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グロー・ヤング・ウィズ・ミー

内容紹介
『グロー・ヤング・ウィズ・ミー』【シナリオ形式】4/4

「若返りの遺伝子」を操作した!?
 若返り過ぎて前世にまで戻った!?

『カレとカノジョはワタシの事情』【ノベル形式】。その前はこんな話だった。

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○ 佐藤家(朝)
   直子(二五)が目覚め、起き上がる。
   直子のお腹が大きい。
   赤ん坊の泣き声。

○ 佐藤家(夜)
   バースデーケーキ。五本のロウソク。
   それを前に座る一卵性双生児の女の子、
   吉美&浩美(五)と直子(三〇)。
直子「吉美、浩美、おめでとう。プレゼント
 よ(と、二人に一つの包みを渡す)」
吉美・浩美「?(と、顔を見合す)」
   包みの中から一体のリカちゃん人形。
吉美「ひとつ?」
直子「(微笑んで)仲良く遊ぶのよ」

○ 佐藤家(昼)
   リカちゃん人形。それを吉美と浩美が
   取り合いしている。
吉美「浩美、昨日も遊んだじゃない!」
浩美「あぁーん!(泣いたフリ)」
   二人の後ろに仁王立ちする直子。
直子「ヨ、シ、ミ、お姉ちゃん」
吉美「……もう!(と、去って行く)」
浩美「へへへ(ニッコリ)」
   吉美、粘土を持って来る。そして、浩
   美の持つリカちゃん人形を見ながら、
   粘土でリカちゃんを作る。
浩美「(それを見て)あぁ!?」
   浩美も粘土を取って来る。
   二人が作る、二つの粘土のリカちゃん。
   浩美の方が上手い。
吉美「おぉ!凄い!浩美、上手!(拍手)」
浩美「へへへ(満面の笑顔を浮かべる)」

○ 高校・美術部室
   浩美(一八)が彫刻作品を作っている。
   吉美(一八)が走って来る。
吉美「やったーっ!浩美!おめでとう!」
浩美「え!?」
吉美「優勝!優勝したのよ浩美!今、連絡が
 あったって!おめでとう浩美!」
   二人、飛び上がって喜ぶ。

○ 高校生美術コンクール表彰会場
   嬉しそうな浩美。時計を見る。

○ 道
   走って来る吉美。直子(四三)が追う。
吉美「お母さん早く早く!」
   吉美、ふと、飛び出す。
   自動車が吉美に突っ込んで来る。
直子「(車に気付き)危ない!」
吉美「?」
   直子、吉美を突き飛ばす。
   道に倒れる吉美。衝撃音が響く。
吉美「(悲鳴)!!」

○ 佐藤家
   トロフィーを手に、浩美が泣いている。
   吉美が触れようとすると、振り払う。
吉美「……」

○ 矢野デザイン
   履歴書……吉美が矢野(三八)に渡す。
吉美「頑張ります!よろしくお願いします!」

○ 佐藤家
   吉美が帰って来る。
   ポツリと置かれたリカちゃん人形。
   横に置き手紙……「ごめんなさい 私
   は私の人生をいきます 浩美」とある。
吉美「浩美!」

○ ボロアパートの一室
   浩美、部屋を見回し、ガッツポーズ!

○ 美大・アトリエ
   浩美が彫刻作品を作っている。
   周りで他の学生が作る秀作の数々。
   浩美、焦り、失敗。
浩美「あ……あちゃー(作業を中止する)」

○ 障害者施設・一室
   直子のベッドに、吉美が来る。
直子「(気づいて)吉美?」
吉美「また来ちゃった。どう?元気?」
直子「うん。浩美は?浩美はどうしてるの?」
吉美「頑張ってるんじゃない?いいじゃない。
 ♪愛 あなたと二人……でしょ?(微笑)」

○ ボロアパートの一室
   浩美(三二)が寝転がっている。
   部屋の傍らに電気等公共料金の督促状。
   混ざって多数のコンクールの落選通知。
   加えて吉美からの多数の手紙。未開封。

○ 書店
   浩美が求人誌を見ている。
   求人広告……「彫る仕事! そのプロ
   になって下さい!」とある。

○ タトゥー・スタジオ『彫りプロ』
浩美の声「失礼します」
   浩美が封書を持って入って来る。
   加藤がその正面に居る。

○ 吉美のマンション(夜)
   吉美(三五)が鏡を見ている。
   シワ、肌の衰えが目立つ。

○ 高級ホテル・外観(夜)

