乗れば、5、6軒はコンビニがある。
全国展開の飲食店やあらゆる専門医の病院があり葬儀屋まである。

まさに、『ゆりかごから墓場まで』

全ての人間と同じように エッガーもまた様々な希望や夢を胸に抱いて生きてきた。そのうちのいくらかは自分の手で叶え、いくらかは天に与えられた。手が届かないままのものも多かったし、手が届いたと思った瞬間再び奪われるものもあった。

本文より

町を歩いていると、建物が取り壊され更地になり「あれ? ここ何があったっけ?」と思うことがある。

学校、宿題、塾、受験、仕事、人間関係、お金、健康、考える事が多すぎる。

YouTube、Netflix、Kindle Unlimited、Audible……

安くて魅力あるサービスがあふれ、いくら時間があっても足りない。
ほんとに、これでもかというぐらいに…

たまには手を止めて、頭を休めて、周りを眺めてみる。山や空や海。星空。

自然は変わらずに私を見守っている。
生まれたときからずっと。

変わらないものを見て「喜び」を感じられるのが豊かさなのだと思う。
お金や時間を忘れて。

人の心は移ろいやすい。世相も変わりゆく。

でも変わらない景色にも目を配る余裕を持ち合わせていたい。


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