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グロー・ヤング・ウィズ・ミー

内容紹介
『グロー・ヤング・ウィズ・ミー』【シナリオ形式】3/4

「若返りの遺伝子」を操作した!?
 若返り過ぎて前世にまで戻った!?

『カレとカノジョはワタシの事情』【ノベル形式】。その前はこんな話だった。

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○ 公園
野口「仕事?仕事って?刺青の彫師かい?」
浩美「!?」
野口「何であんな事が平気で出来るんだろう
 ね!親から貰った身体に傷つけてさ!俺は
 両親が年を取ってからの子でね、人工授精
 で生まれたんだってよぉ!」
浩美「……」
野口「この世に生を受けるなんて、奇跡的な
 事なんだよ!バカだよ!」

○ 東京究美会総合病院・屋上
亜弥「あぁーっ!うるせぇーっ!時間ねぇん
 だ!早くやっちまえよぉ!」
吉美「!?何!?何だその言い方は!」
亜弥「!?」
吉美「人の母親、やっちまえだと!?可哀相だ
 ろ!?……そうして出来た子は!」
亜弥「……」
吉美「そうして生まれて来たかねぇよ!また
 現世によ!生まれて来たかねぇよ!」
亜弥「……」
吉美「双子でさ……でも何分か先に出たから
 って、長女って事になってさ……お姉さん
 なんだから、しっかりしなきゃいけないし」
亜弥「……」
吉美「……双子ってだけで損だよ。セットで
 扱われて。プレゼントも二人で一つだし。
 それも結局、姉が妹に譲るんだよ」
亜弥「……」
吉美「そう。吉美も……浩美も、生まれて来
 ない方が幸せなんだよ」
亜弥「えっ!?」
吉美「あるんだよ……そう、生まれて来ない
 方が幸せな命って」
亜弥「!?冗談じゃねぇ!!」

○ 公園
野口「人は意味があって生まれて来たんだ!
 どんな身体でもよぉ!」
浩美「そうだよ!意味があって生まれて来た
 んだよ!その意味がわからねぇからジタバ
 タしてんだ!悪いか!」
野口「!?」

○ 東京究美会総合病院・屋上
亜弥「生まれて来ない方が幸せな命だって!?
 生まれて来なくたって、生きてるんだ!生
 きてるだけで幸せって事もあるんだ!!」
吉美「!?」

○ 公園
浩美「彫師で悪いか!やっと見つけたんだ!
 それが彫師だったんだよ!お姉ちゃんもあ
 んたと一緒だったよ!」
野口「……」

○ 東京究美会総合病院・屋上
亜弥「私は現世では生まれて出なかったよ。
 それでも、あんたの胎内にあって、幸せだ
 ったんだ!ただ生きているだけで、ただ命
 を感じているだけで幸せだったんだよ!」
吉美「……」

○ 公園
浩美「そのくせ自分は遺伝子にメス入れたん
 じゃねぇか!一卵性双生児だ!同一の遺伝
 子だ!それを操作して変えたんだ!二人の
 間に、家族にメス入れたんだ!違うか!?」
野口「……」

○ 東京究美会総合病院・屋上
亜弥「たとえ生まれ出る事はなくても、どん
 な運命にあっても……意味がなくて、命は
 宿らないんだ!!」
吉美「……」

○ 公園
浩美「どんなメス入れたって、お姉ちゃんと
 は、切っても切れないよ。でも……訴えて
 もお姉ちゃん、帰って来そうにない!」
野口「……」

○ 東京究美会総合病院・屋上
亜弥「また現世に生まれ出る事が出来なくて
 も……その幸福感を味わいたいの!その喜
 びを奪うなんて……絶対、許さない!」
吉美「……ごめんなさい」

○ 公園
浩美「なのに、その仕事も、加藤も捨てろっ
 ての!?やーっと、ものにしたのにぃ!!」
野口「……」
   浩美、お腹を摩る。
浩美「それに、この子だって……」
野口「!?……それ、知ってるのか?彼は」
浩美「……」
野口「……最低だな。無責任に妊娠させる様
 な男って」

○ 東京究美会総合病院・屋上
亜弥「……だから、責任もって妊娠させてよ」
吉美「……分かった。やるよ」
亜弥「思い出して。お母さんの好きだった事。
 喜ぶ事。相手の欲するところを施すのよ」

○ 公園
野口「でも、それなら吉美も本望だろ」
浩美「?」
野口「吉美も、やっと……見つけさせてあげ
 られたんだからよぉ」
浩美「!?……見つけさせて……あげられた?」
野口「そうだろ?見つけたんだろ?」
浩美「やっと見つけさせて……あげられた?」
野口「……前に取材したんだけど、上の子っ
 て、そんな子、多いらしいよ。面倒見て、
 成長させて、成功させて……で、喜んでる。
 だから社長とか指導者に上の子が多いんだ」
浩美「嘘?」
野口「損だって思う事も多いみたいだけど…
 …本心では、喜びも大きいらしい。吉美に
 仕事、批判されたって?そんな事ねぇよ」
浩美「……」
野口「逆に下の子は有能な、高い技術を持つ
 子が多い。一流スポーツ選手の多くは下の
 子……俺、兄弟居ないから、興味あって」
浩美「……」

○ 究極美術研究所・廊下(夜)
   真っ暗。浩美が歩いている。

○ 同・所長室(夜)
   浩美が入って来る。
   加藤が近づき、小さなケースを取り出
   し、開けてみせる。
   中には……豪華なダイヤの指輪。
加藤「妻とは別れる。結婚してくれ」
浩美「!?」
   浩美、吸い込まれる様に指輪を取り出
   し、そっと左薬指にはめる。

