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ぼくとともに若返って!

内容紹介
『ぼくとともに若返って!』【シナリオ形式】1/4

「若返りの遺伝子」を操作した!?
 若返り過ぎて前世にまで戻った!?

『カレとカノジョはワタシの事情』【ノベル形式】,『グロー・ヤング・ウィズ・ミー』【シナリオ形式】。その前はこんな話だった。


ぼくとともに若返って!_page-0001

○ 暗い部屋
   男と女の喘ぎ声が聞こえる。
   佐藤丈二(三五)と岡田真弓(一八)
   が肌を露わに、重なり合っている。
   丈二は長髪で眼鏡をかけていて、右手
   首に手術の跡がある。
   真弓の声がますます甲高くなっていく。
丈二「ま……真弓!」
真弓「ううん。翔子!翔子て呼んで!」
丈二「何?」
真弓「隠してたけど……私、ほんまの名前は
翔子。高木翔子……高木学長の娘やねん」
丈二「た、高木学長の娘!?」
   「うっ」と、胸をおさえ、真弓の上に
   倒れ込む。息が荒くなる。
真弓「丈二?また?大丈夫!?」
丈二「……(息が荒い)」
真弓「大丈夫?……五〇過ぎてからの子で恥
 ずかしくて……それに、学長の娘やからて
 特別扱いされるの嫌やし。それで偽名を」
丈二「(息が荒い)学生と助教授、言うだけ
 でも充分刺激的やのに……心臓止まるかと
思うたわ……」
真弓「腹上死やなんて嫌やで」
丈二「(少しづつ息が整っていく)まだそん
 な年ちゃうわい」
真弓「腹上死て一番多いん、三〇代男性のド
 キドキもんのセックスの時らしいで」
丈二「誰やねん。ドキドキさすんは」
真弓「……女て……名前て大事やねん」
丈二「うちのオカンもここの教授の娘やった
 んや。佐藤健て、結構有名やったらしい」
真弓「!?」

○ 阪神大学・外観

○ 同・キャンパス

○ 同・廊下
   部屋から真弓が出て来る。その後ろを
   白衣を着ながら丈二が出て来る。
真弓「いっつもオカンオカンて、お母さんの
 話ばっかりや!ほんま、高血圧のオッサン
 か甘えん坊のガキか分かれへんわ!」
丈二「おい、外でお前……」
真弓「アレの先、まだ天然のコンドームつけ
 てるくせに!」
丈二「人が見てるやんけ……」
真弓「真弓。ウチのオカン、先見性が凄いね
 ん。たまごっちやろ、スウォッチやろ、G
 ショックやろ、ルービックキューブやろ」
丈二「真弓」
真弓「売れ始めの頃に偽モン作らして売って、
 一気に儲けて、さっと手ぇ引くねん。他に
 人気キャラクター商品な。マジンガーZや
 ろ、モンチッチやろ、ガンダムやろ、アラ
 レちゃんやろ、セーラームーンやろ」
丈二「真弓!」
真弓「もう聞き飽きたわ!」
   さっさと去って行く。
丈二「真弓!……いや岡田君、待ち給え!」
   高木哲悟朗(七〇)が近付いて来る。
高木「佐藤君」
丈二「(気付いて)!?お、お父さん!」
高木「お父さん?」
丈二「あ……いえ、高木学長」
高木「そう言えば君、お父さん居てへんだな。
 まだ恋しいか」
丈二「いえ。父は生まれた時からもう居ませ
 んでしたから」
高木「そう。夢講演大会、頑張ってな」
丈二「あ、はい」
高木「阪神大の伝統やからね。若い、将来を
 担う助教授が科学の夢を語り合う。ある種
 ハッタリの様な、大嘘の様な、漫画の様な、
 夢とロマンを発表し合うんや」
丈二「ええ」
高木「私も……これで優勝した一人でね」
丈二「聞きましたよ。何度も」
高木「遺伝子操作の話をしたんや。何とあの
 六〇年代に、いち早く。衝撃的やったみた
 いやね、自分で言うのも何やけど」
丈二「はあ……」
高木「それまではうだつのあがらん男やった
 んやけどな、あれを機に今では、本当にね。
 遺伝子の事に関して私は……そうやろ?」
丈二「はい。それはもう大変な権威です。一
 緒に研究させていただいて……尊敬してい
 ます。今も研究を続けられていて、何か大
 発見されるのではないかと」
高木「ありがとう。転機やったんやな……あ
 れで優勝できたからミス阪神大と結婚でき
 て、多くの子供をもうけて……」
丈二「……」
高木「?どうした?」
丈二「いえ……」

