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激動の時代を生きる「ハードボイルド」の条件とは?

(画像:WBホームページより引用
https://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin2020/


「過去に囚われて前に進めない人達へ」
という言葉が胸の奥に刺さる。

「るろうに剣心最終章 TheFinal」を見てきた。
私は特段アニメ好き、漫画好きと言うわけではない。
むしろ20才を過ぎてからというもの、
ピタリとそれらを見ることはなくなった。

しかし明治時代の剣客の話には何故か不思議と
「ワクワクとロマン」を感じるのは私だけだろうか?

この映画、原作は私が高校生の頃、
今から27年前の1994年から5年間
「週刊少年ジャンプ」で連載していた人気漫画である。

その後アニメとなりJUDY AND MARYが歌う
テーマ曲「そばかす」ともにこちらもヒット。

そして、佐藤健さん主演の「実写映画」として2012年に公開が始まった。

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1作目からおよそ10年が過ぎた今回の第4作目
タイトル「The Final」は興行収入が約公開2週間で
早くも20億円を突破した。

見る者に迫りくる太刀さばきや
戦闘シーンの「スピード感」
人情味溢れる登場人物の「心の機微の描写」
ハラハラさせる「シナリオ展開」で、
映画もシリーズを通して多くの人気を博している。

来月2021年6月に連続公開となる第5作目
「The Beginning」が映画最終話となり、10年に及ぶ物語が遂にこれで完結となる。


主人公の「緋村剣心」は幕末に人斬り抜刀斎
と呼ばれ、世から恐れられた剣客。
口をほぼ開かず、感情を出さず、
ただ使命のままに、新しい時代のために人を斬る仕事人。
「和製ハードボイルド」だ。
人を殺めることに対し何の感情も持たず、幾多の修羅場を剣一つでくぐり抜けてきた。

しかし、やがてそんな戦乱の時代も終わり、世の中は「新たな時代」に変わっていく。

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(出典:Japan Railway and Transport Review)

今回の物語の舞台は明治12年の東京。
江戸幕府が終わり時は明治に。
明治維新からしばらくの時が経ち、
街には争いのない平和な世が訪れた。

「予期せぬ時代の変化」によって侍は刃を捨てることになり、武士という職業が社会から必要なくなった。
また新しい西洋の様式が様々な場面で入ってきた、
まさしく新時代の到来

着物も和装から洋装に変わり、
「祝言(しゅうげん)」、今で言う結婚式にはウェディングドレスを着る女性も現れてきた。


そんな浮かれた世間とは対照的に、
過去に多くの人を殺めた後悔と葛藤が彼の心に重くのしかかる。
「誰にも打ち明けられず」緋村は1人それを胸に抱えながら生きていた。

そして、時代にうまく乗れるものだけではない。
「刃を持たない」「戦いがない」新しい時代に
適応できない者も当然いる。

そんな中、緋村に対して「恨み」を持った人間たちから
「人誅」という名の報復が始まる。

「過去に囚われ、今を生きられない者たちが前に進むために」と言うメインテーマがこの映画の芯を作っている。

明治、令和と時代の違いはあれど、
「現代の変革期」にいる我々にも考えさせられる内容だった。
公開延期を乗り越え、コロナ禍のこのタイミングでの公開には運命的なものを感じる。

私たちは「過去とどう向き合い、
そしてこれからをどう生きるべきか?」
を観る者それぞれに問うアクションエモーショナル感動作品。

この先が気になる方はぜひ映画館に足を運んで欲しい。


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     (画像:毎日新聞2021.5.18より引用)

その映画館の帰り毎日新聞を手に取り読んだ。
その2面に鎌倉を代表する歴史あるお寺「円覚寺派管長」、横田南嶺さんの話が載っていた。

「ここ1年で寺を取り巻く環境は激変しました」と横田さんはいう。
コロナの影響で寺に人を集めることが出来なくなり、今まで寺で人気だった「法話会」が開催が出来なくなってしまったらしい。

そんな時「YouTube」で法話を配信することを思いついたそうだ。

今はコロナでろくに外出もできずストレスが溜まっている人が多い。
そんな混沌とする中、仏教や禅に関心を持って学ぼうとする人が増えているとの事。
この法話を聴いて「救いや癒し」を求めている人が多いそうだ。