○ 東京究美会総合病院・廊下(夜)
   帰ろうとする直子の前に吉美が現れる。
直子「あら?あの、リカちゃん、ありがとう
 ございました。不二美ちゃん、大喜びで」
吉美「そう。そりゃー良かった……ね、少し
 だけ……付き合わないかな」
   吉美、チョコフレークを直子に見せる。

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
浩美「……」
加藤「分かるだろ?もしこの事が表沙汰にな
 ったら……ただでは済まない……かと言っ
 て、どうすることも出来ない。遺伝子操作
 はまだ未知の領域なんだよ」
浩美「……」
加藤「知ってるように、この研究所もタトゥ
 ー・スタジオも、究極の美の追求を目的と
 した……宗教法人の配下に形成している」
浩美「?」
加藤「その会員の中には色々な立場の人が居
 て……自然死……という事にも出来る」

○ 東京究美会総合病院・屋上(夜)
   吉美と直子が談笑している。
   影で亜弥が様子を見ている。
直子「面白い人」
吉美「君こそ……思ってた通りの人だ。ね、
 一度、手、見せて」
   直子、手を差し出す。
   吉美、直子の手を取り、掌で渦を書く。
直子「占い?当りそうにないわね」
吉美「当ったら……どうする?」
直子「当ったら?そうねぇ……」
吉美「今度は二人だけで王様ゲームをする」
直子「王様ゲーム?」
吉美「面白いよ。僕の予想では、二一世紀に
 は大流行する」
直子「ふうん。いいわよ」
吉美「ようーし!気合入れて行こう!!」
直子「(微笑)」

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
   加藤、背後から浩美を抱きしめる。
加藤「……分かってくれたかい?」
浩美「(指輪を見つめて)……」

○ 東京究美会総合病院・屋上(夜)
吉美「……あなたは、実は非常に食いしん坊
 です。お菓子で男に釣られる様な人です。
 非常に危険な女性です」
直子「(笑い)違う。やっぱり当たらない」
吉美「嘘!今も釣られたじゃないか!」
直子「チョコフレークだけは別よ。それに…
 …私は危険な女じゃないわ」
吉美「危険な女じゃない。でも……一寸突っ
 張った所がある?」
直子「!?」
吉美「当ったでしょ?」
直子「ううん。全然」
吉美「嘘だよ!インチキなしだからね」
直子「(微笑)」
吉美「いや、本当は突っ張った性格だ。だけ
 ど、それも責任感の強さや……面倒見の良
 さから来ている」
直子「私が?」
吉美「君には……妹がいるね?」
直子「!?」
吉美「ずっと妹さんの面倒を見て来た」
直子「初めて言われた。そんな事」
吉美「長女に生まれて、ちょっぴり損な役回
 りも多いけど、突っ張った所があるけど、
 実はロマンチストで健気で……可愛い人」
直子「(目を瞑り、首を横に振る)……」
吉美「嘘。人に甘えるのが下手だ。なかなか
 自分の本音を上手く出せない不器用な人」
直子「ううん……妹なんかいないし」
吉美「いない?あーそうか。先に結婚して家
 を出ちゃったね。そして、その妹が……主
 婦のくせにミニスカートを履いている」
直子「やだ。おかしい」
吉美「それが気に入らない。自分は履きたい
 けど履かない……似合わないと思ってる」
直子「もう、何?さっきから失礼な」
吉美「プレゼントするよ。絶対似合う」
直子「……」
吉美「(微笑)」
直子「そう……当らなかった罰ね」
吉美「喜んで」
直子「それに私を怒らせた罰よ。何か……私
 が喜びそうな事、して」
   吉美、微笑んで直子の前にひざまずく。
吉美「佐良直美の『世界は二人のために』を
歌いだす)」
直子「!?」
   直子、嬉しそうな顔で聞いている。
   吉美、歌い終わって、直子を見つめる。
直子「……ま、その歌は好きだから。許す」
吉美「光栄に存じます」
直子「変った人。ねえ……ここに来る前、ど
 こに居たの?どこから来た人なの?」
吉美「どこからって……案内しようか?」

○ 同・手術室(夜)
   真っ暗。吉美と直子が立っている。
直子「もっとロマンチックな所かと思った」
吉美「王様の命令は絶対じゃ。良いではない
 か。静かだし……誰もいないし」
   吉美、直子を抱きしめ、激しく求める。
   直子もそれに応える。

○ 同・屋上(夜)
   亜弥が空を眺めている。

○ 同・手術室(夜)
   吉美が直子を抱いている。

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
   加藤が浩美を抱いている。

○ 東京究美会総合病院・手術室(夜)
   吉美、直子から離れ、影へ歩いて行く。
吉美「!?」

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
浩美「!?」
   浩美の視線の先……リカちゃん人形。
   ラックの中に古い縫ぐるみや人形が詰
   め込まれている。そのひとつ。
浩美「あれは?」

○ 東京究美会総合病院・手術室(夜)
   吉美が若返っていく。

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
   浩美、ラックの方へ歩く。
加藤「昔ここが病院だった頃、入院していた
 子供が残していった物だよ」
   浩美、そのリカちゃん人形を取り出す。

○ 東京究美会総合病院・屋上(夜)
   亜弥も若返っていく。

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
   浩美の持つリカちゃん人形。見ると、
   薄い字で、「不二美」と書かれている。
浩美「!?」

○ 東京究美会総合病院・手術室(夜)
   吉美が若返っていく。
   そして、服を残し、姿を消してしまう。
直子「!?吉美さん?」

○ 究極美術研究所・所長室(夜)
   「不二美」と書かれたリカちゃん人形。
浩美「(見つめて)……(思わず、笑う)」

○ 満月(夜)


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