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ぼくとともに若返って!

内容紹介
『ぼくとともに若返って!』【シナリオ形式】2/4

「若返りの遺伝子」を操作した!?
 若返り過ぎて前世にまで戻った!?

『カレとカノジョはワタシの事情』【ノベル形式】,『グロー・ヤング・ウィズ・ミー』【シナリオ形式】。その前はこんな話だった。


ぼくとともに若返って!_page-0001

○ 満月(夜)
   その下に見える学舎。

○ 阪神大学・研究室(夜)
   ソファーで丈二が資料を読んでいると
   ころ、高木が現れる。
丈二「資料を拝見して、安心しました」
高木「よく決心してくれた。若返りの遺伝子
 の発見は人類史の新しい一ページを開くや
 ろ。その先頭に君の名を刻む事になる」
   壁に貼られた深田恭子のポスター。そ
   こに、二人、近付いて行く。
高木「隠していたけど、実はこの大学を作っ
 た人は私の父でね」
丈二「創立者が、ですか?」
高木「大工や」
丈二「はあ……」
高木「実は設計、工事にミスがあって、一カ
 所余分なスペースができてな。それでわざ
 と壁を作って誤魔化した所が……(壁を叩
 いて)ここの壁が薄い。アホな奴が……」
丈二「?」
   高木がそのポスターを下側から剥がす
   と、鉄の扉が現れる。
高木「昔ここに穴あけたのを、私だけが知っ
 てて(鍵を開ける)秘密の研究室にした」
   鉄の扉を開けると、中から異様な光が
   二人の顔を照らす。
丈二「!?」
高木「さあ、行こうか(と、中に入る)」
   丈二、躊躇いながらも、中に入る。
   中から扉を閉めると、何もなかったか
   の様に、微笑んだ深田恭子のポスター
   が扉を覆い隠す。

○ 同・学舎(深夜)
   上方に不気味に輝く満月。

○ 同・研究室(朝)
   秘密研究室の鉄の扉が開いている。
   丈二の二〇歳位の青年に若返った顔が
   鏡に映っている。後方に映る高木。
丈二「凄い!」
高木「(誇らしげ)!」
丈二「(ガッツポーズ)よし!これなら……
 あの真弓かて、もう一度……」
高木「マユミ?」
丈二「学長。いえ、お父さん。実は……」
高木「ああ!?(驚く)」
   丈二、「?」と鏡を見る。一五歳位の
   少年の姿に戻る。
丈二「ええ!?ちょ、一寸、学長……」
高木「ああ!?……(慌てる)」
   丈二、一〇歳位の子供の姿に戻る。
丈二「一寸、やりすぎ?……お、お父さん」
高木「ま、まさか……(怯える)」
   丈二、五歳位の幼児の姿に戻る。
丈二「ね、お父さん……パ、パパ、パパ?」
高木「(悲鳴)うわーっ!!」
   丈二、赤ん坊の姿に戻り、泣き出す。
   高木、研究室を飛び出して行く。
   赤ん坊の泣き声が次第に小さくなって
   いく。と、同時に姿が消えていく。