「お寺で開催すること」にばかりこだわっていたら、YouTubeで発信するという発想は出てこなかった。

人がなかなか集まれない今、
行き詰まりに見えても「他に伝える方法は無いのか?」と柔軟に考え突き詰めた結果、たどり着いた答えだ。

また横田さんは
「変化が求められるものと、求められないないものが、社会には混在していると考えるようになったんです」と話していた。


この記事を読んで、先程観た映画と重なることが見えた。

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江戸から明治
またそれ以降なくなってしまったもの、
廃れてしまったものはたくさんある。

昔は街灯のランプに火をつける仕事。
外から寝ている住人の部屋の窓を棒で叩き、朝起こす仕事。
そして時代の進歩により、人々の移動手段は馬車から自動車に変わっていった。

時代は少し飛ぶが、1960年頃まではボーリングで倒れたピンを元に戻す人「ピンボーイ」という人がいたのをあなたは知っているだろうか?

当然そのような仕事は今はもうなくなってしまった。

今は特に「近年稀にみる」激動の時代。
時代変革のスピードは疫病により急激に加速してしまった。

おそらく仕事だけではなく、
私達の生活の中でこれから先、なくなったり変化せざるをえない事はたくさん出てくるだろう。

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しかし一方、
・ 困った時は「1人で悩まず」
     仲間に頼る、誰かに悩みを打ち明ける。

・「本当に大事なものは何なのか?」を見極める。

・ 過去にとらわれず「今を生きる」

今回の映画と新聞を見て、
そういったことの大事さ、難しさ。
時が変わっても「変わらないもの」を感じずにはいられない。


そして芯がしっかりしていれば、
「外からどう見られるか」なんて気にしなくていいんじゃないか?と考えさせられた。

「ハードボイルド」とは頭が固い頑固者を指すのではない。
苦しみを抱えながら、不器用ながら倒れても立ち上がるしなやかさだ。

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苦難の強風が吹き荒れた時、
葉や枝は激しく揺れても、
芯となる幹がしっかりとしていれば、
ちょっとやそっとのことじゃビクともしない!

時代の変わり目に求められるものは、
「柔軟な態度」と「芯を持った生き方」だ。


近年、「るろうに剣心」、「鬼滅の刃」等
侍をモチーフにしたアニメや映画が人気である。
それは、この混沌とした「先の見えない時代」を切り開いてほしいという、皆の内に秘めた「切なる願望」の現れではないだろうか。


しかし実社会ではなかなか「ヒーロー」は現れない。
いや待っていてはダメなんだろう。
自分にとって都合の良いヒーローなんて決して現れはしない。

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私にとって、
「変えられるもの」と
「変えられないもの」、
「変えてはいけないもの」はなんだろう?

ちょっと時間をとって「自分自身」に向き合って考えてみようと思えた。

私は頑固で頭が硬いから柔軟に考えるのは正直苦手だ。

休みの日に自宅で1週間かけて作った「新しいアイディア」の提案資料を、古い体質の会社の上司に「ウチの業界には当てはまらない!」と聞く耳も持たず会議であっさり3分で却下されたり。

何度も約束を破る女友達に「なんで守らないんだ!」と
伝えたら、「私にだって色々ある!」と逆ギレされる始末。
イライラして、心をもっていかれ、仕事が全く手に付かなかったことも度々あった。

でもそんな手痛い経験を通して
「相手は動かせない」と身をもって知った。
なら自分が変われば良いと「やっと最近」思えるようになった。
「結果的に相手が動いてくれたらラッキー」ぐらいに考えるようにした。

過去の失敗、機嫌の悪い上司、景気
「変えられないもの」に振り回されたり
固執するのはもうやめよう。
そして「自分が変えられるもの」に目を向けてみよう。

とはいえ、正直なかなか上手くいかない時の方が多いから困ったものだ。

でも、もし上手くいかなかったら不器用でも良いので次は「違うアプローチ」を試してみよう。
色々と試しているうちに「どれかが」当たるかも知れないから。

1つに固執するのではなく、柔軟に。
でもはちゃんとある。

そんな生き方こそが、これからの「激動の時代」を生き抜くハードボイルドの条件かもしれない。

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