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前立腺がん治療の実況中継#21 金球埋め込み術・ハイドロゲル留置

金球埋め込み術・ハイドロゲル留置

陽子線治療に先立って、前立腺に金マーカーを埋め込み、直腸への放射線量を減らすためのスペーサーを注入する手術をしてもらいました。タイトルはこの手術の正式名称です。3泊4日の入院でした。

この手術には大きな不安を抱えていました。生体検査の時に大出血をしたので、今回の手術でも出血をするのではないかという不安です。セカンド・オピニオンをもらった先生も、転院先の病院の先生も、今回の手術をしてもらった大学病院の先生も、「出血の可能性はゼロとは言えないが、これまでそういうケースは経験したことがない」という話でした。それでも、生体検査で大出血するという「極めてレアなケース」(セカンド・オピニオンの先生)が現実に自分の身に起こってしまったわけで、今回の手術で出血する可能性が極めて低いと言われても、不安は払拭できませんでした。生体検査での出血の原因がわからない以上、結局はやってみなけりゃわからないということですからね。

というわけで、入院の日が近付くにつれて憂鬱な気持ちになっていきました。

1日目

午前10時、病院の入退院センターで受け付けを終えて病室へ。妻がナースステーションまで付き添ってくれて心強かったです。病衣に着替えて、身長・体重・血圧を測定し、看護師さんの説明。今回の入院の日程など。その後、放射線科の外来に行き、手術後のCTやMRIの検査日程の調整。その検査の後、1週間から10日ほどで陽子線治療の日程が決まるとのことでした。病室に戻ってしばらくすると執刀医の先生がやってきて手術の説明。やはり、出血の可能性はゼロではないが極めて低いという説明でした。翌日の点滴の針を刺して、夕食の2時間後に排便を促す座薬。

2日目

夜中に何度も目が覚めました。ホットフラッシュだと思うのですが、暑くて発汗して、その後で寒くなるということを一晩で何度か繰り返すんですよね。

さて、いよいよ手術の日です。起床時間に排便を促す座薬。点滴スタート。この日は朝食はなし。前日には手術は12時前後と聞いていたのですが、この日の話では13時前後とのこと。待ち時間が長くてどんどん緊張感が高まっていきます。ちょうど向かいのベッドに入院していた方が同じ手術を受けることになっていて、どうやら話を聞いていると私はその方の後に引き続いて手術を受けることになるようです。看護師さんが迎えに来て、まず向かいのベッドの方が手術室に向かっていきました。緊張感がどんどん高まってきます。1時間ちょっとで向かいの方がストレッチャーで病室に戻ってきました。緊張感がピークに達します。まもなく、看護師さんが迎えに来て手術室に向かいます。

手術室前で病棟の看護師さんから手術室の看護師さんに引き継ぎ。私は椅子に座らされてそのやり取りをぼ~っと眺めていました。よほど緊張した顔をしていたのか、手術室の看護師さんにも「ずいぶん緊張してますね」なんて声を掛けられながら、手術室に促されました。ベッドに横たわり、諸々の準備を終えて、いよいよ腰椎麻酔です。生検の時にはいわゆる体育座りの状態で注射されましたが、今回はベッドに横たわった状態で体を丸めて注射されました。麻酔の効き具合の確認。何度も確認されたので、麻酔の効きがあまり良くなかったのかも知れません。手術が始まりました。あとは何をされているのかまったくわかりません。ちょっと下腹部に触れられたり、押されたりする感触はあるのですが、それだけです。前日の説明では30分ほどの手術だということでしたが、たぶんそのくらいで終わったのでしょう。執刀医の先生から「はい、終わりましたよ。金マーカーもスペーサーもいいところに入りました。」と言われて、手術が無事に終了したことを知りました。その後、看護師さんと執刀医との確認の中で「術後の留意事項は?」「ありません」というやりとりが聞こえてきて一安心。

ストレッチャーで病室に戻った後、3時間は枕から頭を上げられず水分を取ってもいけないとのことでベッドの上でじっとしていました。1時間ごとに看護師さんが血圧、体温、血中酸素濃度、点滴の確認などにやってきました。ようやく術後3時間が経過して横になったまま水を飲むことが許されます。手術が終わって病室に戻ったのが14時過ぎでしたが、何せ前日の18時以降何も食べていないわけで、かなり空腹を感じていたので、おいしい水でした。さて、その後3時間は再び頭を上げられない3時間です。空腹過ぎて腹痛を感じ始めました。空きっ腹に水を飲んだせいでしょうか。ようやく術後6時間が経過した20時過ぎ、看護師さんの付き添いのもとでベッド上で体を起こすことが許可されました。そして、26時間振りの食事です。「無理に全部食べなくてもいいですよ」とのことでしたが、ちょっと足りないくらいでした。夕食を食べ始めたのが20時過ぎなので、夕食が終わるとすぐに21時の消灯の時間です。でも、6時間も横になっていてようやく起き上がれたのに1時間足らずでまた横になる気はしません。しばらくiPadで読書をしてから寝ました。