○ 丈二の目
   バッと見開く。床に寝転がっている丈
   二。起き上がって辺りを見回す。そこ
   は阪神大学の研究室の様だが、備品等
   は古めかしい物ばかり。壁に若い前田
   美波里の資生堂CMポスターを貼って
   いる。丈二、鏡を見て自分の姿に驚く。
   髪が短く、スマート。しかし、年齢は
   やはり三五歳位に見える。
丈二「……眼鏡かけてないのに、よく見える。
 ……た、確か、若返りの遺伝子を操作して
 ……どんどんどんどん若返って行って、最
後は……赤ん坊にまで戻って……」
   腹の辺りをさする。スリムだ。
丈二「え!?」
   鏡に映った右手首。
丈二「手術した……跡がない」
   慌てて上半身裸になり、鏡に映して見
   る。いやに筋肉質である。
丈二「うそ!?」
   ズボンを降ろしてパンツの中を見る。
丈二「手術した……覚えがないのに……」
   ドアが開き、鈴木美幸(一八)が入っ
   て来る。
美幸「(丈二に気付いて叫ぶ)キャーッ!」
丈二「(驚いて叫ぶ)うわーっ!」
   慌てて服を着る。かなり動転している。
丈二「き、君、誰?」
美幸「鈴木……鈴木美幸です」
丈二「鈴木美幸?」
美幸「ここの学生です」
丈二「ここの学生?鈴木美幸?いてたっけ?
いつ?いつ入学?」
美幸「今年です。昭和四一年度入学生です」
丈二「昭和四一年?ああ、今年か……何!?」
美幸「!?」
丈二「何年やて!?」
美幸「え?……昭和四一年……?」
丈二「昭和四一年て!?」
   周りを見回す。古めかしいテレビ。ス
   イッチを入れる。白黒の画面が映る。
テレビ「(ウルトラマンの予告が映る)ウル
 トラマン!遙か彼方、宇宙からやって来た
 ヒーロー!新番組、お楽しみに!」
丈二「嘘ーっ!?」
美幸「?……どうしたんですか?」
丈二「昭和四一年?ほんまにほんまに?」
美幸「?」
丈二「タイムスリップ……したてか?」
美幸「タイムスリップ?」
丈二「いや!(鏡を見て頭を触る。顔、胸を
 触り、腹をさすって)違う!それだけと違
 う!(右手首を見る)やっぱり手術の跡が
 ない!(またズボンを降ろしてパンツの中
 を覗き込む)やっぱり違う!身体も……少
 しやけど違う!……違うーっ!!」
美幸「(丈二を見ていて叫ぶ)キャーッ!」
丈二「若返りの遺伝子を操作して……若返っ
 て、若返って、無茶苦茶若返って、若返り
 過ぎて赤ん坊にまで戻って……それから」
男Aの声「前世まで戻ってたりして」
   机の下から白衣の男Aが出て来る。ア
   フロヘアーに黒縁眼鏡をかけている。
男A「あったあった。(ちびった鉛筆を取り
 出して)キャップ付けとこ(付ける)」
丈二「何やと……(男Aの胸元を掴む)」
男A「じょ、冗談……冗談ですよ」
丈二「(手を離して)そ、そうかも……!!」
   「うっ」と胸をおさえ、しゃがみ込む。
美幸「!?どうしたんですか?大丈夫?」
丈二「(暫く苦しむ)……(立ち直って)あ
 あ。大丈夫……大丈夫です」
美幸「あの……あなたは、誰なんですか?一
 体、どちらから来られたんですか?」
丈二「佐藤丈二……遙か彼方、二一世紀から
 やって来た……ヒト」
美幸「?」

○ 阪神大学・外観(まだ新しい)

