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社会で生きることと、お金の話は切り離せないからーー。「お金の偏差値」を上げて、人生を切り拓け!|経済アナリスト森永康平さんインタビュー

三田紀房公式noteで昨年末より連載開始した「お金の偏差値を上げるマガジン」。このマガジンでは、毎回1話分の『インベスターZ』と、経済アナリストの森永康平さん(@KoheiMorinaga)による各話に関連した解説コラム・Q&Aを掲載し、読者の方々の「お金の偏差値」を上げることを目指しています。

今回は、日本人の「お金の偏差値」を上げるため、様々な取り組みをされている森永さんに、なぜお金に関する知識をつけた方が良いのか、どうしたら知識をつけることができるのか、お話頂きました。

森永康平(もりなが こうへい)
株式会社マネネCEO/経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。その後2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、金融教育ベンチャーであるマネネのCEOやAI企業のCFOを兼務。​著書に『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)などがある
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日本では、大人でも「お金の知識」を持ち合わせていない。

 ーー本日はありがとうございます。まず始めに、森永さんの現在のご活動について教えていただけますか?

2018年に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを創業し、代表を務めています。

この会社は元々、子ども向けの金融教育事業を行うために立ち上げましたが、会社設立をしてから教育事業というものに対する世間の風当たりが思っていた以上に強いことに気づきました。

一定数の方が、教育とは無料で受けられるものと認識していて、その領域の事業にお金を払うことを快く思っていなかったのです。

そこで、一般の方からお金を頂く形ではなく、自治体など開催者から依頼を受けて、お金に関する講演をさせていただくというやり方に切り替え、事業を展開してきました。

また、お金の話について、大人でもちゃんと理解できている人が少ないので、「子どもにお金の話をしないでください」といった反発も多かったです。

ーーそれは「お金の話」をするのは悪いこと、という認識があるからでしょうか?

そうですね。子どもにお金の話をするというと、「将来詐欺師になってしまうんじゃないか」とか、「投資はギャンブルなんだから、変な知識を与えないでください」といった声を当初は結構頂きました。

そういったご意見に対して、最初は丁寧に説明していたのですが、だんだん対応するのが面倒臭くなってきてしまって(笑)。

「そこまで言うならお子さんと一緒にぜひ講演を受けてください。それでダメだと思ったら途中で退出して構わないので」とお伝えして、これまで子ども向けにやっていた講座を、親子同伴形式で行うことにしました。

ーーその講座では、どのようなお話をされたのでしょうか?

子ども向けの講演内容だと、大人には簡単すぎて退屈してしまうだろうと考え、親子同伴でご参加頂き、前半を子ども向けの内容、後半を大人向けの内容という二部構成で行いました。

その形式でやってみて、実は講演の途中から気づいていたんですが、子ども向けに話している内容の方が、大人の食いつきも圧倒的に良くて。講演終了後に行った参加者向けアンケートでも、子ども向けの方が面白かったという回答が多く集まりました。

一方で大人向けに行った講演は、簡単すぎる内容だと失礼になってしまうと思い、ビジネス寄りの時事ネタの解説をしたのですが、難しすぎたのか途中で飽きてしまう方も結構多くて。

この経験から、日本では、大人もお金の知識を持ち合わせている訳ではない、ということに気付きました。それ以降、講演を子ども向けに限定せずに、ニーズがあれば大人にも子どもにも講演しています。こちらが活動の一つ目です。

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ーーその他には、どのような活動をされているのですしょうか?

