ファラリスの雄牛VRについて考えた末にファラリスの雄牛を作って焼肉するに至るまで
こんにちは。三珠さくまるです。Vtuber(バーチャルユーチューバー)です。
いつもは動画を作っているのですが、ここではその動画を作るとき考えたことや調べたことについて書いていきます。今日はファラリスの雄牛で焼肉をした話です。今回はメイキングというより「なぜファラリスの雄牛で焼肉をしたのか」という思考過程についてです。例のごとく、動画は最後にあります。
牛柄ビキニか、ファラリスの雄牛か、それが問題だ。
さて、2月に入ってしまったのですが、今年は丑年。さきほども言ったように僕はVtuberです。Vtuberは年中行事に敏感な生き物で、個人Vtuberがたくさんいる私のツイッターのタイムラインはこの牛イベントに乗るべく自分の"牛柄ビキニ姿”を流すVtuberたちで溢れました。しかし、その煌びやかで華やかな流れのなかで、少数ながら、しかし、確実に存在していたもう一つの流れがあります。
そう、ファラリスの雄牛です。
ちなみに図としては下のような感じです。おもちを人間に置き換えてご想像ください。
Vtuberには”牛柄ビキニ側”と”ファラリスの雄牛側”がいます。迷う余地もない”ファラリスの雄牛側”である僕は、ファラリスの雄牛を使ってなにか作れないかを考えます。その結果、思いついたのが「ファラリスの雄牛VR」です。まぁ、これが大失敗するのですが。
くっそつまらない「ファラリスの雄牛VR」
その時の僕は「ファラリスの雄牛VR」を作るのを難しいことだとは思っていませんでした。3Dモデルを用意して、中に入って火であぶられることができるVRゲームをつくればいいと思ったわけです。実際、それらの工程はなんの問題もなく完了します。できあがったものが、くっそつまらないことを除けば。
↑意気揚々と用意した3Dモデルが雄牛ではなくメスなことに気づく僕の様子
なにがそんなにつまらなかったのか?
みなさまもご想像をお願いいたします。真鍮でできた牛の中に閉じ込められた視界を体験しながら、VRの炎にあぶられる様子を。
あっ、焚火ASMRだ、これ!!
失禁体験VRと発想の転換
「ファラリスの雄牛VR」作成計画は暗礁に乗り上げました。VRの炎は熱さを持たず、雄牛の中の視界を完全再現してしまえばそれはただの暗闇です。ファラリスの雄牛がもつ怖さもなければ、体験自体の面白さもありません。ほかの方法で恐怖をあおることもできますが、それは「ファラリスの雄牛」の再現にはなりません。ぐぬぬぬぬ。
「これはボツだなぁ」と思っていたところ、同じく「ファラリスの雄牛VR」にたどり着いた一人のVtuberがTLに現れました。IMAGINAさんです。
↑ファンに拷問器具を提案されるメンタルケア芸人と僕のやりとり
Vtuber界の出川哲郎の名をほしいままにし、女性Vtuberながら”牛柄ビキニ側”ではなく”ファラリスの雄牛側”のIMAGINAさんも「ファラリスの雄牛VR」について検討を行っていました。そんなIMAGINAさんとのやりとりのなか発生した一つのキーワードが「ファラリスの雄牛VR」を大きく進展させることになります。そのキーワードが失禁体験VRです。
↑実際のやりとり
失禁体験VRとは、失禁研究会さんが作成した失禁体験装置によりお湯の温度感、空気ポンプを使った圧迫感を組み合わせて「実際に失禁した感覚を再現する」ものです。
VRという名前がついているものの、みなさまが想像するようなVRゴーグルなどをつける視覚的なものではありません。VRゴーグルを使ったVRが「視覚」を再現しているのと同じように「触覚」を再現するこの装置もVRゴーグルを使っていなくても仮想現実なのです。僕とIMAGINAさんも以前体験しました。
↑失禁体験装置体験の様子
そして、それにより気づいたのです。「VRゴーグルを使って中に入ることだけがファラリスの雄牛体験ではないのではないか?」というか、「なぜ中に入るだけがファラリスの雄牛体験だと思っていたのか?」
外から眺めるファラリスの雄牛体験
そもそも、中に入るというファラリスの雄牛のVR体験には、多くの問題がありました。前述のとおり、感覚の部分に視覚的情報に関しては真っ暗闇で面白みがなく、熱などの触感も再現することは難しく、精神的な面に関して失禁体験VRの「羞恥」と異なり「死」の恐怖に関しては体験側の負担が大きすぎるためどうしてもチープな体験となってしまいます。
しかし、これを外から眺めるものにした場合はどうでしょう?金属で作られた牛の重量感、そのファラリスの牛を焼く燃え盛る炎を眺めたときに感じる高揚感、その温度や肉の焼けるにおいのリアリティと少しのリアルな身の危険、それを感じることができればそれはこれ以上ない「ファラリスの雄牛VR」なのでは?すなわち、「ファラリスの雄牛で焼肉をしてそれを外から眺めればいいのでは?」
金属3Dプリンタで自分だけの雄牛を作ろう
