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フクダ電子長野販売事件②(平成29年10月18日東京高裁)

概要

控訴人(兼附帯被控訴人。被告)会社の従業員であった被控訴人(兼附帯控訴人。原告)ら4名が、控訴人会社とその代表者である控訴人甲に対し、控訴人甲のパワーハラスメントを理由とする慰謝料の支払い、被控訴人のうち2名について賞与の減額分が無効であると主張し、減額分の支払い、被控訴人のうち3名について会社都合による退職に該当するとして、支払われた自己都合退職による退職金との差額の支払い、被控訴人のうち1名について懲戒処分が無効であるとして、減額された賃金相当額の支払いを求め、原審が請求を一部認容、一部棄却した事案の控訴審。

結論

一部棄却、一部変更 → 上告、上告受理申立て

判旨

本社の内部統制部長及び代表取締役は、賞罰委員会が開催される前の時点で、賞罰委員であるC所長、A部長、その後に賞罰委員となるD次長に対し、「前代表者による交際費の支出が刑事事件として立件が可能であって、元従業員Gも同罪である。前代表者が元従業員Gの人事評定を高くすることにより同人が加担し、元従業員Gを解雇することができる」などと説明しているが、上記説明内容は客観的な裏付けを欠いており、将来賞罰委員会を構成することになる者にこのような説明をすることは誤った先入観を与えるものであって、公正を著しく害する行為といえ、また、代表取締役は、賞罰委員の人選として、A部長が元従業員Gと部署が同じであり情に流されるし人事評定を高くしているとの理由から、同人を委員から外し、D次長を委員として任命したことは、当初から元従業員Gに懲戒処分を科すとの方針の下に賞罰委員を変更したものといえ、公正を著しく害する行為であること等から、本件降格処分は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、無効であり、元従業員Gは、会社に対し未払分6万6617円の賃金支払請求権を有する。

代表取締役は、平成25年度支給基準に基づき、元従業員Gは修正申告及び追徴課税の責任を負うとして-30%と定め、元従業員Hは職責を果たしていないとして
-20%と定めたことが認められるが、元従業員Gに修正申告や追徴課税の責任があるといえず、また、元従業員Hの賞与の減額事由として主張される、営業統括者としての職責を果たしていないことを基礎付ける具体的な事実の主張及び立証がないこと等から、元従業員G及び元従業員Hに対する減額の査定部分は、裁量権の逸脱濫用があって無効であるというべきであり、元従業員Gは減額分20万1277円、元従業員Hは減額分12万6265円について賞与支払請求権を有する。

代表取締役の元従業員Hに対する一連の行為は、元従業員Hに退職を強要するものであって、違法な行為に当たり、また、代表取締役の元従業員G及び元従業員Hに対する一連の退職強要行為は、元従業員I及び元従業員Jにも間接的に退職を強いるものがあるから、元従業員I及び元従業員Jとの関係においても違法な行為に当たるから、代表取締役による上記一連の退職強要行為は違法であり、これにより元従業員らは精神的損害を被ったから、代表取締役につき不法行為が成立し、会社は会社法350条の責任を負うところ、代表取締役による退職強要行為の内容及び程度その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、これによって被った精神的損害の慰謝料用は、それぞれ、元従業員Hが70万円、元従業員Gが100万円、元従業員Iが40万円、元従業員Jが40万円が相当である。

元従業員らは、代表取締役の一連の退職強要行為によって勤務の継続を断念し、退職願を提出して退職手続をとったものである。このように、会社及び代表取締役の退職は、代表取締役の退職強要行為により退職を余儀なくされたものであるから、会社都合退職と同視でき、会社都合退職に当たるというべきである。


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