【猫生】猫が自由に闊歩する街
猫は街の一員
街を自由に歩き回る動物と言えば、真っ先に猫が思い浮かぶ。人間が暮らす環境の中をドヤ顔で歩き回る動物の中で最もサイズの大きい動物が猫なのではないだろうか?
ちょっと前のニュースでは、餌不足で冬眠し損ねた熊が里の住宅街まで降りてきて人間と出くわす事件が頻繁に報じられていたが、熊と共生していると主張する人間はいないだろう。熊は人間の命を奪いかねない存在であり、猟銃で駆除されるべき対象だ。
田舎の方に行けば、狸やアライグマ、ハクビシンなどに出くわすこともままあるが、彼らは街の住民と言うよりも農作物を食い荒らす害獣として扱われている。
もっと山奥の方に行けば、鹿や猪が出没することもあるが、そもそも彼らは山の生き物であり、農作物を食い荒らす害獣でもある。
そう考えると、唯一人間社会と共生関係を保ったまま街で暮らす生き物が猫であると言えるのではないか?
人間社会と共生する動物としては、猫以外にも犬がいるが、街で見かける犬はほぼ例外なく綱に繋がれていて、言い方は悪いが既に自由を無くした存在だ。
かつては、野良犬という自由な犬も存在していたが、彼らは狂犬病という発症したら必ず死に至る恐ろしい病気を媒介することから、人間社会にとって厄介な存在と認定されて排除されてしまった。
子供の頃、涎を垂らしながら狂ったような眼をして迫ってくる野良犬に追い回された記憶があるが、人間界の秩序を守るためには、野良犬が排除されるのも仕方のなかったことかもしれない。
猫にも室内飼いされている猫は居るが、それ以外に街を自由に歩き回る猫がいる。いわゆる野良猫という存在だ。地域猫とも言われている。
彼らには特定の飼い主は存在しないが、時に人間から餌をもらったり、休む場所の提供を受けながらも、行動の自由を奪われることなく街中を闊歩している。うまく人間社会と共生関係を結びながらも独立した存在として暮らしているのだ。
その意味で、猫は立派な街の一員であると言える。
猫の起源
猫の先祖は、リビアヤマネコだと言われている。約1万年前に農耕の始まりと伴にエジプトやメソポタミアで飼育され始めたのが最初らしい。
収穫した穀物を狙う鼠の番人として飼われたのが最初だろう。鼠の番人なので、当然室内飼いなどではなく、人家の周りを付かず離れずの共生関係であった。
猫はそれ以来、鼠退治という人間にとって重要な役割を担いながら人間社会の一員として暮らしてきたのだ。
猫による鼠退治は現代社会においても大きな役割を果たしていると思われる。現に、野良猫が少なくなった新宿の繁華街では鼠の天国になっているというニュースを見たことがある。鼠は伝染病を媒介する厄介な存在であり、街に猫のいない社会は人間にとって暮らしいい社会ではない。
日本にいつ猫がやってきたかについては、記録によると6世紀の仏教伝来の頃と言われているが、鼠の番人としての役割を考えると、弥生時代の稲作の始まりとともに、人間と一緒に渡来してきたと考えても不思議ではない。実際に弥生時代の遺跡から猫の骨も発見されているそうだ。
ちなみに、弥生時代の始まりは最新の炭素14年代法測定により従来の学説より500年遡り、紀元前10~9世紀と言われている。日本においても、人間と猫の暮らしは3000年の歴史があったかもしれないのだ。
最近の風潮
最近の風潮として、飼い主の定まっていない猫は不幸な存在であり存在を認めない、という考え方が一部保護団体の間で広がりつつあるように思う。
そのため、野良猫に対する餌やりを非難したり、保護・譲渡活動したり、動物愛護の名のもとにTNR活動をしたりする団体も増えている。時には、自治体がそれらの団体に補助金を出していたりもする。
彼らの活動は、これ以上不幸な猫を増やさない目的だったりするようだが、本当にそれが猫の幸せに結びついているのか疑問が残る。
捕獲した猫も新たな飼い主が見つかればそれなりに幸せなのかもしれないが、本当のところは猫に聞いて見なければわからない。自由を奪われた猫は、狭い空間に閉じ込められて、人生(猫生)を嘆いているかもしれない。
人間に守られた安全な空間で暮らすことだけが猫にとっての幸せと考えるのは、人間の独善かもしれない。
また、これ以上野良猫が産まれないようにTNR活動をする団体も、本当に動物愛護に繋がっているのか、もう一度考えて欲しい。
極論のようだが、仮に、彼らの活動を人間に置き換えて考えてみたらどうだろうか?
例えば、貧民窟に暮らす住民がかわいそうなので、貧民がこれ以上増えないように、勝手に連れ出して避妊手術を施してまた元の場所に戻す行為は、果たして人道的と言えるのだろうか?もちろんこれは、実際に行えば人権侵害である。
人間に対しては許されないけど、猫に対しては許されるのか?もしそう主張するなら、それは傲慢以外の何物でもない。
猫だって懸命に生きているのだ。
そっと見守っておいてあげてはくれまいか。
彼らの生環境は確かに厳しいかもしれない。飼い猫よりも寿命は短いのかもしれない。
でも、それが自然界に生きているってことじゃないのか?
野良猫がいる風景
街に野良猫がいる風景が好きだ。
近所の住宅街を散策していて猫に出会ったとき、機嫌がいい時は「ニャー」と返事してくれて、眠い時は尻尾で挨拶してくれて、最高にご機嫌の時は足元に体をグイグイこすりつけてくる彼らがとても愛おしい。
もちろん、猫が嫌いな人も一定数いるだろう。もし、猫が苦手なら、玄関先に水を入れた猫除けのペットボトルを並べるくらいでとどめておいてはくれまいか。
冷静に考えれば、中型の哺乳動物が街を闊歩している姿は奇跡に近い。そんな風景がいつまでもつづくことを祈っている。
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