ぼくとともに若返って!
内容紹介
『ぼくとともに若返って!』【シナリオ形式】3/4
「若返りの遺伝子」を操作した!?
若返り過ぎて前世にまで戻った!?
『カレとカノジョはワタシの事情』【ノベル形式】,『グロー・ヤング・ウィズ・ミー』【シナリオ形式】。その前はこんな話だった。
○ 同・カフェテリア
丈二と美幸がお茶している。
美幸「へー。これから二一世紀に向けてほん
まに色んな事が起こるんですね」
丈二「まだ嘘やと思うてるやろ」
美幸「ううん。信じてる。でも凄いお母さん
ですね。そんな地震まで知ってたかの様に、
直前に神戸から引っ越すやなんて」
丈二「……マザコンやと思うてるやろ?」
美幸「マザコン?何それ?」
丈二「……ほんまにオカンの先見性と言うか、
先を見越す眼は凄い。ほんまに手ぇつけた
キャラクター商品、みな当たってんで」
美幸「えと、ウルトラマン、仮面ライダー、
マジンガーZ、ガンダム、キティーちゃん、
セーラームーン……それと何やったっけ」
丈二「インベーダーゲームもやで。友達の喫
茶店に置かせて紹介料取るねん。あれで儲
けたから俺、私立行けたんや、高校大学」
美幸「センスが良くて、きっと素敵なお母さ
んだったんですね」
丈二「ビートルズの大ファンで、俺の名前、
ジョージ・ハリスンからとったんやて」
美幸「ビートルズ?私も大ファン!今夜テレ
ビでやるんですよ。もう楽しみで」
丈二「そう言うたらさっき……オカンも一緒
に連れて来たったら良かったな」
美幸「(笑い)昭和四一年のお母さんも今夜
テレビで観てはるわ」
丈二「それが何でか、観られへんかったんや
て。後でビデオで一緒に観せられたわ」
美幸「(笑い)……子供にジョージの名前か。
ええなあ……分かるわ」
丈二「(笑い)……しかし参ったな。どこ行
ったんや学長。これからどうなるんやろ」
美幸「え?未来の事、何でも知ってるんじゃ
なかったんですか?」
丈二「……」
○ 同・廊下
丈二と美幸が歩いて来る。
松中が立っている。
松中「おい、さっきの!」
丈二「!?」
松中「(丈二の肩を組む様にして)鉄腕アト
ムには会うたか?二一世紀でよ」
丈二「(松中を振り払って)いや。俺は空飛
ばれへんから。(美幸を指して)ウランち
ゃんとデート中や。邪魔せんといてくれ」
松中「ウランとか?注意せな、放射能で頭禿
げるで」
丈二「松中の頭を見て(大笑い)」
松中「?」
丈二「いや、こっちの事。で、何か用か?」
松中「二一世紀で注目されてる……これがで
きたらノーベル賞、言う様な科学技術、何
か一つ、教えろや」
丈二「?」
松中「言うとくけど、水虫を治す薬、言う様
なのはあかんぞ。去年使うたから」
丈二「……」
松中「真弓とかって子が欲しいんやて?ミス
阪神大と俺の子の方が美人やぞ」
丈二「お前ほんまに科学者か?歴史が、未来
が変わったらどうなると思うんや」
松中「さあ。アトムがウランちゃんとデキち
ゃうとか?」
丈二「(美幸に)そうなんか?未来から来た
人とデキたら、大変な事になるで」
松中「……そっちのお茶の水博士は夢講演大
会、出えへんらしいやないか」
丈二「……」
松中「勝負賭けてるんや俺は。もう五年や。
ミス阪神大も二八や。いつまでもボサッと
してられへんのや」
丈二「……」
松中「それに……」
丈二「?」
松中「……今度はスター様も参戦して来やが
ったらしいからな」
丈二「スター様?」
美幸「星大輔。ミス阪神大と同じ二八歳。阪
神大史上最速で助教授になった人」
丈二「……」
松中「高木のアホンダラが……あんなガキに
簡単に負けてられへんのや。どうや、俺に
力貸してくれへんか」
丈二「高木哲悟朗に優勝さす言うてるやろ」
松中「誰?敵前逃亡者の事か?」
丈二「……」
松中「好きなんやろ?ミス阪神大の美人娘」
丈二「……耳貸せ」
美幸「……」
丈二、松中に耳打ちする。
松中「ほんまか!?そんなのが!?」
丈二「中国行きのツアーまでできる。俺が嘘
つく様な男やと思うか」
松中「いや。そうか……よし!善は急げや!