○ 同・講堂・外観(夜)

○ 同・講堂・正面入口(夜)
   『夢講演大会』の立て看板が出ている。
   丈二が中に入ろうとする。
男の声「どうや、ウチの星野に勝つ自信は」
   その男は松中太郎(七〇)。禿げ頭が
   がやけに目立つ。
丈二「松中名誉教授」
松中「夢講演大会は阪神大若手教授陣のいわ
 ば登龍門やからな……親分はどうした、お
 前の。高木学長は」
丈二「……まだ何か研究で遅れるとかって」
松中「ハン!もうそんな年とちゃうやろ!高
 木に言うとけ!科学者とは将来を生み出す
 もんや、て!自分の偉大さを決めるんは自
 分自身の功績やのうて、いかに優秀な人材
 を生み出したかや、てな!」
丈二「!?」
松中「今夜お前が勝つか星野が勝つか。それ
 が俺とあいつのほんまの勝負や(笑い)」
   中に入って行く。
丈二「クソハゲが……また中国行って来い」

○ 同・研究室(夜)
   パソコン等でごちゃごちゃした部屋。
   隅には「工具類」と書いた鉄庫がある。
   壁に深田恭子のポスターを貼っている。
   高木がパソコンのキーボードを叩いて
   いる。画面を凝視しする高木の顔。
高木「……(ニヤリ)よし」

○ 月(夜)

○ 阪神大学・講堂・内(夜)
   壇上には教授達が並んでいる。正面演
   台に表彰状を手にした松中が、左隅に
   司会が立っている。
司会「さて、最後に……なんと五年ぶりです。
 グランプリを発表致します!」
   場内が静まり返る。丈二の緊張した顔。
司会「星野伸一助教授!!」
   場内に大きな拍手が沸き上がる。
   丈二のショックな顔。
松中の声「君は将来、阪神大のスターになる
 人材だ。何よりその若さに期待している。
 これからも頑張って下さい。おめでとう」
   ガッカリしている丈二。その姿を出口
   側で見ている真弓。
丈二「(真弓に気付いて)真弓……」
   真弓、無視して退場して行く。若い男
   子学生と手をつないで。
丈二「!?真弓!」
   追うが、姿を消してしまう。
丈二「……」

○ 同・廊下(朝)
   丈二が気怠そうに歩いている。
   その前を真弓が歩いている。
丈二「(真弓に気付いて)……翔子」
真弓「?(振り向き、小声で)翔子て呼ばん
 といて。秘密やねんから」
丈二「……昨日の……あの男は何や」
真弓「彼氏」
丈二「彼氏!?」
真弓「もう終わりにしよ」
丈二「何!?どう言うこっちゃ、おい!!」
真弓「興奮せん方がええで、血圧高いねんか
 ら。助教授と学生やなんてやめた方がええ
 わ。若い同年代と健全な交際すんねん」
丈二「健全な交際?」
真弓「そうや。メッチャ健全や。血圧高いと
 か、腹上死しそうになたりせえへんかった
 し。私の彼氏になるには若さが必要やねん。
 こんなん要らんねん(丈二の腹を掴む)」
丈二「!」
真弓「私もうただの学生やから!ほなオカン
 に宜しく!!(走り去って行く)」
丈二「おい!……諦めへんからな、絶対!」
   走り去る真弓の後ろ姿。丈二の顔。