○ 同・ある一室(夜)
   浩美(三五)がベッドに入っている。
浩美「ねぇ、いつになったら、奥さんと別れ
 てくれるのよ?」
   横に居る男……加藤。
加藤「お袋、あいつ、気に入ってんだよ」
浩美「お袋、お袋って、もう」
加藤「しようがねえだろ。あの研究所もタト
 ゥー・スタジオも元はお袋の物なんだし」
浩美「じゃ……お父様を味方につけちゃおう
 かな。お父様、私の事、好きだもん。昔好
 きだった人に似てるんだって」
加藤「親父は入り婿だって言ってんだろ」
浩美「入り婿でも実際に動かしてたのはお父
 様なんでしょ?ね、久しぶりに会わせて」
加藤「どうかなぁ……あの、さぁ、タトゥー
 だけど……何か良いアイデア、ないかなぁ
 ……もし成功させたら、会わせてやるよ」
浩美「本当!?よーし!頑張るぅ!」

○ 同・別の一室(夜)
   吉美がベッドに入っている。
吉美「ねぇ、いつになったら、奥さんと別れ
 てくれるのよ?」
   横に居る男……矢野。
矢野「お袋、あいつ、気に入ってんだよ」
吉美「お母さん、亡くなられたじゃない……
 もう少し上手い言い訳しなさいよ」
矢野「……お袋、会社の権利、半分あいつに
 相続させたんだよ」
吉美「だからって何?もう私だって……」
矢野「(吉美をチラッと見て)……」
吉美「何?」
矢野「お前、若いのとつき合ってんだろ?」
吉美「……あなたが、はっきり……」
矢野「寝たのか?」
吉美「私、年下はあまり……」
矢野「お前のお母さんは?」
吉美「え?」
矢野「もれなくついて来るんだろ?お前に。
 もし、結婚する、って事になったら……そ
 の若いのだって……どうする事か」
吉美「!」
   吉美、ベッドを飛び出す。

○ 同・ロビー(朝)
   矢野がスポーツ新聞を見ている。
   加藤が来て、煙草を吸う。
加藤「(矢野の新聞をチラッと見て)……」
矢野「?(加藤の様子に気づき)どうぞ」
加藤「あ?いいですか?すみません(新聞を
 受け取って)また負けてるよ。やっぱり昔
 の凄いのばかり集めてもねぇ」
矢野「おたくもファンですか。敵さん、遂に
 マジック出ましたよ」
加藤「やっぱり若返りが必要なんじゃない?」
矢野「若返り、ですか……」
加藤「若いの、いるんでしょ?他に色々と」
矢野「(ニヤリと)ええ、まぁ」
加藤「昔うちの親父、病院経営してて、看護
 婦なんか、とっかえひっかえ」
矢野「とっかえひっかえ?」
加藤「もう、年取ったのは切っちゃえ切っち
 ゃえ。リストラリストラ」
矢野「リストラ……若返り、か……」
   矢野、ホテルを出て行く。
   浩美が来る。
加藤「マジック出ましたよ、だって」
浩美「マジック?」
加藤「そう、こいつ!(新聞を叩いて)こい
 つが嫌いなんだよ。変なトリックばっかり
 使いやがって」
浩美「トリック!?そうよ!それよ!!」
加藤「あぁ?」
浩美「(満面の笑顔で)あぁ……刺青の神様
 が降りて来たわ」

○ 野口の家・玄関前
   野口に連れられて吉美が来る。
野口「実は俺自身びっくりで。突然、両親、
 紹介して欲しいなんて言うから」
吉美「(微笑)」
   ドアが開き、両親が迎えてくれる。
両親「(笑顔で)いらっしゃい」
   両親は年を取って見える。七〇歳位か。
吉美「……」

○ 書店(夜)
   家庭関係の本が並んでいる。
   吉美の手。結婚関係の本の方に伸びる。
   が、介護関係の本の方にその手が動く。
   「老老介護」の記事が特集された雑誌。
   吉美、その雑誌を手にする。
吉美「老老……介護。……老老」

