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【Life is investment!#1 濱井 正吾】9浪して早稲田大学に合格。手にいれたのは「自分を信じて生きる力」だった。

We all are “investors”.
人は誰でも投資家だ。 

“投資”と聞くと、資産運用を思い浮かべるかもしれない。
けれど実際は資産運用に限らず、あらゆる人は、自分の「時間」と「お金」という資本を何かに”投資”しながら生きている。

どんな時間を過ごしたのか。どんなことにお金を使ったのか。
それによって私たちの生き方は、未来は、大きく変わる。
いわば、「人生は投資である」と言える。

この連載では、さまざまな価値観を持った人の「時間」と「お金」の投資ストーリーを紹介する。

あの人は、人生におけるさまざまな資本をどんなことに使い、何を得たのだろう。その考え方や捉え方を紐解きながら、自分らしい「人生の投資家」を目指そう。



今回お話を伺ったのは、9浪をして早稲田大学に合格した『9浪はまい』こと濱井 正吾さんです。

高校時代にいじめを受けたことから「見返してやりたい!」と高偏差値の大学を目指すことを決意。受験勉強に全てを捧げ、社会に出てからも日中は働き、夜は予備校に通う日々を過ごしたと言います。
濱井さんにとって、9年間という浪人生活の「時間」と「お金」の使い方は、人生においてどのような影響を与えたのでしょうか。

■今回の「investors」:濱井 正吾さん(9浪はまい)
高校時代にいじめを受けたことから、いじめっ子を社会的に偉くなって見返したいと思い、在学中から仮面浪人として受験勉強を4年間続ける。大学卒業後、証券会社に契約社員として就職したが10日で自主退職、同月中に配置薬会社に再就職。昼は会社、夜は予備校という生活を退職まで過ごす。同社退職後は2年4ヶ月間受験勉強に専念し、9浪で早稲田大学に一般受験で合格し、教育学部国語国文学科に入学。現在は同大を卒業後、株式会社カルペ・ディエムにて教育事業を担当している。

勉強は自ら環境を変えるための、人生をかけた「投資」だった

───10代後半から20代のほとんどを受験勉強に費やした濱井さん。当時はどのような学生生活を過ごしていたのでしょうか。

濱井さん:10歳のとき父親が倒れ、家計が苦しくなってからは「早く働いて、お母さんを助けてあげなあかんねんで」と親族から常々言われていました。長男だったこともあり自分がしっかりしないといけないという気持ちが強く、もともと高校卒業後はすぐに働くつもりでいたんです。

それに僕が生まれ育った地域は大学進学者がほとんどいない田舎だったので、家族や友人を含め、勉強の大切さを知っている人や進学を熱心に目指す人はいませんでした。学校に行けばタバコや万引きが常習していて、理不尽に怒られたり責められたりすることが当たり前。とても勉強を好きになるような環境ではありませんでした。

そんな中、野球部でいじめに遭います。勉強に打ち込むようになったのはそれからですね。「勉強をしていい大学に入れば、あいつらを見返せるんじゃないか」そんな反骨精神から自分を奮い立たせ受験勉強を始めました。

───最初は、見返すための手段として「勉強」を始めたのですね。

濱井さん:はい。ところが、大学生になっても現実は変わりませんでした。高校と同様、キャンパス内では喧嘩が起こっている。授業中はうるさくて先生の声が聞こえない。見返すどころか、高校時代の延長線がただ繰り返されるだけの日常です。愕然としました。

「もしかしたら、この先の人生もずっと釈然としないまま過ごすのだろうか」

モヤモヤした感情を引きずりながら、他の大学の様子も見てみようと、京都大学・同志社大学といった偏差値の高い大学の学生たちと交流ができるサークルに顔を出してみることにしました。するとこれまで見たことのない光景が広がっていたのです。

相手の気持ちを尊重する言葉がけ。
敬意を払った肯定的なコミュニケーション。
問題が起きても感情的にならず、冷静に解決案を提案する対応力。

同年代の高学歴の学生たちは、人にやさしくできる余裕がありました。明らかにこれまで出会ったことのない人たちばかりだったんです。
努力を重ね自信に満ちた表情は、彼らの生きてきた環境そのものを物語っているようでした。

比べて自分はどうだろう。嫌なことがあるとすぐに言い訳をして逃げる。すぐに相手を責めたり怒ったりしてしまう。努力もせず、何かを成し遂げた経験もない。そんな自分が、とても恥ずかしく情けなく思えたのです。

