ice cream_18

18

慌てて帰ってきた。

警察沙汰になることもそうだったが、あの笑顔はどうにも見ていられない。

どす黒い放射体を帯びている。

彼女の中の、どの時点で、あんなものを発するようになったのか。

こないだコルクボードに貼り付けてあった写真も、謎のままだ。

冷蔵庫を開けて、作り置きのお茶を取り出した。

隣にいたのは、茂木だった。

射抜くような目線で、真顔で、カメラの方を向いていた。

壁にかかった鳩時計が時を刻んでいく。

外から子供の声が聞こえた。

自分のやり方で、ランドセルに収納したいのを、母親が必死に諌めているのが聞こえた。

入真知の為につけていったTVはいつのまにか消えていた。

上に住んでる親が、勝手に入って来て、消したのかもしれない。

再三、やめてくれと言ってるのに―――

なんでいつも、自分の分まで、取ってしまうのだろう―――

部屋の掃除だって―――

勉強だって―――

好きな子だって―――

仕事を選ぶときだって―――

なんで、自分の思う通りに持っていってしまうのだろう。

古めかしいインターホンが鳴って、とりとめもない思考に陥っていたことに気づいた。

家族の問題が、意識の表層に上がってこないよう、常に気をつけていた。

どこからこんな思考になってしまったんだろう。

二回目のチャイムがなった。

疲れの溜まった足に鞭を入れて、立ち上がった。

入真知が帰ってきたんだろうか?

別に扉をすり抜けてくれば済むことなのに―――

昼の陽光で、テーブルの上においてあった指輪が、黒く反射した。

その瞬間、茂木の隣に寝そべっていた人物が頭をよぎった。

―――まさか―――そんなことあるはずがない。

三度目のチャイムがなった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?