手術の後も特に問題なく、長い1日の終わりなのですが、問題はこの後です。生検の時もこの後で出血が始まったのでした。油断はできません。

3日目

午前2時過ぎに看護師さんが来てようやく点滴が終わりました。血尿は出ていないようです。一安心。普段から5時前には起きる生活をしていたので、やはり5時頃には目が覚めます。ベッドに起き上がって尿バッグを見てみると、やはり血尿は出ていないようです。傷口の痛みもありません。何とか一晩を乗り切ったようです。6時頃に看護師さんがやってきて、例によって血圧、体温、血中酸素濃度の確認などをした後、「じゃ、歩いて見ますか?」ということで看護師さんに付き添ってもらって尿バッグのぶら下がった点滴棒を転がしながらナースステーションの向こう側の体重計まで歩いてみました。特に違和感もなく普段通りでした。体重は1キロくらい減っていましたが、前日の26時間の絶食の影響でしょう。特に問題なしということで、体重計の前で晴れて自由の身になりました。

9時頃に回診があって、「どうですか? 特に問題ないですか? じゃ、おしっこの管を抜きますか」なんて感じで尿道カテーテルが抜かれました。その後すぐに看護師さんがやってきて「この後は普通のパンツで上下の病衣でいいですよ」とのことで、それまでのT字帯とガウン状の病衣から着替えて身軽になりました。その後、レントゲンを撮りに行って、その日のすべての日程を終了しました。午前9時半頃でしょうか。その後は何も予定されていなかったのですが、やらなければならないことがひとつだけありました。排尿です。尿道カテーテルを抜いた後でおしっこが出なくなるということを2度も経験してとてもつらい思いをしています。油断は禁物です。

尿道カテーテルが入っていたせいか、尿意があるのかないのかわからない状態になっていました。尿道カテーテルを抜いてもらってから初めての排尿は緊張感があります。出なかったらまずいですからね。はっきりとした尿意がないのにトイレに行くのは勇気が要ります。まして、前回の入院の後は明確な尿意があるのにまったく出なくて絶望的な気分になった経験があるのでなおさらです。トイレに行って計量カップに排尿します。最初は緊張感からか出ませんでしたが、時間をかけてようやく出せました。わずか40ml。でも、尿道カテーテルを抜いてからそれほど時間も経っていないので量が少なくても仕方ない、それよりも出たことの方を喜ぼうということで、ちょっと水分を多めに摂りながらiPadで読書。しばらくして看護師さんがやってきて、尿量が少ないことを心配して「膀胱に残っている尿の量を確認してみましょうか」という話になったのですが、「じゃ、その前にちょっとトイレに行ってみますね」ということで行ってみたら何と350mlほど出すことができました。この時の安堵感をどうやって言葉で表現したらいいのかわかりません。その後も水分を多めに摂りながら過ごしました。

午後に妻が面会に来てくれました。ありがたいですね。その間に回診があったらしく、妻との面会を終えて病室に戻る途中の廊下で執刀医とばったり。その場での立ち話で「問題ないですね? では明日退院ということで」。

4日目

看護師さんが例によって血圧・体温・血中酸素濃度の確認など。特に何もすることもないままにだらだらと。最後の回診を終えると、看護師さんがやってきて「精算が終わったら退院です」とのことで、特に退院後の注意事項などの説明もなく3泊4日の入院生活が終了。荷物をまとめて、ナースステーションで挨拶をして、晴れて自由の身に。玄関まで迎えに来てくれた妻と一緒に帰宅。

ともかく無事に手術が終わって何よりでした。想定外のことが何も起きず、すべてが予定通りに事が運びました。大きな不安を抱えていただけに、心の底から安堵しました。感謝ですね。気持ちとしては、まだ陽子線治療が始まっていないのにもかかわらず、ほぼ終わったような心持ちです。

さて、この後は1週間後にCTとMRIの検査を経て、いよいよ陽子線の照射が始まることになります。

付録

この大学病院の入院セットには、病衣、バスタオル、フェイスタオル、歯ブラシ、歯磨き粉、歯磨き用コップ、ボディソープ、シャンプー、リンス、ティッシュ、プラスチック製の箸・スプーン・フォークのセットが含まれていました。病衣とタオル類は2日毎に2日分が支給される仕組みのようです。他にテレビ、冷蔵庫、Wi-Fiのセットもあって、Wi-Fiが欲しくて申し込みましたが、テレビと冷蔵庫はほとんど使わなかったので、ちょっと割高だったかも知れません。入院してからT字帯とストロー付きコップを用意してくれと言われて、院内にあるコンビニに買いに行きましたが、必要なものは事前に伝えておいてほしいですよね。

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