○ 同・研究室(朝)
   佇んでいる丈二。高木が入って来る。
高木「情けない顔して。負けたからって……
 若さが全てじゃない」
丈二「?」
高木「君には今まで蓄えてきたものもある」
丈二「……(自分の腹を見つめ、撫でる)」
高木「元気出せ!……負けて、その上さらに、
 悪い女にでもひっかかったか?(笑い)」
丈二「……」
高木「なんぼ可愛いくても、気が強くて男好
 きて、最悪やで。なぁ」
丈二「……」
高木「そんな女……産んだ親は死刑や」
丈二「……」
高木「……先に教授になったれ!実績で勝っ
 たらええ!科学者に大切なんは常に瑞々し
 い探求心や。……青春とは人生のある期間
 を言うのではなく心の様相を言うのだ」
丈二「(頼りなく)そうですね。でも最近よ
 く、期間……延長できたらええなあ、と」
高木「期間延長?もし、若返って……それが
 できるとしたら、どうする?」
丈二「若返りですか?(笑い)代わりにこれ
 を差し上げます(自分の腹を掴む)」
高木「(笑い)実は大発見してな。……若返
 りの遺伝子を発見したんや」
丈二「若返りの遺伝子?」

○ 同・キャンパス
   掲示板の前に人だかりができている。
   張り出された人事発令「教授任命・星
   野伸一」の文字。
学生A「確かまだ三一だったよな」
学生B「スター誕生か。……大学の戦略だよ。
少子化で学生が減っていくから」
   遠くから眺めている丈二。
   丈二、目を反対の方に向ける。
   真弓と若い男子学生がお喋りしている。
丈二「……」

○ 同・研究室(夜)
   丈二がパソコンのキーボードを叩いて
   いる。高木が入って来る。
高木「えらく気合いが入ってるみたいやな」
丈二「……と言うより、あせり、ですかね」
高木「……」
丈二「このまま何も出来ずに、ただ年を取っ
 ていくのかなって。思った事ないですか」
高木「私も学者や……あるに決まっている」
丈二「……」
高木「齢七〇。遺伝子操作に関して一応の地
 位を得たが、それでもまだ何かできないか、
 まだ何かできないかって探し求めてるよ」
丈二「そして……若返りの遺伝子を見付けた、
 っていう事ですか」
高木「やってみる気になったか!?」
丈二「いいえ。そんな、とても恐ろしくて」
高木「よく言われる様に遺伝子は生命の設計
 図や。その人の特質は遺伝子にどの様な情
 報が書き込まれているかで決まる。その情
 報を操作して書き換えるという事は、その
 人の特質を変える事になる。その事は、や
 がてその人の運命も変える事になるやろ」
丈二「……」
高木「若返りの遺伝子を操作すれば驚くほど
 若返るよ。君、随分若い女性とつき合って
 るらしいやないか。どうや?」
丈二「……」

○ 同・廊下
   丈二が歩いて来て、人事部に入る。間。
丈二の声「何やて!?冗談じゃない!!」

○ 同・人事部
   丈二、人事部職員に食い下がっている。
人事部職員「高田酒造はバイオテクノロジー
 では先進企業やし、先方から頼まれて来た
 んですよ。優秀な人を派遣して欲しいて」
丈二「(激怒)やかましいわい!冗談やある
 か!派遣て、行ったきり帰ってけえへんや
 んけ!俺を切る、言うんかい!」
人事部職員「そ、そんな興奮せんと……ただ、
 どうかな、と思うたもんやから……」
丈二「(激怒)優秀な人?この大学は優秀な
 人間、外に出すんかい!それ俺か!他はカ
 スか?俺か?俺は優秀か?ほんまに優秀や
 思うんやったら何で行け言うんじゃい!」
人事部職員「だから、その……大学は科学の
 発展を……経営の面も、その……」
丈二「経営だぁ!?」
人事部職員「だから、その……あのあの、星
 野君の事もその……で、どうかなぁ、と」
丈二「星野!?」
 人事部職員「え、いえ、その……」
丈二「星野を大学のスターに育てたら、俺は
 もう要なしか!……う!(胸をおさえてし
 ゃがみ込む)」
人事部職員「いえ……私まだこの職場最近で
 ……?大丈夫ですか!?おい!誰か!!」
丈二「(苦しい。息が荒い)……」


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