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【資産運用】投資はポートフォリオが全て


何に投資すればいいのか?

NISAが2024年に拡充されてから、日本社会でも投資機運が高まっているが、多くの人々がどのようにして投資対象を選択しているのかは、興味あるテーマの1つと言えるだろう。

「NISAで何に投資すればいいの?」という疑問は多くの投資初心者が抱く疑問であるが、そもそも問題の立て方が間違っているようにも思える。

「NISAで何に投資すればいいの?」という疑問の根底には、「初心者でも大ヤケドせず、いい感じに資産を増やせる投資商品があるはず」という思い込みがあるようだ。しかし、投資にはリスクが付きものである限り、そのような短絡的な思考で投資をおこなうと、大ヤケドをしかねない。

NISA投資界隈の一部では、全世界株式への分散投資をうたうeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)に全力投資すればOKという風潮があるが、そのような言説を流布し、或いは実践している人々は、株式資産に全額投資をした場合のリスクをきっちりと把握できているのか、いささか心配になってしまう。

もちろん、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)自体は、低コストで全世界に幅広く分散投資できる極めて優れた投資商品の1つであることは疑う余地がなく、大いに活用すべき商品であるのは間違いないが、その投資割合については、立ち止まって、よーく考えてみる必要がある。

つまり、投資のポートフォリオを考えることが重要なのだ。

ポートフォリオとは、分散投資したときの資産の構成を指す用語であるが、投資結果の9割がポートフォリオで決まると言われているほど、投資では重要なファクターとなっている。

極論すれば、投資においては、ポートフォリオが全てなのだ!

(注)ここでは、わかりやすくポートフォリオという用語で統一して説明したが、正しくは、資産クラスの割合がアセットアロケーション、具体的な商品の割合がポートフォリオである。


ポートフォリオの決め方

それでは、そのポートフォリオはどのようにして決めるべきであろうか?

株式資産を多く組入れた方が、高いリターンを望めるが、同時にリスクも高くなってしまう。長期投資においては、途中退場せずに市場に長く居続けることが成功の必要条件になっているため、無リスク資産を組み入れて十分にリスクを抑えたポートフォリオを組むことが肝要である。

しかも、ここで考慮すべきリスクは、一般に投資業界で言われている単年でのリスクではなく、長期投資した場合の累積リスクである必要がある。

別記事でも書いたが、最も簡単なのは、全世界株式インデックスファンドに個人向け国債や定期預金などの元本保証商品を組み合わせて、ポートフォリオを完成させる手法だ。

この場合、ポートフォリオのリスクは、全世界株式インデックスファンドの組入れ比率を0%から100%の間で変更して調整することが可能だ。

そして、累積リスクは、長期投資のシミュレーションで算出し評価するのだ。

ポートフォリオ 三鷹 台. 本書社. 2023. "資産運用の新常識"


長期投資のシミュレーション

それでは、具体例で計算した結果を見てみよう。

ここでは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の外国株式の設定値、μ=7.2%、σ=24.9%を採用し、全世界株式インデックスファンドの組入れ比率を0%から100%の間で変化させ、元金1,000万円を40年間運用した場合の資産額をシミュレーションした、

シミュレーションは、別記事で紹介したモンテカルロ法で実行した。


累積リターン

下のグラフの期待値は、累積リターンに相当する値である。

累積リターンは、全世界株式の組み入れ比率が高いほど増加し、100%の場合は、何と元金1,000万円が1億6,000万円に増えている。

参考までに、株式50%のポートフォリオでは4,100万円に、株式20%のポートフォリオでは1,700万円になっている。

この資産結果だけを見ると、株式100%のポートフォリオを組みたくなるが、ここは冷静に、累積リスクを見てみよう。

期待値 三鷹 台. 本書社. 2023. "資産運用の新常識"


累積リスク

下のグラフの下位1%とは、1%の確率で出現する低い方の値であり、ここでは、この値を累積リスクと定義する。

累積リスクは、全世界株式の組み入れ比率が高いほど低下し、100%のポートフォリオでは、何と元金1,000万円が100万円以下、つまり10分の1まで激減している。

参考までに、株式50%のポートフォリオでは50%減に、株式20%のポートフォリオでは20%減になる。

リスク耐性(どこまで資産が減っても耐えられるかの尺度)は、人によって異なると言われている。

しかし、人生を賭けて40年も投資を続けた結果、最悪の場合(ここでは1%の確率)に、資産が10分に1に激減してしまうかもしれない現実を冷静に受け止めることができる人間は、そう多く存在しないだろう。

株式100%のポートフォリオは明らかにリスクの取り過ぎであると、筆者は考える。

では、どこまでのリスクなら許容できるかという議論になるが、これはリスク耐性によるとしか言えない。言い換えれば、投資する当事者がどこまで腹をくくれるかにかかっている。

投資の結果は自己責任であり、他人が「あーせい、こーせい」とは言えない領域なのだ。成功の果実も失敗の現実も、引き受けるのは全て投資した本人なので、本人が決める他ないのだ。

リスクを減らせば、当然リターンも減るので、グラフの数値を参考にして、どこでバランスを取るのか?ご自分のポートフォリオを決めていただければと思う。

下位1% 三鷹 台. 本書社. 2023. "資産運用の新常識"


結論

投資の成績は、ポートフォリオが決める。そして、そのポートフォリオは、累積リスクを考慮して決める必要がある。

リスク耐性は人によって異なるが、投資の結果を引き受けるのは投資家本人であるのだから、どのポートフォリオを採用するかは、投資家本人が決めなければならない

参考までに、筆者は、親しい人からアドバイスを求められたときは、株式比率50%のポートフォリオと答えるようにしている。

※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
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お金の教科書

もっと詳しく知りたい方は、拙著『資産運用の新常識』を参照ください。


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