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グロー・ヤング・ウィズ・ミー

内容紹介
『グロー・ヤング・ウィズ・ミー』【シナリオ形式】2/4

「若返りの遺伝子」を操作した!?
 若返り過ぎて前世にまで戻った!?

『カレとカノジョはワタシの事情』【ノベル形式】。その前はこんな話だった。

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○ 東京究美会総合病院・屋上
   吉美と亜弥が外を眺めている。
吉美「本当に前世に戻ったんだ……若返りの
 遺伝子操作して、若返って若返って……本
 当に前世に戻ったんだ……」
亜弥「……あの……それ、何?」
   リカちゃん人形。亜弥が指す。
吉美「リカちゃん。ポケットに聖徳太子が入
 ってたから……買っちゃった」
亜弥「……」
吉美「これから私……どうなるのかしら」
亜弥「……また若返るのよ」
吉美「!?」
亜弥「また若返って若返って……」
吉美「……」
亜弥「また前世に戻ってしまうのよ」
吉美「(泣き崩れる)」
亜弥「でも泣いてる場合じゃないのよ」
吉美「でも……でも……」
亜弥「あんた、男でしょ」
吉美「男!?……よくそんな残酷な事……」
亜弥「仕方ないでしょ。男らしくしなさい」
吉美「男らしくて……どうしたらいいの?」
亜弥「あの女と一発やるのよ」
   亜弥の指した先……看護婦・佐藤直子。
吉美「どういう事?」
亜弥「どこかで見た顔じゃない?」
吉美「?」
亜弥「佐藤直子。後に佐藤吉美と浩美の双子
 の母になる女よ」
吉美「お母さん?」
亜弥「そう。そして、あんたの名前は?」
吉美「……佐藤吉美」
亜弥「男・佐藤吉美。……二人の父親の」
吉美「!?」
亜弥「そう。前世のあんたは現世のあんたの
 父親だったのよ」
吉美「えぇっ!?」
亜弥「だから、あんたがあの女とエッチしな
 いと、現世にあんたも浩美も生まれて来な
 い事になるのよ」
吉美「一寸……これ以上悩ませないで」
亜弥「悩んでる暇もないのよ。今夜にもまた
 若返って、前世に戻るか分からないのに」
吉美「今夜にも!?」
亜弥「そう。いつ、また戻るか……」
吉美「私……別にあの現世に……また生まれ
 て来たいって思わない」
亜弥「……浩美も生まれて来なくなるのよ」
吉美「!?」
亜弥「それでもいいの?あんた、男でしょ」
吉美「……」

○ 矢野デザイン・雑居ビル前
   浩美が紙袋を持って出て来る。
   背後に野口がいる。
野口「今どき羽振りのいい会社だろ」
浩美「(気づいて)?」
野口「インテリジェントビルに移転だって」
浩美「?(ボソッと)嘘?リストラって……」
野口「お姉さん……何で、若返りなんか、し
 ようとしたんだろうな」
浩美「……」
野口「遺伝子操作までして」
浩美「……あんたが、若い女と浮気したから
 じゃないの?」
野口「お、おお?俺が?」
浩美「図星かよ。(吉美のケータイを取り出
 し、チェックして)通話履歴、あんたとあ
 の矢野社長ばっか。女は誠実なのに」
野口「誠実?誠実なら警察に言うべきだろ!?
 いくら相手が恋人だって!」
浩美「……」
野口「お姉さんだろ!?消えたんだぞ!?」
浩美「私、お姉ちゃんとの事、捨てたのよ!」
野口「!?……捨てた?」
浩美「あんただって捨てられたんでしょ!?だ
 ったらもう関係ないじゃない!!」
   浩美、走り去って行く。
野口「……」

