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雨の日の蝉

言葉なんてもういらないと思った

生きていることを讃えたいのであれば

言葉にするということは意思を表示することで

伝えるということは押し付けることと同じだ


生きていれば 他人に全て奪われていく

同様に 私も他人の全てを奪ってしまう


世界で正しいのは 唯一つ 君の感情だけだ

飛び抜けたあの夏にそう思った

突飛したあの夏の主導者よ

間違いを犯した私を裁いてくれ

この雨の日に

夏を刻むように


生きていれば互いに奪い合っていく

それなのに誰一人として満たされる者はいない


ヒト一人が生きることに価値はあるのか

強く鳴く声を聞いてそう思った

毎年現れる夏の先導者よ

こんな無意味な生き物を嗤ってくれ

あの夏の日に

夏を残すように


私の時間は停滞して

深い 浅い 分からず季節を巡る


世界で正しいのは唯一つ 君の感情だけだ

豪雨と共に鳴き声は轟いた

退屈だった世界を変える勇者よ

間違いを犯した私を裁いてくれ

この夏の日に

雨を刻むように

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