二つ目が、メディアを通じた情報発信です。今回のnoteマガジンのようにメディアで連載を持ったり、テレビやラジオ出演、自身のYouTubeチャンネル等を通じて、お金に関する幅広い情報発信を行っています。

三つ目が、主にベンチャー企業の資金調達支援など、企業への財務コンサルティングを行っています。

ベンチャー企業が資金調達をしたいときに、なかなか銀行融資が受けられなかったり、投資家から資金調達をする際も、経営者が財務に精通していないと変な条件で出資を受けてしまい後々苦労するというケースも多いので、私が間に入って条件調整などを行っています。

このように、3つの軸で会社を経営しながら、日本人のマネーリテラシーを高めるための活動を行っています。

ーーご説明ありがとうございます。森永さんは経済政策から生活周りのお金の話まで、幅広い領域をカバーされていますが、そういった専門家の方ってあまりいらっしゃらないですよね。

お金に関する幅広い領域をカバーできるよう活動をしてきたので、その点を評価頂けるのはとても嬉しいですね。

もともと独立する時に、知人のマーケティング専門家に相談をしたらところ、「独立するなら日本株についての専門家だったり、NISAに詳しいアドバイザーだったりなど、ジャンルを絞って活動した方が良い」とアドバイスを受けました。

そのアドバイスの通り、短期的にみたら活動ジャンルを絞った方がメディアからも取材もされやすく注目を集めやすいのは確かで、僕みたいに幅広いジャンルを扱うのは、何の専門家か分かりづらくて損なんです。

でも、経済ってあらゆる社会の出来事と繋がっているので、NISAなどある特定の分野だけに詳しくても、それはその分野の専門家であって、お金の専門家とは言えないと思うんですよね。

だから、マクロ経済や企業業績の分析、投資など幅広く金融をカバーしながら、同時に政治・外交・軍事・安全保障などにもアンテナを広げたうえで、お金に関する本質的な話をしっかりと伝えられるようにすることが、私が目指しているところです。

置かれた環境の違いでマネーリテラシーに差が出るのは、フェアではないから。

ーー先程、現在のご活動についてお話頂きましたが、マネネ創業以前のお話を伺ってもよろしいでしょうか?

マネネ設立前の2年間は、台湾で仕事をしていました。単身赴任で働いていて、当時既に子どもが二人いたのですが、三人目の子どもが生まれたタイミングで、妻も復職したいということで、日本に帰ろうと考えました。

でも日本に帰るとしても、他の企業に転職という形だと、朝早く会社に行って、帰りも飲み会などで遅くなることが多いじゃないですか。そうすると、日本にいたとしても家族との時間があまりとれず、駐在とあまり変わらないなと思って。自由な時間を確保するために、独立の道を選ぶことにしました。

そのような経緯で独立をしたので、よくある起業家のストーリーのように、これをやるために起業をしたというようなドラマチックな話はありません。ただ先に会社を作って、何をするか決めるにあたって、自分のこれまでを振り返ると、結構生い立ちで有利だったなということもあって。

ーーそれは具体的にどのような点で有利だったのですか?

父親がシンクタンクでエコノミストをしていたので、実家には大量の経済レポートや経済学の教科書・書籍がありました。

中学1年生くらいの頃からレポートと教科書を読みながら経済を独学していて、そこでついた知識を活かして大学時代は株をやっていたので、社会人になり運用会社に就職した時、他の同期がゼロから学んでいく内容をすでに知っていたので、有利だったんですよね。

でもそれって、僕が天才ということではなくて、単純に家庭環境の違いなだけで。

その環境の違いで、子どもの人生に影響が出るのはフェアじゃないなと思って。その情報格差を解消するために、金融教育をやろうと思い立ちました。ちょうど世の中の流れも金融教育に力を入れようという方向に向かっていくと予想していたので。予想はピタリと当たって、いまでは金融教育に関する様々な仕事をさせていただいています。

ーー思い返してみると、僕も金融教育というものを受けた記憶がほぼありません。日本人のマネーリテラシーが低いと言われるのは、金融教育が不足しているからなのでしょうか。

日本のマネーリテラシーが低いということは散々言われていますが、実は何をもってそう言われているか、はっきりしていないんです。サッカーのようにFIFAランキングのようなものがある訳ではないので。

