「女の子らしさ」の呪い。

私は可愛いものが好き。洋服もガーリー系とかフェミニン系とか、長いスカートとかの方が多い。髪を長く伸ばしている。メイクするのも、まだ上手くないけど好き。可愛くなりたい、ってずっと呟いている。

でも小学生の時の私はずっと髪が短くて、ズボンしか持ってなくて、青とか黒とかかっこいい色でロック系の服が好きだった。ドクロとかユニオンジャックとか。パーカーとジーンズばっかり着てた。よく男の子と間違えられていた。

イメチェンしたの？って聞かれて趣味が変わったんだ～なんて答えてて。実際のところはよくわからない。今は今の服装が好きだけど。

簡単に言えば、恋愛が理由だった。好きな男の子がいて、傍目にも自分が「女の子らしい」子じゃないのは分かっていたので、「可愛くならなきゃ」って思って、着慣れないスカートやひらひらとした服を買った。髪も伸ばした。オシャレとしては当社比それなりなセンスにはなれたけど、まあ結果は玉砕だった。

同じ時期、クラスの男子とめちゃくちゃに仲が悪かった。服のみならず性格も男勝り勝気な私でオマケに空手まで習っていたときたもんで、ある時悪ガキにこんなことを言われた。

「お前男じゃん」

って。

今思えば馬鹿馬鹿しいというか、ただ流れで言われたようなことで、間違いなく向こうは覚えてもいないんだろうけど、私はその言葉に酷く傷付いた。それまでだって男子みたいとか男子より強いとか言われたことは何度だってあったし、その度負けじと言い返していたし、自虐的にそれを言うことだってあったのに、妙にそれが深く残った。

恋をしていたから見られ方に妙に敏感になっていたのかもしれないし、中学生特有の繊細さかもしれないし、真偽は不明だが。とにかくそれを気にして、より一層「男の子っぽい」服は着れなくなったし、髪はずっと肩より短くは切れない。ズボンを履くのが苦手だ。結果的に「女の子っぽい」物ばかり普通に好きになっていた。好きなのか、それしか選びたくなかったのかはわからない。

馬鹿馬鹿しいことだと今なら言えるのに、それでも未だに私はその言葉の呪いを解けない。

そもそも女の子っぽいとか男の子っぽいとか、その括り自体が馬鹿馬鹿しいと今なら分かる。性別や周りなんて気にしないで自分の好きなものを着たらいいし、好きなものを着ている人がきらきらと見えることもよく知っている。かっこいいものを身に着ける女の子だって憧れるし、かわいいものが好きな男の子だって素敵だ。周りの人がするそれなら、手放しで尊重できる。

それでも私は「女の子」になりたかった。

なりたいようにあれというなら、自分は女の子でいたかった。それも古典的な「女の子らしい」に。

今の私はスカートをよく履くし、カジュアルなTシャツやパーカーはほとんど持ってなくて、レースやリボンのついている服が好きだ。それが似合う自分で居たい。髪を長く伸ばしている。間違いなく、男か女かって見た目で聞かれたら、女子だってほとんどの人は思うはずだ。男の子と間違えられたりしていた小学生の頃とは違う。

そのはずなのに、周りの人に女の子だって扱われるとものすごくびっくりする。嬉しいけど、びっくりする。ああ、私ちゃんと女の子に見えてるんだって。

おかしな話だ。自分でそうあろうとしているのに、そう扱われることにまだ驚いてしまう。私の心の中にはずっと、「男」だって言われた記憶が離れない。天邪鬼にそういうふうに振舞ってしまうことすらある。私女子力ないから、口悪いから、ガサツなんだよねって作り笑いをしながら。

ちゃんと女の子っぽいって言ってくれて、女子だからって理由で優しくしてくれて、可愛いって褒めてくれて。変な意味も無く、普通に、ちゃんと扱ってくれる人が今では周りにたくさんいる。それが時々泣きたくなるくらいに嬉しい。それでも呪いは解けない。いつ解けるかは分からないし、ずっとこのままかもしれないし。

でも「可愛い」の基準なんて人それぞれ、千差万別だってことを今の私は知っている。私がレースのワンピースを可愛いと思うように、スポーティなトレーナーを可愛いと思う人もいるし、変わった柄のオシャレなシャツを可愛いと思う人もいる。人の「可愛い」も素敵だなって思う。そして私は私の思う「可愛い」が今はちゃんと好きだ。

私は私のなりたい「女の子」でいようと思う。