○ レストラン(夜)
   浩美、加藤と……加藤吉美(六五)。
   旧姓、佐藤。昭和四二年、東京究美会
   総合病院の「もう一人の佐藤吉美」。
加藤吉美「嬉しいね。浩美さんと食事なんて」
浩美「(笑顔で)私もですわ、お父様」

○ パソコン画面(夜)
   スイッチがオンになる。
   吉美が操作している。そこは自宅。
   画面にはインターネット検索エンジン
   が表示される。
   検索覧に「結婚」と入力される。が、
   消され、「老老介護」と入力される。
   メールの着信メッセージが表示される。
吉美「うん?(そのメールを開く)」
   そのメールには「若返りの遺伝子を発
   見! 遺伝子操作治験ボランティア募
   集! 高額報酬!」と書かれている。
吉美「若返り……」

○ 究極美術研究所・研究室
   吉美が若返り、姿を消してしまう。

○ 東京究美会総合病院・屋上
   男・吉美と亜弥が口論している。

○ 公園
   浩美と野口が口論している。

○ 東京究美会総合病院・手術室(夜)
   吉美が若返り、姿を消してしまう。

○ 満月(夜)

○ 吉美のマンション(朝)
   女・吉美(三五)が目を覚ます。
吉美「(周りを見渡して)……」

○ ボロアパートの一室(朝)
   浩美(三五)が目を覚ます。
   傍らにある二つの古いリカちゃん人形。
浩美「(見つめて)……」

○ 究極美術研究所・廊下(朝)
   浩美と野口が警察やマスコミを引き連
   れて歩いている。

○ 吉美のマンションビルの外(朝)
   吉美が周りをキョロキョロ見ている。

○ 究極美術研究所の外(朝)
   加藤が警察に連行されて行く。
   周りをマスコミが取り囲んでいる。
   その後ろを浩美と野口が出て来る。
野口「いいのかい?あれで」
浩美「不二美ちゃんがそうしろって」
野口「不死身……チャン?」
浩美「私とお姉ちゃんは不二美ちゃんだから」
野口「はぁ!?何だそれ!?」
浩美「お姉ちゃんが本望なら私も本望。タト
 ゥーの事だって……スタジオとか形じゃな
 くて、技術とか、実力そのものなんだから。
 ……やっと見つけさせてくれたものって」
野口「(浩美の豪華なダイヤの指輪に気づい
 て)その指輪は?」
浩美「……いいじゃない。これぐらい」
野口「……また電話していい?」
浩美「お姉ちゃんの代わりは嫌」
野口「代わり?」
浩美「よく居たの。お姉ちゃんにふられたか
 らって……同じ遺伝子、持っちゃってるし
 ……私、まだ遺伝子操作ビフォーだし」
野口「人は遺伝子に惚れるんじゃないよ」
浩美「双子は似てるっていうけど、そんなの
 一部だけよ。私とお姉ちゃんは結構違うの」
野口「お姉ちゃんは不倫なんかしないしな」
浩美「……また会う事もあるんじゃない?ど
 こか……宇宙の片隅で」
   浩美、ひとり、歩き出す。

○ ある街
   吉美が歩いている。
   吉美が彷徨う街……高層ビルが建ち並
   ぶ現在の東京……そっくりだが、違う。
   地球でもない。それは……あるスペー
   ス・コロニーでの一風景。

○ 宇宙

○ 地球

○ 浩美の(元は吉美の)マンション
   エプロン姿の浩美(三六)がパソコン
   でホームページを作っている。
   そこではタトゥーに関する様々なアイ
   デア、企画、デザイン等を売っている。
浩美「よーし。完成!」
   ベッドで直子(六一)が寝ている。
   浩美、その横を通り、台所へ行く。
浩美「お母さん、ごめんね。お腹空いたね」
   赤ん坊の泣き声が響く。
直子「(微笑んで)浩美、俺が先だーって」
   浩美、戻って来て赤ん坊にミルクを飲
   ませる。が、飲まない。泣き止まない。
浩美「違う?違うてか?これか?」
   浩美、古いリカちゃん人形を持たせる。
   まだ泣き止まない。
浩美「しようがないな吉美君。男の子だぞ」
   二つの古いリカちゃん人形を持たせる。
   吉美、笑う。最高の笑顔。
             ― 終わり ―


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