OECD(経済協力開発機構)が、一部の加盟国に対して金融リテラシー調査をしていて、日本でも金融広報中央委員会という組織が同じようなアンケートをとっているのですが、その結果によると日本は平均より下なんですよね。

その結果を見て日本人のマネーリテラシーは低いというのだと思うのですが、具体的にどの項目が弱いか見ていくと、インフレについての理解が足りていなかったり、複利の計算が苦手という傾向があって。

でもそれって、日本はこの30年間デフレ経済だったので、インフレについて実感しづらいという背景があり、マネーリテラシーが低いとは、別の話だと思っています。複利の計算についても、日本の銀行にお金を預けても金利がほぼつかないので、複利計算を意識しなくなるよなと。そう考えると、置かれている環境が悪いのかなという気もしています。

ただやはり、そこに加えて、金融教育を受けていないから、マネーリテラシーが向上しづらいという面も大いにあるなと思っていて。複合的な要因があると分析をしています。

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まずは新聞を読むこと、そして小さく実践の機会を持つこと。

ーーなるほど。それでは、お金の知識をつけていくためには具体的にどんなことをしたら良いでしょうか?

まずは新聞を読み始めることを勧めています。僕自身、新入社員の頃から何年かは、日経新聞の朝刊と夕刊を読んで、気になった記事をノートに貼り、分からない言葉を調べてメモ書きを入れる、ということを毎日やっていました。

新聞の記事は、記者の意向も少なからず乗ってくるので、全てを鵜呑みにする必要はないのですが、データによる解説などもあり体系的に学んでいくことができ、かつその機会が毎日与えられるという点が良いので、とてもお勧めです。

ただ、人間はそれほど強い生き物ではないので、よっぽど確固たる意志が無い限りは、毎日インプットを続けるだけだと、面倒臭くなってしまいますよね。そこで、新聞で情報をインプットすると同時に、株やつみたてNISAなどを通じて、少額でも良いので自分のお金を相場に張っておくことをお勧めします。

そうすると自然に社会の動向に興味が出てくるので、新聞でのインプットも継続しやすくなり、良いサイクルが生まれると思います。

ーーやはりお金の知識をつけるためには、新聞などを通じて幅広い情報を取り入れた方が良い、ということなのでしょうか。

そうですね。ある特定の分野しか知らないと、偏った思考の人になってしまうリスクがあると思います。たとえばFXをやっていて、FXのことだけを考えていると、値動きだけを追うようになったり、気にする経済指標も一つか二つくらいになってしまいます。

でもそれって、全体感から考えると正しいとは言えないと思っていて。

たとえば今円安がより進んでいるという時に、FXに関する情報しか集めていないと、このあとまだ円安が続くのか、円高になるか、しか興味がない訳なんですよね。

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ーー興味の範囲が狭いと、入ってくる情報もその分限定されてきますよね。

そうですね。もし加えて株もやっていたら、円安が続くのであれば輸出系の事業をやっている会社は有利になりますし、逆に海外から原材料を輸入しているような会社はコストが上がり業績がマイナスになることもあるな、というように考えることができるようになります。

そのように、幅広い知識があると、ひとつの現象を見た時に、あれはどうなんだ、これはどうなんだと、自分の中で様々な仮説を持つことができ、実際のデータと照らし合わせていくことで、どんどんお金の知識をつけていくことができます。

もちろん、今話したことを最初から全てできるようになりましょうということではないですし、僕も最初は全然分かりませんでした。それでも、新聞を読みながら投資などを通じて実践することで、少しずつ感度を上げていくことができると思います。


お金の知識がついてくると、人生における様々なリスクを回避できるようになる。

ーーそもそも、なぜお金の知識をつけた方が良いか、改めて教えていただけますか?