変わりたい。人生を変えるには、勉強をして自ら環境を変えるしかない────。

そこから本格的に、人生をかけた勉強が始まりました。まず別の大学に編入し、その後もさらに上位の大学を目指すため在学中も仮面浪人として受験勉強を続けました。社会人になってからは早稲田大学合格を目標に、日中は会社員として働き、夜は勉強をする生活を送ります。生活の全てを受験勉強に費やしました。

そうして9浪目の春、悲願が叶います。
目標としていた、早稲田大学・教育学部に合格することができました。

9年間で得たのは、揺るぎない“自分を信じる力”

───人生を変えたい、という気持ちが濱井さんを突き動かしていたのですね。

濱井さん:そうですね。おそらく9浪をしてまで早稲田にいかなくても、きっとそれなりに幸せな人生を送れたでしょう。でも「このままじゃ、自分の納得する人生は送れない」と思ったんです。

自分より賢い人と比べて劣等感を抱き続けたり、いつまでも自分に自信が持てなかったり。何一つ努力をしたことのないまま、辛いことがあるたびに逃げて「自分は落ちこぼれだし、能力なんてないし」って言い訳をしながら生きることが想像できたんですよね。

みなさんからはよく、9浪もして無駄じゃない?という言葉をいただくのですが、僕にとっては自分が自分らしく生きるために必要な9年間でした。コンプレックスを払拭したいという想いから逃げずに立ち向かった、人生をかけた“投資”だったんです。

───9浪をしたからこそ、人生において得られたものがあったのですね。

濱井さん:そうですね。一番は、自信を得ました。合格して初めて、自分で自分を褒めてあげられたんですよ。「あの環境から、よくここまで来たな」って。勉強することを応援される環境ではなく、家庭も裕福ではなかったので働きながら予備校の資金300万円を貯めました。

人より遠回りをしましたし、時間もかかりました。でもそれ以上に「自分が納得するところまでやり遂げた」という経験が、今を生きる上で揺るぎない自信になってくれています。周りから何を言われても、9浪という「時間」と「お金」の使い方に後悔はありません。むしろ9年で自分らしく生きる自信が得られたのなら、安いくらいだなと思いますね。

これからは「勉強」という投資を、誰かのために。

───9浪という「時間」と「お金」の使い方で得た資産を、今度はどのようなことに投資したいと考えていますか?

濱井さん:これからも「勉強」に投資していきたいです。今後大学院に進学のうえ、教育社会学※の学びを深めていきたいと思っています。

※「教育社会学」・・・社会制度や個人の経験が、教育や教育の成果にどのような影響を与えるのかを研究する学問のこと。

僕はこれまで自分の生まれ育った環境を嘆いてばかりいました。でもその土地に脈々と受け継がれてきた文化や価値観、歴史があってこそ、今がある。地元の産業や企業が成り立っている。そうした背景を学ぶことで、ただ批判をすればいいというわけではないと気づいたんです。

勉強をすればするほど知らない世界がどんどん広がって、自分の無知さを思い知ります。勉強は人が謙虚であり続けるためにも必要な行為ですね。全てを知った気にならないように、傲慢にならないように、学び続けたいです。

そして研究を通して、自分と同じような教育環境に恵まれない人たちの未来に少しでも貢献できたらと思っています。

───これまで自分のために続けてきた勉強が、今度は「誰かのために」と広がっていくのですね。

濱井さん:そうあれたら嬉しいなと思います。英単語や数式を丸暗記することだけが勉強ではありません。学んだ知識や事象を、世の中とつなげて考える。なぜこの社会問題が起こっているのか。なぜ、それがいけないことなのか。妄信的に世の中の情報を鵜呑みにせず、一度自分の頭で考えて人生を選択できる。それこそが、本当の意味での教養だと思っています。

───若い人は特に、何に時間とお金を使ったらいいかわからない。または、それが投資になっているのか、それともただ、浪費・消費をしてしまっているのではないか。という迷いや不安がある方もいるかと思います。最後に、読者のみなさんへのメッセージをお願いします。

濱井さん:9年間の浪人生活は、今振り返るとかけがえのない資産になっています。でも正直浪人中は、とても辛く苦しい思いをしました。「貴重な20代を捨てて、自分は何をやっているんだろう」「時間を無駄にしているんじゃないか」そう思ったことは一度や二度ではありません。みなさんも同じように見えない道を進みながら、これでいいのかと迷ったり、怖くなったり、不安になることもあるでしょう。

でも投資をした「時間」と「お金」は、いつどこで跳ね返ってくるかはわかりません。一見遠回りに見えることも、10年後、20年後には大きな資産になっているかもしれない。無駄に思えることでも、大きく羽ばたくための投資かもしれない。何もしないよりは、行動する方がずっといい経験になります。だから安心して納得いくまでチャレンジしてくださいね。

(取材・執筆:貝津美里)

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