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伸びる人に共通すること

 実は、大学で学生に教える傍らで、非常勤講師として生計を立てなければならなかった時間が長かったため、若くして専任教員になったヒトタチと比べると私は毛並みが悪い。そのおかげで高校生や中学生向けの家庭教師や塾講師のほか、大学生向けの編入学試験予備校講師や進路指導、大学院進学向けの論文指導だけでなく、補助金の獲得やその遂行、調査報告書の執筆や出版などの研究員、研究プロジェクトのマネジメント経験、変わったところでは社長代行業やコンサルティング業の経験がある。
 二十数年の時間で多種多様な人々と交わってきた中で、伸びる人と伸びない人についての自分なりの見立てが出来ているという自負はある。


伸びない人の共通項

 伸びない人は間違いなく自分の考えに「固執」する人である。素直な人は自分の考えを結果として曲げなかったとしても「聞く」「(ちょっとは)考える」ということができる。そして、記録として書き出さないし、そもそも記録をとろうとしない。
 では、やはり伸びる人は「素直な人」なのではないかと思われるかもしれないが、そうではないと私は思う。もう少しだけ前振りにお付き合いいただきたい。

 伸びない人は、自分に責任があると考えないし、息を吸うように噓をつく。組織で仕事をしていても同じことに遭遇するのだが、組織上で発生した問題について自分の責任を認めないばかりか他者に転嫁する。悪質な人にいたっては、その後の情報を統制して組織のメンバーの一挙手一投足を縛り、改善を目指すのではなく、これ以上に問題が発生しないように抑え込もうとする。そのためには平気で嘘をつき、他人を振り回して疲弊させるのだが、その慰労さえしない。だから、伸びない人の周りからは人が去っていく。
 では、自分の周囲に人を集めればようのかと思われるかもしれないが、それも違うと私は思う。自分の意見に同調するイエスマンばかりを配置しても意味がないし、何よりも自分自身が何者であるのかを見失いかねない。

伸びる人の共通項

 では、伸びる人に共通することは何だろうか。

 私は言葉のキャッチボールができる人だろうと感じている。今回は、言葉のキャッチボールができるようになるために、これまで私が出会い交わってきた人々の「上手な方法」を3つのほど紹介することにしたい。

 第1に、相手の言葉を受け止めた時に「なぜ?」と考えること。当たり前のように聞こえるかもしれないが、意外と難しい。なぜなら、受け止めると同時に「なぜ?」と質問しては意味がないからである。相手が発する言葉の背後にある気持ちや目的について自分なりに考えたうえで「なぜ?」云々と質問することができる程度に考える必要がある。ゆえに、この行動は所謂言葉狩りでもないし、相手と対決するわけでもないし、相手を言いくるめることでもない。そして、当たり前のことなのだが、幼稚園の頃に理解し実践できる早熟な子もいれば、四年生大学を卒業しても理解できず実践できない子もいるのが現実である。

 第2に、相手に返した言葉の次の反応を再び受け止めた時に再び「なぜ?」と考えること。人間は自分の言葉を言い放つだけでなく、そこからどんな反響が返ってくるかを通常は予想する生き物である。そのため一定程度の予想を用意して自分の言葉を相手に返す。これは野球でピッチャーが一球投げる配球毎に守備位置を変更し、飛んでくる打球に対応するのに似ている。しかし、ここで考えることとは、予想外のものまで含む。ポイントは相手の考え方を把握することにある。野球でも、どうしてその打球を捕れるのかと驚くファインプレーに遭遇する時がある。その選手の身体能力による時もあるだろうが、相手の癖や傾向、性格等から導かれる予想の正確性が高い時の方が多いように思う。

 第3に、言葉のキャッチボールが終わった後のことを見通せること。話し合いに結論があるように、そしてキャッチボールにも終わりがある。問題は、言葉のキャッチボールが終わった後にどうするかである。意気投合すれば後日この続きを話そうと約束して別れればよいし、考え方が相反するのであれば後日のキャッチボールを約束したり、袂を分かつことを宣言したって良い。ポイントは、この言葉のキャッチボールが自分にとってどんな意味があるかを自問自答することにある。

 以上3つほど紹介してきた。皆さんの日常における何気ない会話が、何気ない会話から意味のある会話へと変化してゆくことを願います。(了)

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