○ 『究極美・タトゥー・アート展』会場
   タトゥーの写真が展示され、多くの人
   で賑わい、華やかに開催されている。
   浩美が来客と楽しそうに歓談している。
浩美「トリックアート風タトゥーの次はね、
 絶対ホログラム!立体的に見える三次元タ
 トゥーよ!インクも独自開発するの!」
   後ろから野口が割り込んで来る。
野口「(ふざけて)わお!お腹にドラえもん
 のポケットも彫ってよ!四次元タトゥー!」
浩美「……あんたにはここは異次元の世界?」
野口「人造人間がアートかい?光明寺博士」
浩美「まさに究極美じゃない?」
野口「遺伝子操作ほどじゃねぇよ」
   自分のタトゥーを見せて喜ぶ人達。
野口の声「なんでそこまでやりたがるのか」
浩美「そこに救いがあるからだよ」
野口「救い?」
浩美「やっと、それで生きていける……自分
 らしく……生きてる、って感じがする……」
   吉美のケータイの着信音が鳴る。
浩美「?(出て)はい……あの……えっ!?」

○ 東京究美会総合病院・看護婦詰所
   亜弥がこっそりと現れる。
   医師(二九)が看護婦の肩を抱いてい
   る。その医師はなかなかのイケメン。
医師「今度コンサート、一緒に行かない?」
   亜弥、置いていた白衣を盗み、逃げる。

○ 道
   野口が浩美を車に乗せ、走っている。

○ 東京究美会総合病院・中庭
   リカちゃん人形を握り締めた吉美。
   背後に白衣を手にした亜弥。
   視線の先……弁当を食べている直子。
亜弥「ほれ(と、白衣を吉美に渡す)」
吉美「何だよこれ?どうしたんだ?」
亜弥「いいから。医者の方がもてるし」
   吉美、その白衣を着る。
   と、亜弥に押され、直子に近づく。
吉美「あ、あのぉ……今、お昼ですか?」

○ 障害者施設
   野口と浩美の車が入って来る。

○ 東京究美会総合病院・中庭
吉美「ぼ、僕、佐藤吉美です……今日から、
 ここで働く事になりまして……よろしく」
直子「よろしくお願いします。えと……すみ
 ません。どちらの先生ですか?」
吉美「ああ……外科です。外科の佐藤です」
亜弥「(吉美に小声で)何で外科なのよ」
吉美「(亜弥に小声で)だって……」
亜弥「(吉美に小声で)もし手術なんかさせ
 られたらどうすんの?誤魔化しやすいのに
 しなさい……心療内科とか、口先だけの」
吉美「ああ……心療内科です。心療内科」
直子「心療内科?昨日も新しい先生が来られ
 たわね。その先生も佐藤……吉美先生」
吉美「えぇっ!?」

○ 障害者施設・一室
   佐藤直子(六〇)がベッドで寝ている。
   廊下から浩美と野口が見守っている。
浩美「お母さん……」
野口「……なぜ……」
浩美「今日、退院の予定だったって。お姉ち
 ゃん……自分で面倒見る気だったんだ」

○ 東京究美会総合病院・中庭
直子「私も佐藤なんです。佐藤直子。佐藤っ
 て名前、多いでしょ。総理大臣も佐藤だし」
吉美「そ、そうですね……うちの家族なんか、
 佐藤が三人もいますよ」
直子「(笑い)うちも」

○ 障害者施設・廊下
   浩美と野口が歩いている。
野口「お母さん、交通事故で亡くなられたな
 んて……吉美、何であんな嘘なんか……」
浩美「……」
野口「お父さんの蒸発の事は?それは本当?
 お母さん、看護婦してらして……お父さん、
 その病院の医者だったって」
浩美「……うん。お父さんは心療内科の医者
 で……イケメンだったって言ってたけど、
 怪しいもんだわ」
野口「男前で、心の専門家か」
浩美「自分でロマンチストだなんて言って、
 お父さんにチョコフレークで釣られたって
 いうんだから。笑っちゃうわよね」
野口「チョコフレークって、お菓子の?」