幸いなことに3Dモデルはファラリスの雄牛VR用に作ってあります。あとは焼肉をやるための3Dプリントの材料の選定です。鉛など体内に入ると毒性があるものというのが金属には存在するので焼肉に適した材料を選定する必要があります。金属3Dプリント材料のMSDS、物性データシートを3Dプリントを依頼するDMM.Makeさんから取り寄せます。これらは人体への影響のデータ、使用用途、材料の組成などが書いてあるので、材料を選定する際は問い合わせしてみるといいでしょう。今回は生体に対して影響の少なく口内を含むインプラントにも使用される純チタン(Ti)を使用することにしました。
↑チタン材料のMSDSの一部
(自己責任にて実施です、口内摂取に関してはデータなしの記述があり保証対象外の仕様になりますので、マネしないでください)
ちなみにDMMさんでは、さまざまな金属材料を含む3Dプリントを個人からの発注を受け付けております。本物のファラリスの雄牛の材料でもある真鍮での制作もありましたが、今回は予算オーバーにより断念。また別のものも試してみたいです。
↑真鍮やシルバーは直接の3Dプリントではなく、3Dプリントでつくったものを作ってそれをもとに鋳造するのでちょっと諸経費が多めに乗ります。
このサイトでは3Dプリント用のデータをアップロードして、10日ほどで自宅に”サポート材も取り除いた完成品が”自宅に届きます。めちゃくちゃ簡単!!
↑造形不可のものとかを直してアップしている様子。5個目くらいでやっと通った
余談ですが、この「サポート材を取り除いてくれる」こと自分で3Dプリントしている人はわかると思うのですけどめちゃくちゃ便利です。サポート材というのは3Dの形がくずれないためについてしまう柱なのですが、ファラリスの雄牛の中の空洞を支えるためにはサポート材がついてしまい、小さい穴から中のサポート材を取り除くのは結構めんどくさいのです。この手間を省けるのはすごい。なんか宣伝みたいだけどDMMさんからは一銭もいただいておりません。
僕だけの雄牛
というわけで、注文から約10日、僕だけのファラリスの雄牛が自宅に届きました!
か、かっけぇ!!!
金属特有のずっしり感、角のとがり具合、触ったときに感じるごつごつしさは想像以上のかっこよさです。
大きさとしてあまり大きいものではありませんが、金属特有の重量感は持ち主の所有による特別感をより強く感じさせてくれます。これは3Dプリントで実物を作ってこそ感じられるものですね。雄牛や人物の銅像を作る人の気持ちがちょっとわかりました。ちなみにお値段は2万円ほどでした。金属3Dプリンタってもう少し値段が高いイメージがあったのも含めて、意外と安いのでは?
さぁ、焼肉だ!!
というわけで実際に焼肉した動画がこちらです。
か、かっけぇ!?
燃える炎、焼けていく肉の音、そして匂い。小さいながらも、ファラリスの雄牛が確かにそこにはありました。やはり、炎がそこにあるというのは人の本能に訴えてくることがあります。ちなみに、触ったらめっちゃ熱かったです。
気になる味のほうですが、普通にフライパンで焼くよりうまい!!足の部分に油が落ちる機構にしてあるので余分な脂が落ち、包まれるようにまんべんなく加熱された牛肉はかなりのうまさ!特にホルモン系がおいしかったです。
まとめと感想
というわけで、今回は紆余曲折の末にファラリスの雄牛で焼肉をしてみました。そして、わかったことがあります。
「金属と炎はかっこいい」
とても当たり前で単純な結論ではあるのですが、炎と金属のかっこよさは実際に見てみると本能に訴えかけてくることがあります。昔の偉人が銅像を作らせたのは、この単純な「金属製のものはかっこよく所有欲を満たされる」感覚からきたのではないかということが金属3Dプリンタで実物を作ることでより実感できました。
バーチャル空間でなんでも作れる時代になり所有に対する価値観は変わってきてしまっているものだと思うのですが、特に昔の人の感覚に関しては、実際に作ってみたり燃やしたりしないと理解できないものもあるのかもしれないと思いました。
まぁ、僕バーチャルなんですけど。
というわけで、バーチャルでもバーチャルじゃなくてもいろいろ実験したりしているバーチャルユーチューバーなのでyoutubeチャンネルも登録してね。 以上。三珠さくまるでした。
おまけ。
余談ですが、このバーナーはかなり火力があるのですが、この小さな雄牛を加熱してやっと肉が焼ける程度に温度が上がる程度でした。昔の技術力で作れるレベルの大きな雄牛の銅像を下からあぶって加熱した場合、金属の大きさから昔の技術でこれを十分に加熱するのは難しいだろうなぁと思われます。おそらく、実際に使われた処刑具というより象徴的な道具なのではないかと思いました。また、火あぶりと関係なく笛がふけることに気づきました……笛だけ吹くのは……すごく怖いという点も含めてすばらしい体験になるでしょうね。
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