懲戒免職処分は取消されたが、慰謝料請求は認められなかった例(平成26年12月8日東京地裁)
概要
被告・東京都教育委員会の条件附採用期間を1年間とする教員として採用され、都立中学校に勤務していた原告が、校長から原告に対する特別評価所見の採用の可否につき「否」とされ、その後、免職処分を受けたことについて、原告が被告に対し、同免職処分の取消しを求めるとともに、校長からパワハラを受けたとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料の支払いを求めた。
結論
一部認容、一部棄却
判旨
着任当初の教員の振るまいに,校長が教員としての資質に疑問を持ちつつあった中で0点事件(教員が0点を取った生徒に「ある意味Great!」というスタンプを押したこと)が生じたところ,その過程での校長らのやや過剰あるいは厳しすぎる指導に対して教員が納得せず反発し,校長がさらに否定的な評価をするという悪循環を招いたといえ,また,校長の副校長に対する評価の低さ及びそれに伴う両者の関係の悪化が,校長と教員との関係にも影響を与え,さらなる混乱を招いたとも考えられ,校長の評価のように「どこの学校に行っても戦力にはならない」とまではいえず,校長の総合評価は,生活指導・進路指導に関する不合理な評価を含むほか,不十分な初任者研修にとどまった弊害に留意することなく判断したものとして,客観性を欠き,かつ不合理なものであったといわざるを得ないこと等から,裁量権の逸脱,濫用があるものと認められるから,本件処分は違法である。
観察授業に立ち会った教員から校長に対しどのような報告がなされていたかを具体的に示す証拠はなく,校長が教員を常時監視下に置いたと認めるに足りないこと等から,校長が教員に対し観察授業を実施したことが,国家賠償法上の違法な行為に当たると認めることはできず,また,校長が,主幹を教員の指導教員から解任し,後任者を選任しなかったことは,不適切であったといえるが,校長がそのような措置をとった背景には,それまでの教員の学校運営に関する行為等に対する否定的評価があり,その評価自体不当なものとはいえず,校長が教員の指導教員を不在にしたことを,国家賠償法上の違法な行為と認めることはできず,さらに,校長は教員の正式採用について「否」の判断をしたことが認められるが,それは,教員としての行為に関する校長としての判断によるものであって,個人的な悪感情に基づくものとは認められないことから,校長の教員の正式採用を「否」とした行為が国家賠償法上違法な行為であると認めることはできない。