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2024年東京都知事選挙の23区別投票率を分析してみた

2024年7月7日小池百合子東京都知事の任期満了に伴う選挙が行われました。東京都全体の投票率は60.62%で2020年の前回と比べて5.62%高くなりました。それだけ都知事選挙に注目が集まったということでしょう。
23区の区別投票率をみると1位 文京区 68.33%、23位 足立区 55.18%とかなりの差が開いています。

一般的には年収が高い人ほど学歴が高く、政治への関心も高いと言われたり、あるいは全国選挙の場合には都市部では投票率が低く地方では高いと言われたりします。
しかし今回の投票率をみると当てはまらないところがあります平均年収が23区で最も高い港区で投票率は足立区に次いで低く、都市部である千代田区、中央区は高い投票率を誇っています。
今回この投票率の資料を基に他の様々な統計と合わせて、どういう地域において投票率が高いのかを分析してみました。


収入との関係

先に収入の話をしましたので早速収入を分析してみましょう。23区で最も平均年収が高いのは港区、最も低いのは葛飾区となっています。港区の投票率が低い時点でこの仮説はあまり期待できません。

年収と投票率の有意な相関はありませんでした。統計にあまり詳しくない方のためにおおざっぱに見方を説明しておくとPの数字が0.05よりも小さければ一応関係あるっぽいということになります。
次に生活に困る人が多ければ投票率は上がらないはず、ということで生活保護率をみてみます。

生活保護が少なければ投票率は高い傾向があるという結果になりました。収入が多くても投票率は上がらないけど、少なすぎると投票率は低くなるようです。ただし生活保護が少ない港区は投票率が低いので例外ということになります。(左下に外れているのが港区です)

学歴との関係

次に学歴との関係を見ていきましょう。残念ながら収入と投票率は関係ありませんでしたが良い教育を受けていれば選挙の大切さが分かって投票にいくはず。

何をもって学歴というのかが難しいので「高等教育」を受けているという意味での本来の意味での学歴として大学進学率を解析してみました。やはり大学進学率が高ければ投票率は高い傾向があるようです。大学進学率が最も高いのは渋谷区の77.2%、最も低いのは荒川区の41.4%でした。
また世間でいうところの"学歴"は偏差値の高い学校みたいな意味があるので私立中学校進学率も解析してみました。こちらは大学進学率よりも強く相関していそうです。国立中学校は私立よりも優秀ですが今回は考えないことにします。最も私立中学進学率が高いのは文京区49.5%、もっとも低いのは江戸川区 11.46%でした。
私立中学進学率は年収と関係があるはずなのに不思議ですね。参考までに年収と私立中学校進学率の結果も載せておきます。

人口動態などとの関係

よく言われるのは「若者は選挙に行かない」「高齢者は選挙に行く」ということです。次に高齢化率での解析をしてみました。

有意ではないのですが、むしろ高齢化率が低い地域の方が投票率は高そうという結果になりました。少なくとも高齢者が多い区のほうが投票率が高いとは言えなそうです。高齢化率1位は北区 25%、最下位は中央区15%でした。
因みに生産人口比でやっても似たような結果になりました。


では単身者割合との関係はどうでしょうか。

これも意外な結果です。あと一歩有意ではありませんが単身者が多いほうが投票率が高いっぽいです。独身は政治参加しないかと思ったのですが違いました。単身者1位は新宿区64%、最下位は葛飾区39%でした。
東京は他の地域と異なって昼夜で人口が大きく変わる地域が多いです。ベッドタウンとそうでないところで投票率が変わるでしょうか。

千代田区が昼夜人口比が意味不明な高さなのでかなり外れでいますが関係なさそうでした。

その他の統計データ

よく全国選挙で言われることは「人口当たりの投票所が多ければ投票率は高い」ということです。これはどうでしょうか。ちなみに人口補正前の投票所数1位は世田谷区の114カ所、最下位は千代田区の16カ所でした。

結果関係ありませんでした。因みに人口10万人あたりの投票所が一番多いのは最も投票所数が少ない千代田区の26カ所/10万人、2位は我らが港区 16カ所/10万人 最も少ないのは断トツで大田区 4.8カ所/10万人でした。つまり港区としては投票所をいっぱい用意したところで投票には行ってもらえないということですね。というか大田区民に失礼。大体11カ所/10万人前後という区が多かったです。

他に考えられることとして税金をきっちり納めている人は投票にも行くんじゃないかと(この場合は因果関係はよく分かりませんが)特別区民税の滞納額で解析してみました。

一番未納額が多いのは世田谷区、足立区、港区と続きます。一番少ないのは文京区でした。上位と下位をみるといい感じですが全体ではぎりぎり有意ではありませんでした。世田谷は税金納めてないのに選挙には行くという…。

公共サービスを使っていたら都政にも関心をもって投票にいくのでは?ということで、公共サービスの度合いとの関係を見てみましょう。

最も公園が大きいのは千代田区、最下位は豊島区です。

病床数も関係ありませんでした。

ここにきてついに有意に相関がある項目が!しかもかなり強い相関があります。区民1人当たりの図書貸し出し数 1位は文京区で16.7冊、最下位は足立区で4.3冊です。これまで多くの外れ値を叩きだしてきた港区も8.5冊といい感じ。P<0.01をたたき出したのは初です。
さっき病床数はダメだったけど医師数ならどうか。

有意差ありです。医師が多いのは千代田区、文京区、少ないのは江戸川区、足立区でした。
次に私が最も衝撃を受けた結果を出します。

有意差あり。これでは公衆便所が多いほど投票率が低いということになっています

因みに人口で補正すると有意ではなくなります。

まとめ

以上より投票率と関係あるものは以下の通りでした。

  • 生活保護率が低い

  • 大学進学率が高い

  • 私立中学進学率が高い

  • 区民あたりの図書貸し出し数が多い

  • 区民あたりの医師数が多い

  • 区内の公衆便所が少ない

有意ではないが相関がある傾向があるのは以下です。

  • 単身者が多い

そして相関がなかったのは以下です。

  • 平均年収

  • 高齢化率

  • 生産年齢人口割合

  • 昼夜間人口比

  • 特別区民税未納額

  • 区民あたりの投票所数

  • 区民当たりの公園面積

  • 区民あたりの病床数

東京都民は選挙の間だけ自由で、選挙が終わってしまえば奴隷なので
皆さん是非選挙に行きましょう。
元港区民、現文京区民からのお願いです。

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