僕がよくする話なのですが、世の中はマクロとミクロに分かれているんですよね。マクロ面で言うと国家運営や経済政策の話になるのですが、残念ながら日本はこの30年間ほぼ成長せず、平均給与も下がり続けていて、うまくいっていません。

マクロ面がだめなら、必然的に、個々人の生活などのミクロ面で頑張ろうという話になると思います。その時に、お金が全てである、とまでは言わないですが、やはりお金があるとできることが増えていくという事実はあるので。

お金を増やしたい、貯めたい、稼ぎたいとなった時にどうするべきかというと、まずはお金のことを知ることが一番大事なんですよね。

社会で生きることとお金は密接に関わっているので、お金の知識がないって、僕は結構危険なことだと思っています。それって交通ルールや車の仕組みを知らないままに車で高速道路を走っているようなものだと思うので。

ーーなるほど。それは確かに危険ですね。

そう思います。たとえば大金を稼ぎたいと思って、起業してIPOしよう、大企業に売却しようと考えた時も、お金の知識がないままそれをやってしまうと、知識がある人に騙されて、不当な条件で進めてしまう、ということが起きる訳で。

お金の知識があったら、そういったリスクを回避できるんですよね。

お金ってあらゆるものに密接に関わっているので、マネーリテラシーが高まると、お金に関して失敗する可能性が低くなり、結果的に人生も豊かになるのではないか、と思っています。

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『インベスターZ』とタッグを組み、お金について一緒に学んでいく機会を作っていきたい。

ーー今回『インベスターZ』との共同マガジン運営のお話を受けていただいた理由を教えていただけますか?

お金のことを教える仕事をしていると、どうしても難しい言葉が出てきてしまうんですよね。特に、しっかりと正確に伝えようとすればするほど、それは避けられなくて。

ただその難しさが、そもそも始めの一歩を踏み出してもらえない理由になってしまうんですよ。それで、どうしたら最初の一歩を乗り越えられるんだろうと考えた時に、漫画というのは一つの強力なアイテムになると思ったんですよね。

日本人って、昔から漫画を読んだりアニメを観たりする文化があるので、国民性としても一番気軽に受け入れられやすいものだなと思って。残念ながら僕自身は漫画を描くことができないので、今回『インベスターZ』とタッグを組むということは、大変有難い話でした。

ーーこちらこそありがとうございます。『インベスターZ』の各話の内容に合わせた森永さんのコラム、とても面白く読ませてもらってます。

ありがとうございます。公開済みのコラムを読んで頂けたら分かると思いますが、漫画の内容を必ずしも肯定しなくて良い、というのも魅力的でした。

物事の考え方ってたくさんあると思っていて、どれが正解であるとはなかなか言いづらいじゃないですか。そういう意味では今回のマガジンで、『インベスターZ』の漫画の内容と、僕のコラムで2つの考え方に触れることができるのは、結構お得だなと思うんです。

『インベスターZ』にこう書いていました、僕もそう思いますというコラムだったら、読者の方には、そうなんだと思って頂けるし、漫画ではこう書いてあったけど、僕はこう思う、というコラムだったら、ある事象に対しての複数の考えを知ることができる。どちらも、お金の知識をつけていくうえで、とても大切なことだと思います。

『インベスターZ』と共に僕のコラムを読むことで、ただ漫画を読んで面白かった、で終わるのではなく、そこからさらに一緒に考えを深めていくきっかけになれば嬉しいです。

ーー最後に今後の森永さんの展望を聞かせて頂けますか?

この一年は、政治や経済政策といったテーマをメインに活動していたので、40代・50代以降の方々をメインにSNSをフォローを頂いたり、コメントを頂く機会が多くありました。

今後活動を広げていくうえで、10代〜30代の方々にもしっかりと情報を届けられるようにしていきたいと思っています。そういう意味でも、今回の『インベスターZ』とのnoteマガジンなどの取り組みを通じて、幅広い世代への情報発信に力を入れていきたいですね。

教育というテーマはじっくり時間をかけて取り組んでいくものなので、じわじわと活動を広げていきたい思っています。

ーーありがとうございます。是非、今後ともよろしくお願いします!

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(今回の記事はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございました!)

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