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癌細胞と日本語習得への道

夫はNative English Speakerだ。日本語は挨拶と少しの単語しかわからない。日本滞在歴も私との結婚歴も結構なものなのに話せない。「家で日本語使わないからだよ」とよく言われていたが、日本語を使ったところでそれをまた英語で説明しなければならないその作業が、私には“時間の無駄!効率悪っ!”としか思えなかったからだ。何より本人の学習意欲がほぼほぼ感じられず、私の努力の下にそれがなされないといけないことに不条理さえ感じていた。

それが仇となったのか、“がん患者”としての一歩を踏み出すにあたって見事につまずいてしまう。

入院の手続きだ。夫は病院スタッフの話が理解できない。書類に目を通すなんて100年早い。きちんと理解した上で署名押印だろうというのに対応する術がない。

困った…。

仕方ない…助っ人を呼ぼう!

姉に緊急Call。姉は私と同じ誕生日、つまり双子。何を言わずとも通じる怪しい能力が2人にはある。
“あれ”の2文字で意思疎通できる困った時の姉なのだ。しかも!英文科を出ている。夫と病院スタッフの間に入り不備なく入院の手続きをしてくれた。Thank you!

この時身に染みたのである。
日本語を使ってこなかったことで私も困った、夫も困った、姉や病院スタッフには面倒かけた。
三重奏ではないか…。

日本文化に特別傾倒するものがあれば少しは意欲も湧くだろう。悲しいかなそれがない。
私が亡くなった後の事を考えると、少しでも理解力や会話力を高めておかなければ夫自身が今より更に苦労することになるだろう。
特訓開始である。
習得の道は遥かに長く足踏みも多いと思うが、夫婦2人の共通目標として頑張らないといけないところだ。

「日本アニメが大好きでアニメを観て勉強しました」という日本語ペラペラの“日本以外の国から来られた方”をTVで観ると、「凄い!!日本語上手!」と純粋にただ喜んでいる…。
あなたもそうなろう!
ちなみに、夫は“外国人”という言葉が嫌いだ。

夫の日本語習得プロジェクトが1歩でも前進したとしたら、それは私が癌になったおかげの産物と言っても良い。“癌細胞”Good Job!!なのだ。


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