【前編】人生で一度だけ、他人の不幸を喜んでしまった話
「他人の不幸は蜜の味」体験を人生で一度だけしたことがある。
良い人アピールするわけではないけれど、逆に言うとその一件以外で誰かの幸せにケチをつけたり、不幸を願ったり喜んだりしたことがない。
というか他人の活動を覗き見るようなださい習慣が自分にはない。
そんな私が、他人の願っていることが敢えなく叶わなかったことに対して小さく握り拳でヨッシャと思ったことが一度だけある。
男子高出身理系男子の彼
大学生のとき、彼氏の家によく遊びに行ったり寝泊まりして過ごしていた。
当時の私は今よりも太っていて、いつもゴロゴロしてたから「丸太みたい」なんて言われたこともある。
なんだよ丸太って、彼女に対して失礼な。
いつものように彼氏の部屋のソファでゴロゴロしていたある日、インターホンが鳴り、彼氏が玄関へと出た。
なんとなく声が聞こえて、内容はわからないが、隣に越してきた人が挨拶にきたのだということは分かった。
なんとも思わずにゴロゴロしながら待つこと数分、部屋に戻ってきた彼の様子が明らかにおかしい。
バタンっ(扉)
「!!はんんんんぱなかった、すんんんげええええ美人、、あんなん見たことない、、○○さん(当時大学の中でも美人と言えばこの人と言われていた超美人な子)なんて比じゃねぇ、こんんな目でかくてこんんんな顔ちっさくてナントカカントカあわわわゎゎゎ(以下略)」
漫画に書いたような焦り方とどもり方。
そんでもって私の目を見てくれない。
なんでか、私は平気なふりをしないといけないと思った。
強気な丸太なんて可愛くないよね。
「は、はは、そうなんだ!私も見たかったな〜…」
持ってきた引越しの手土産のセンスの良いこと。
まだお目にかかれていないけど、きっとご本人もこのお菓子と、この化粧箱みたいに可愛くて綺麗で整えられていて今時な感じのするおしゃれさんなんだろうな。
ていうか大学生なのに隣の部屋にわざわざお菓子持ってご挨拶に来る時点でもうなんか育ちが分かるし、数分前を思い出してみるとハキハキしてきちんと通る声だったなぁ。
私とは正反対に。
テンパりが鎮静化しぼけっとする彼をよそにそのお菓子をモサモサと食べた、美味しかった。
たぶん私が避けてる着色料入ってたけど。
拷問か罰ゲームか何か
その日は彼の家に泊まる日だった。
お風呂に浸かりながら、数分間の記憶を辿る。
彼と同じ学部に入ってきた3学年下の子らしい。
その学部は高学歴に分類される人々しか行けないようなところ。
彼の入っているサークルを知り、わ〜!興味あるんですよね〜!とかなんとかかんとか言ってたな。
彼氏っていうものが彼女以外に対して好意を持ち得ることがあるなんて知らなかった。
付き合っている相手が自分以外の人に興味を持つどころか、全て持っていかれた(感じがした)。
それを目の前で見た。
心を奪われる、ってこういうことなんだなぁ。
心を奪われると人間あんなふうに漫画みたいになるんだなぁ。
ていうかあの子に対する衝撃と興奮みたいなものを私には隠せなかったのかなぁ。
いや隠せないほどの衝撃と興奮だったんだもんなぁ。
仕方ないよなぁ。
付き合ってるのに大失恋したような感覚だった。
その日はシャワーを浴びながら泣いた。
(恋する乙女あるある)
数日間はショックだったけれど、まぁ普通に過ごしていた。
彼と喧嘩になったわけでもなく、彼も別にお隣さんを好きになったとかじゃなく、ただただものすごい美人を目の前で見て、そしてその人が隣に引っ越してきたというラブコメみたいな展開にその時は驚きと興奮が隠せなかっただけだったようだ。(と思っている。)
大好きな彼氏の家の隣に、のちにミスコングランプリに選ばれるほどの才色兼備の美女が引っ越してきたなんて私にとってはラブコメなんかじゃなく罰ゲームか拷問みたいなもんだ。
ネトストデビュー
なんでも帰国子女でもちろん英語ペラペラなんだとかで、3つ下の学年にモデルみたいなやばい子が入ってきたと大学内でザワついていた。
そのウワサたちで私はすぐにあのお隣さんや!と勘づくと同時に最近構内で見かけた子を思い出した。
地方にある規模の小さな大学だったのもあり、すっぴんで大学に来ている子が半分はいて(私も含む)、今時のキラキラ大学生みたいな子の方が目立つような大学だった。
彼女は目立つどころじゃなかった。
彼女をすれ違い様に振り返る人を見たことだってある。
金髪ロングに、キマってるけどキツくないメイク。
程よく背が高くてバランスの良い健康的なスタイル。
シンプルだけど絶対にここらへんじゃ売ってない服。
そして、どうやっても隠しきれない整った顔。
遠くからでも愛嬌とか品性とか上手く言えないけどそういうものが見えた。
あんなすごい子がこんな田舎の大学になんて来るんだぁ。
どうやってその子の名前を知ったかは忘れたけど、気づいたらTwitterとFacebookでその子の名前を検索していた。
話題の子だから勝手に名前も知れ渡るよね。
どの写真も可愛くて綺麗で、自然体だった。
とびきりおしゃれだけど、飾られすぎていなかった。
いろんな国でたくさんの人に囲まれていても、嫌味がなかった。
どの言葉も素直であたたかくて正直で、傲慢とは程遠かった。
気づけば血眼になって何年か前の初投稿まで全て追っている自分がいた。
彼の隣に引っ越してきたとかそういうのはもうどうでもよくて、私のほしいものばかり持っている彼女という人間がただただ羨ましくて、彼女とは対照的な自分が自分の中でどんどん小さくいびつな生き物になっていった。
いくら彼女の投稿を見たところで彼女になれるわけでも、彼女が持っているものが手に入るわけでもないと分かっているのに、画面をスクロールする手が止まらなかった。
↓後編へ続く!
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