○ 東京究美会総合病院・中庭
   佐藤吉美(あのイケメン医師)が来る。
佐藤「直子さーん(近づいて)おやつにどう
 ですか(と、チョコフレークを差し出す)」
直子「あ!私、これ大好き」
佐藤「水曜日、休みでしたよね。タイガース
 の切符が入って……一緒にどうですか?」
直子「あ……ごめんなさい。私、野球って、
 よくルール分かんなくて」
佐藤「そっちじゃなくて、音楽ですよ。GS」
亜弥「やめた方がいいよ。こんな人」
佐藤「何?」
   吉美、亜弥を抑える。
佐藤「(吉美に)あんた誰?」
亜弥「佐藤吉美先生だよ!」
直子「ほら、今日から心療内科に来られた」
佐藤「佐藤吉美?俺が佐藤吉美だよ」
吉美「えぇっ!?(怯んで)……」
佐藤「心療内科だって?心療内科に佐藤は俺
 一人だけだ。何?今日から?何者だお前?」
吉美「いえ、あの、その……」
直子「(吉美の持っているリカちゃん人形に
 気付いて)あっ!?これ、リカちゃん!?」
吉美「?」
直子「リカちゃんよね?お願い。後で買って
 返すから、譲って頂けないかしら。ね、お
 願い!お願い!一生のお願い!」
吉美「はぁ?はい……(と、渡す)」
直子「ありがとう!後でお礼します!……不
 二美ちゃん、喜ぶわ。ありがとう!」
   直子、走り去って行く。
吉美「不二美ちゃんって?」
佐藤「難病の子。ずっと入院してるらしい。
 彼女、良い子だな……あ?おい!」
吉美「!?」
   吉美、亜弥を連れて逃げる。

○ 障害者施設・ロビー
浩美「お母さん、早くに両親を亡くして……
 早くから働いて、妹の面倒を見て……その
 せいか、何もかも自分が何とかしなきゃー
 って、突っ張って生きて来て……自分でも
 可愛い気のない女だと思ってたって」
野口「吉美には厳しかったって……」
浩美「そう。……双子でも、お姉ちゃんには
 厳しかった。姉は姉らしく……自分と同じ
 様に育てようとしたのか」

○ 東京究美会総合病院・廊下
   直子。彼女に近づこうとする吉美。
浩美の声「それまで、そんなお母さんの事、
 理解してくれる人が居なかった」
   佐藤が現れ、直子に話し掛ける。
浩美の声「ところが、お父さんは、まるでお
 母さんの心を見透かしているかの様で……」
   吉美は慌てて身を隠す。
野口の声「頼もしいお父さんだったんだ」
   その様子を頼りなさげに見ている亜弥。

○ 同・屋上
   吉美と亜弥が佇んでいる。
吉美「僕……本当に私の父親なのかな……」
亜弥「?」
吉美「もう一人の佐藤吉美が父親だったんじ
 ゃないかな?」
亜弥「何だか私もそんな気がして来た」
吉美「……」
亜弥「あんた、どう見てもイケてないし」
吉美「……確か、あのお菓子で釣られたって」
亜弥「……どっちでもいいよ」
吉美「どっちでもって……」
亜弥「でも、もし、どちらの佐藤吉美も直子
 さんとエッチしなかったら、吉美も浩美も
 生まれて来なくなるんだよ」
吉美「そりゃそうだけど……」
亜弥「逆に両方とエッチする分には、問題は
 ない。ま、気にしないでやっておいでよ」
吉美「あのね……」
亜弥「要は吉美も浩美も生まれて来れたらい
 いのよ」

○ 東京究美会総合病院・廊下
   亜弥、ふと見ると、佐藤が病院事務の
   制服を着た女性の肩を抱いている。
亜弥「……」

○ 公園
   子供達が賑やかに遊んでいる。
   浩美と野口がベンチに座っている。
野口「じゃあ、お母さん、あなたが面倒見る
 の?あの所長と結婚して?」
浩美「ううん。彼、まだ……」
野口「?」
浩美「奥さんが居るから」
野口「はぁ?」
浩美「……だから、まだ」
野口「おい、おい、おい」
浩美「……」
野口「吉美の事……真相、究明しないか」
浩美「……ダメ、出来ない」
野口「どうして!?男か?お母さんの為にもそ
 うするべきだよ!」
浩美「それに……仕事」

○ 東京究美会総合病院・屋上
   元気のない吉美に喝を入れる亜弥。
亜弥「しっかりしてよ!私……やっぱりヤだ。
 あんな奴、私のお祖父ちゃんだなんて!頑
 張ってあんたがお祖父ちゃんになってよ!」
吉美「お祖父ちゃん?私が?酷い!(泣く)」



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