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大学院生に対する教授2名のハラスメントは認められず慰謝料請求が斥けられた例(平成25年6月11日京都地裁)

概要

国立大学大学院経済学研究科の大学院生であり、同研究科事務補佐員として雇用されていた原告が、同研究科教授である被告らから、種々の違法なハラスメントを受けたと主張して、被告らに対しては不法行為に基づき、被告大学に対しては使用者責任、一般不法行為又は債務不履行に基づき、慰謝料等の支払いを求めた。

結論

棄却

判旨

A教授が突然,大学院生に対し,「研究者にならないなら大学院を辞めてしまえ」との発言をしたとの大学院生の供述は不自然であり,にわかに信用できず,仮に大学院生主張のかかる事実が認められたとしても,そのような一回的な言動が,その態様に照らして,社会通念上許容される限度を超える違法な行為であるということはできず,また,A教授が正当な理由なく大学院生の題目届への署名押印を拒否しあるいは大学院生の指導を拒否したことを認めることはできず,さらに,A教授の研究室において,A教授と大学院生の二人きりで,飲酒を伴う論文指導が行われたことを示す的確な証拠はない上,仮にかかる事実が認められたとしても,それ自体が直ちに違法ということができるものではない等から,大学院生のA教授に対する損害賠償請求は理由がない。
大学院生を午後7時頃にB教授の研究室に呼び出すことは,セクハラを疑われかねない行動であるとしても,公認会計士試験の受験勉強をしている大学院生に対し,会計ソフトの使用方法について尋ねること自体が違法な行為に当たるものではなく,また,B教授が大学院生を二人だけでの食事に誘ったことを認めるに足りる証拠はなく,B教授が,懇親会終了後,大学院生に対し,「君はお酒が強いね」という趣旨の発言をしたことが認められるが,B教授の発言が一回的なものであること,当該発言はほかにも人のいる場所で,勤務外である酒席の後にされたものであること,発言の内容はそれほど悪質なものとはいえないこと等から,大学院生のB教授に対する損害賠償請求もまた理由がない。
教授2名の大学院生に対する不法行為が成立しない以上,大学の安全配慮義務違反による不法行為責任ないし債務不履行責任について論じる余地はない。


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