さっそく考えて用意しよう」
丈二「若造なんかに負けたら承知せんぞ!」
丈二と松中、互いに背を向け、その場
を去る。美幸、丈二の背中を見ている。
丈二の背中が微かに揺れる。美幸、丈
二を追って、顔を見ると、笑っている。
美幸「?」
○ 同・キャンパス
高木を探し歩く丈二と美幸。
丈二「ところでミス阪神大ってどんな人?そ
んな美人なんか?」
美幸「……評価分かれるところでしょうね」
丈二「……あ、そうですか……」
美幸「……松中さんの居る研究室で助手をし
てる岡田麗子さん。学生時代、四年間ずっ
とミス阪神大に選ばれたそうです」
丈二「四年間ずっと!?」
美幸「ほんまはたぶん……彼女、学長の娘だ
ったから選ばれたって話もありますけど」
丈二「学長の娘?」
美幸「もう亡くなられましたけど。平田学長
の娘です。学長が五〇過ぎてからの子で恥
ずかしいからって、それに学長の娘やから
て特別扱いされるの嫌やからって、母親の
旧姓を名乗ってるそうです」
丈二「……どこかで聞いた様な話やな」
美幸「彼女、言葉が話せないんですよ。それ
で学長が彼女を庇ったみたいですね。結局
学長の娘である事がばれて」
丈二「そう……」
美幸「……男の人って、そういう人、特に可
愛く見えるみたい」
丈二「……」
美幸「平田学長って、面倒見良くって、凄く
人気があったらしいんですよ。特にあの、
高木助教授と松中助教授の二人は世話にな
ったそうです。……あの夢講演大会のアイ
デア、あれ、平田学長です」
丈二「へー」
美幸「言葉が話せないから、学長も娘の事が
心配で。あの二人に夢講演大会でグランプ
リを取った方に娘をやるって約束して……
亡くなられたんだそうです」
丈二「彼女は、どっちが好きなんやろ?」
美幸「今、松中助教授と同じ研究室に居ます
からねー」
丈二「……」
美幸「でも……たぶん、好きなんは高木助教
授の方」
丈二「……」
○ 同・研究室
丈二と美幸が入って来る。
高木は既に戻って来ている。
美幸「(高木に気付いて)あっ!」
高木の驚いた顔。
× × ×
机を叩く手。響く大きな音。
丈二の声「嘘じゃない!!」
高木「!?」
美幸「……」
丈二「あんたは遺伝子操作の話をして夢講演
大会で優勝するんや!それがきっかけでミ
ス阪神大と結婚する!その後遺伝子分野の
権威となって、二一世紀ではここの学長に
なってるんや!」
高木「けど……遺伝子のことなんか何も知ら
んし……星君まで参戦して来たんじゃ」
丈二「!!」
高木「?」
丈二「今から俺が教える。あんたがまだ教授
やった時、俺に教えてくれた事……ほんま
は、恩返しや」
高木、とっさに逃げようとする。それ
を真弓が「待て!」と叫んで捕まえる。
丈二、ロープで高木を縛る。
身動きできない状態の高木。
高木「二一世紀ではこんな恩返しするんか」
丈二「学校では『鶴の恩返し』も、鶴がお爺
さんとお婆さんを縄で縛るて教えてるよ。
ほんでお金盗んで、『それは鶴やなくてサ
ギやった』って」
美幸「(くすっと笑う)」
丈二、高木の口をタオルで縛る。
美幸「こんなん、人に見られたらまずいな」
丈二「どこか隠れられる所ないか」
美幸「……ないですね」
壁に貼られたポスターが丈二の目に入
る。前田美波里の資生堂CMポスター。
丈二、その壁に近付き、叩く。軽い音。
丈二「そう言えば、実はこの大学を作った人
は、彼のお父さんやったんやな」
高木「(頷く)……」
美幸「ええ?創立者ですか?」
丈二「大工やな」
高木「(頷く)……」
美幸「大工……(くすっと笑う)」
鉄庫の方へ歩いて行き、開ける。
美幸「?」
丈二「やっぱり……こういうもんの置き場所
は昔から変われへんねんな」
鉄庫の中の工具類。丈二、その中から
ドリルを手にして壁の所に戻る。
丈二「設計、工事のミスで余分なスペースが
できてしもうて、わざと壁を作って誤魔化
した所があるんや。そうやな?」
高木「(頷く)……」
丈二、壁にドリルの先を当てる。
その横、前田美波里のポスター。
ドリルで壁に穴を開ける音が響く。
丈二、ドリルを鉄庫にしまう。
ポスターの横にあいた穴。
中を懐中電灯で照らし、美幸に見せる。
そこはガランドウになっている。
美幸「嘘!?」
丈二「……俺か、ここに穴あけたアホて」
高木「?」
丈二と美幸、抵抗する高木を抑え、ペ
ンとレポート用紙、懐中電灯を持って、
その穴の中へ担ぎ込む。丈二、一度穴
から出て、前田美波里のポスターを穴
の所に移す。その下をくぐって中に入
ると、ポスターが穴を隠す。
ポスター前田美波里の挑戦的な眼差し。
丈二の声「よし!まずは遺伝子工学の基礎概
要から話すから、よう聞いとけよ」
ドアの開く音がする。
美幸の声「(小声で)シーッ!誰か来た」
ポスターの向こう、穴の中が静まる。
人の歩く足音が響く。何やら書類を触
る音がする。暫くして、再び人の歩く
足音が響く。ドアの締まる音がする。
足音が遠のいて行く。
美幸「(小声で)OK!どうぞ」
○ 同・キャンパス(夕)
夕日が美しい。
○ 同・研究室(夕)
前田美波里のポスター。
高木の声「出ない!絶対に出ない!!」
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