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『老化は治療できるか』 河合香織(かわいかおり) 文春新書

<本文>

(2月11日記)

テーマは、「老化予防治療は可能か、現在の抗老化医療の実態」です。

本書は月刊誌に連載した論稿を加筆修正したものです。著者はノンフィクションライターとして、各分野の書を出してきた人です。

老化予防若返り、近年とみに脚光を浴びてきた分野で、時を経ると共に多くの新しい研究成果が発表されています。

目次の一部を、ざっと紹介すると、

ヒトは何歳まで生きられるのか?
最大寿命は115歳か?
122歳まで生きたフランス人女性
DNAの修復力は縄文人と同じ
寿命を伸ばすと生存戦略を崩すリスクがある
テロメア仮説の虚構
最大寿命と建康寿命
老化と死はプログラムされている
長寿と生殖は二律背反にりつはいはん
不老不死の生物の謎
注目されるハダカデバネズミ
真社会性を持つ種は長寿になる
代謝が低いと長寿になる
若返り遺伝子の発見
長寿のカギはアミノ酸代謝か?
老化がガクッと進む理由
究極の若返り物質を求めて
処女の生き血をすする
血液の中にあった若返り物質
NMNは究極の抗老化物質か?
懸念けねんされるNMN点滴
がん患者のNMN服用は安全か?
エピジェネティック時計
問題は脳にある
スーパーセンチナリアンの謎
脳のごみが増えるメカニズム
腸の調子がいいと脳の頭子も良くなる
科学が解明した長寿の生活習慣
睡眠不足で加齢は加速する
排便と認知症リスク
社会的なつながりが寿命を延ばす
長すぎる老後をどう生きるか?
長寿は幸せか?
運動で全幸福度を上げる
多様性のある食事
好きなことに熱中する
後悔が残るくらいがちょうどいい

などとなっていました。

不老不死、古代からの人類の希望であり、欲望でした。
これについての伝説は多く、約4000年前に書かれた『ギルガメシュ叙事詩』には、人間に死を割り当てられた記述があります。
神話の世界では、960歳になったメトセラが、しわだらけの顔で、「もう死なせて」と嘆願しました。
しん皇帝は不老不死の薬を求めて、家臣を日本にも派遣しています。

現在、日本には100歳以上の百寿者が9万人いますが、統計を取り始めた1963(昭和38)年は153人でした。
団塊だんかいの世代が100歳になる2049年には50万人になると言われています。
さらに100歳以上のスーパーセンチナリアンも増えているそうです。

人間の寿命はだいたい120歳と言われていますが、世界最高齢はジャンヌ・カルマンさんの122歳です。1875(明治8)年に生まれ、1997(平成9)年に亡くなりました。
何度も写真で見ましたが、小粋こいきなおばあちゃん、という印象でした。

現在、世界の寿命は73.3歳、日本は最高で84.3歳ですが、1950年は60歳だったのです。

老化防止、若返りは、アメリカではとっくにビジネスとなり、グーグルの共同創業者のラリー・ペイジは、寿命を劇的に延ばすことを目標とする研究所の『カリコ』を15億ドルで設立しています。
投資部門の責任者のビル・マリスは500歳まで生きられるとも語りましたし、アマゾンのジェフ・ベソス、ペイ・パルのピーター・ティールは老化細胞除去薬の開発を目指すバイオ医薬品会社に投資しています。
日本でもアンチ・エイジングという名で老化防止が普遍化しつつあります。
2021年の論文では、人の最大の寿命は120~150歳と推定されていました。

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