ice cream_15
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商店街の並びにあった。
五階建ての、縦に長い建物が目を引いた。
表向きは趣向を凝らしているように見える。
夜になっても、人通りは絶えない。
姫容李のプライドの高さからは少しそぐわない気がした。
こっちっぽい―――と行って、入真知はエントランスに入った。
ダウンライトが一つ、くすんだタイルを照らしている。
掲示板に、指名手配犯の精悍なポスターが貼ってある。
オレンジの光がゆっくりとカウントダウンして、鉄の古い扉が開いた。
正面に、何故か姿見が貼られている。自殺防止用だろうか。
当然入真知の姿は写っていない。
ガン、と閉まって、宙へ浮かぶ。
壁に持たれて、腕組みをした。
蛍光灯が消えかかって、室内が暗くなったりする。
「指示はこっちでするから−−−二時間後には出ないと、心臓止めるから。」
屈託のない笑顔でこちらを見ている。
入真知の挑発を横目に、仮野は別の事を考えた。
姫容李の生活リズム等、全く想像したこともない。
この時間に茂木と会っているんだろうか?
「−−−深入りすんな」
こちらの想念を読んで、入真知はサラッと言った。
廊下に出た。
下町の夜景を一望できた。
飲み屋から出てきた学生が大声を上げている。
一番端の部屋の前で止まった。
「バレたら仮野のせいだからな」
ニヤニヤしていた。
どうリアクションしたらいいのかもわからない。
「何か言って下さいよ」
入真知は扉をすり抜けると、暗がりで指輪を嵌めた。
ノブが冷ややかな音を立てた。
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