【小説】推し燃ゆ

★★☆☆☆

初めて芥川賞作品をどきどきしながら読んだ。私も23歳なので、大学生作家の作品は読みやすいのでは〜なんて思いながら読んだけど、ん〜なかなか文学的というか推しが炎上したことで一冊が終わってしまうという内容で衝撃を受けた…推しが尊いという言葉が流行っていたけど、推しを推すという行為がどんだけ今の若者にとって大きな意味を持つことなのか、改めて考えさせられる。

この本はある種、若者の未熟な恋愛の心理みたいなものを映し出している。好きになると周りが見えなくなる、周りなんてどうでもよくなる、自分のことなんてどうでもよくなる。「愚問だった。理由なんてあるはずがない。存在が好きだから、顔、踊り、歌、口調、性格、身のこなし、推しにまつわる諸々が好きになってくる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、の逆だ。その坊主を好きになれば、着ている袈裟の糸のほつれまでいとおしくなってくる。そういうもんだと思う。」という序盤の1場面にもあるように、人を好きになると没頭してしまう未熟な恋愛の心理の本質をとっている。(恋愛と推しは違うのはわかっているが表裏一体だ、好きになるという心理は一緒だから)
主人公が振り回されるのは、普通の恋愛ではなく、推しに対する愛情。気づいたら恋愛をそう置き換えて読んでいる自分がいた。それは、推さなければならない義務という病のようにも見える。(いわゆるメンヘラ?)自分の周りでも少なくない、推しを推すために死ぬ気でバイトしてお金をかき集める人。

ただ、私にはそういう人がどうしても美しくは見えない。周りを見て生きればもっと楽なのに、推しに目がくらんでいる間に、他にも世の中には素敵な出会いがたくさんあるのにと。ただ、こういう愛情の歪みに着目して叙情的に描いた作品が芥川賞をとるということは現代小説の中で大きな意味があることだと思う。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?