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【家計管理】先取り貯蓄はやった方がいいのか?


資産形成には元手が必要

長い老後を考えたら、年金だけを当てにしていたら心許ない。老後資金を十分に蓄えておかないと、安心して老後を迎えることはできないのだ。

そして、資産形成するには元手が必要だ。いくら有望な投資先が見つかったとしても、先立つお金がなければ、チャンスを前にして、ただ指を咥えて見ているだけになってしまう。

しかし、一般の賃金労働者が元手を貯めるのは、言うほど簡単な話ではない。

その理由は、マルクスによれば、『そもそも労働者の賃金は、その労働者が1日の疲れを癒し、心と体の健康を維持・回復し、翌朝再びリフレッシュした状態で働くことができるための必要最低額に設定されている』からだ。

今さらマルクスの言説に惑わされる必要はないとの意見もあるだろうが、長年、会社員生活をしてきた者の実感としては、上記の説はあながち間違っているとは言い切れない気がしている。

すなわち、会社という組織は労働者に対して、十分余裕を持った生活を送ったうえで、なおかつ貯蓄に回せるお金を上乗せして支給してくれるほど優しい存在ではないということだ。

賃金はコストの一部であり、利益を最大化するためにはコストを極限まで削るのが資本主義の原則であることを再認識してみれば、余分な賃金を支払わないのは会社として当然の行動と言える。

それでも、会社組織の中で出世すれば昇給もあり得るだろうが、同時に中間管理職としての責任とストレスを抱えて、それを回復させるためには今まで以上に多くの出費が必要となってしまうのが現実だ。だから、昇給したからと言って、自然に貯蓄が増えたなどといった話は自分の周りでは聞いたことがない。

では、どうすればいいかと言えば、家計をきっちり管理し、無駄な出費を削って元手を捻出するしか手段はない。

しかし、それを阻害してしまうのが、人間の弱さである。

将来苦しまないためには、現在の楽しみを我慢しなければならないことを頭ではわかっていても、それをなかなか実践できないのが弱き葦と言われる我々人間なのだ。


先取り貯蓄の有用性

そういった経験知からか、自分の若いころ、年長者からよく勧められたのが先取り貯蓄だ。

先取り貯蓄とは、例えば手取り20万円の給料を受け取ったら、先に2万円を先取りして貯蓄し、その2万円は端から無かったものとして忘れて、残りの18万円で1ヵ月をやり過ごす方法を指す。その結果、1年経つと、自然に24万円の貯蓄ができてしまうというマネーハックだ。

何とも子供騙しのような手法であるが、自分の経験でもそれなりに有用であった気がする。

今なら、つみたてNISA先取り投資がセオリーであろうが、自分の若い頃は、財形貯蓄先取り貯蓄が王道であった。

当時からひねくれ者であった自分は、「これからの時代は、財形よりも株で増やさなきゃ」という人事担当者の言葉に感化されて、自社株の持ち株会先取り投資していた。

もっとも、その後の株価の動きは、人事担当者の説明とは裏腹に低迷し、10年を過ぎて、やっと投資額に対してプラスマイナスゼロのところで売却するという苦い経験を味わうこととなったわけだが。

しかし、その後、王道の財形貯蓄で住宅資金を貯めて、マンションの頭金に充てることができた。

少し回り道をしたが、先取り貯蓄を活用すれば、一定の資産を築くことができることは間違いない。


先取り貯蓄はやった方がいいのか?

ここまで説明したら、表題の「先取り貯蓄はやった方がいいのか?」に対する答えは、YES!になるだろう。

確かに、身近にいる人に対するアドバイスとしては、「先取り貯蓄はやった方がいいよ」になるかもしれない。

しかし、一方で個人的な感想としては、「先取り貯蓄なんかに頼っててどうすんの?」という思いの方が強い。

そもそも、資産形成するには元手が必要なことは自明の理であり、そのためには、先取り貯蓄などという他力本願の手法に頼るのではなく、自分に取って必要な支出は何かを常に意識しながら生活し、結果として元手が形成できるという自力本願でなければ、その先の資産形成の道は険しいと思うからだ。

株式を筆頭とするリスク資産に投資した場合、価格の変動は避けられない。株価が暴落した時でも、それが想定内の下落であれば悠然と構えていられる胆力がなければ、投資は続けられないのだ。

その胆力を養う意味でも、先取り貯蓄ではなく、結果として元手を残せる家計管理にチャレンジしてみたら如何だろうか?

※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
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