○ 同・キャンパス

○ 同・研究室
   丈二、テレビのチャンネルを変える。
テレビ「(ビートルズ来日報道)以上、ビー
 トルズのインタビューでした!武道館での
 コンサート、本当に楽しみです!」
丈二「ジョン・レノンはファンに殺された!
 ポール・マッカートニーは日本で刑務所に
 入れられた!」
美幸「!?」
   丈二、テレビのチャンネルを変える。
テレビ「(ベトナム戦争のニュース)ベトナ
 ム戦争は完全に泥沼化。アメリカは……」
丈二「アメリカは結局、ベトナム戦争で負け
 た!ソビエトは……ソビエトは崩壊した!
 ベルリンの壁も壊された!」
   テレビのチャンネルを変える。
テレビ「(マンガトリオが現れる)パンパカ
パーン!今週のハイライト!」
丈二「横山ノックは大阪府知事になる!良い
 仕事をしてんけど……辞めさせられた!」
   長髪の男Bが入って来る。
   丈二、テレビのチャンネルを変える。
テレビ「(プロ野球ニュース・タイガースの
 試合)さすがは牛若丸・吉田!華麗な守備
 で併殺!ピンチを脱出しました!」
丈二「タイガースは……タイガースは今から
 一九年も優勝できへんかった!」
男B「(丈二に)何やと!?」
丈二「?」
男B「コラッ!もう一度言うてみぃ!タイガ
 ース、一九年も優勝できへんやと!?」
丈二「?……お前、誰や?」
男B「やかましいわい!お前こそ……」
男A「(遮って)松中君」
男B「……そや、そんな事はどうでもええ。
 たまたま近く通ったから、一言だけ言いに
 来たんや。(男Aに)おい高木!今夜の夢
 講演大会楽しみにしてるで!ミス阪神大、
 今年こそ俺が頂くからな!」
男A「いや……松中君。僕は……」
男B「(遮って)今年こそ決着つけたる!そ
 れだけや!(部屋を出て行く)」
   丈二、目を丸くして見ている。男Aが
   高木哲悟朗(三五)、男Bが松中太郎
   (三五)なのだ。
丈二「高木……学長ですか?」
高木「学長?いえ私は高木哲悟朗……ただの
 助教授です。私はそんな器じゃあ……」
丈二「さっきのが松中名誉教授?あんなに髪
 の毛、あったんか?……」
高木「髪の毛?」
丈二「(高木に)……頼む……治してくれ」
高木「え!?」
丈二「治してくれーっ!(自分を指して)あ
 んたがこうしたんや!(興奮して)若返り
 過ぎて……遺伝子操作されて、俺は真弓が、
 あんたは学長で、大丈夫やと……結婚した
 いから……お父さん頼む!!」
高木「えっ?え?え?え?え?えーっ!?」
丈二「うーっ!!(イライラするぅ!!)」
     ×    ×    ×
   コップに入った水。丈二、一気に飲む。
   少し落ち着いた様子。
高木「そんなアホな」
丈二「アホなやない!……昭和四一年?そう
 や!佐藤健教授は?佐藤健教授に聞いたら
 俺の事を……まだ知らんか……」
高木「佐藤健教授?」
美幸「……暫く出張だそうですけど……」
丈二「もうええ!あんたは将来学長になる!
 夢講演大会で松中に勝って優勝してミス阪
 神大と結婚する!して貰わんと困るんや!
 そやないと真弓が生まれて来なくなる!」
高木「真弓って?」
丈二「あんたとミス阪神大が産んだ子や!」
高木「覚えないなぁ」
丈二「一八年前や……ちゃうわ。一寸待てよ。
 ええと……一七年後や!忘れたんか!?」
高木「えらい随分、先の事……そんな未来の
 事は覚えてませんよ」
美幸「あのぉ……それで高木助教授は夢講演
 大会でどんな話、しはったんですか?」
丈二「何度も言うたやんけ……(ガックリ)
 せやから遺伝子操作や」
美幸「そう言われても、あれじゃ……」
高木「だいたいその、遺伝子操作って何?」
丈二「七〇年代入らなあかんか……とにかく
 夢講演大会は何としても優勝して下さい」
高木「無理や……」
丈二「!?」
高木「この五年間、ずっとミス阪神大との結
 婚を賭けて頑張って来たけど……」
丈二「ほんまに優勝したんやで、あんたが」
高木「原稿も書いてない。それどころか、ま
 だテーマも考えてない」
美幸「今夜やのに」
丈二「急いだら間に合う!」
高木「(出口へ歩きながら)諦めたんや。悪
 く思わんといてくれ」
丈二「おい……」
高木「ごめん!(研究室を飛び出す)」
丈二「おい!……」
美幸「(丈二の背中を叩いて)ねえ……」
丈二「?」
美幸「本当なんですか?優勝……」
丈二「ああ。学長が優勝するんや」
美幸「ううん。タイガースが優勝できないっ
 て事。一九年も」
丈二「……」


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