見出し画像

私、ただいま発酵中…⑧ 私は、天然醸造でありたい。

 伝統的な「天然醸造方式」という方法で造られる味噌は、仕込みから発酵・熟成させ、完成までにかなりの時間がかかります。1年以上かかるものも。その間に微生物たちがしっかり活動し、じっくりとうまみや香りを醸し出してくれます。一方、温度管理した設備で発酵を速めて大量生産する「速醸方式」という方法もあります。この方法で造られる味噌には、風味や色味を補うために調味料や着色料が添加されることも多いです。

 また、「本醸造方式」で造られる醤油は、まず醤油麹を造り、塩水を加えて仕込みをしてから1年近く寝かせて発酵させます。この間に微生物が働いてもろみができ、これを搾って生醤油を取り出して火入れをします。一方、「混合醸造方式」では、もろみにアミノ酸液や調味料を加えて熟成を速めます。「混合方式」では、発酵の過程はふまず、生醤油にアミノ酸液を加えて作ります。

 酢の伝統製法は、「静置発酵法」と言い、種酢を加えて酢酸発酵させる間、1年以上ただひたすら寝かせ、酢酸菌が働くのを待ちます。これに対し、「全面発酵法」という方法は、コンプレッサーで空気を送り発酵を速めます。アルコールや糖分、調味料などを添加してうまみを補います。このように、日本の発酵調味料を伝統的な方法で造るのには手間暇がかかります。

 ここで言いたいのは、微生物たちの本来の力を発揮してもらうには、一定の期間が必要だということです。その間に、ゆっくりじっくり、ぷくぷくと発酵が進みます。それを、人工的に速めようとすると、微生物たちの力が最大限に生かされないため、余計なものを足してうまみが調整されてしまうのです。これでは、せっかく私たちの体にいいものをいっぱい与えてくれる微生物たちの力がもったいないと思いませんか。

 そう考えた時、ふと思ったのです。「この子はまだ歩かない」「まだしゃべらない」「まだおむつが取れない」「まだ字が読めない」…と、育児書を見たり他の子と比べたりして心配になってしまう方も多いかもしれません。でも発達は一人一人違って、でも子どもはものすごいパワーをどの子も持っています。私自身、アスペルガー症候群です。大学では、様々な療育方法や手立て、支援のツールなどを学びました。もちろん、それらに一定の効果はあり、できるだけ発達初期で対応することも大切だと思います。

 でも、ゆっくり「待つ」ことも必要なのではないでしょうか。ゆっくりじっくり、その子のペースを待ってあげること。微生物たちの世界にも、めちゃくちゃなパワーでどんどん増えていくものもいれば、ものすごーくのんびり屋さんもいます。「早めに早めに…」といろいろ与えてしまう前に、ちょっと気長に「待つ」。そうしているうちに、その子の「そのまんま」の、本来の力が芽生えてくると思うのです。

 その子にとっての「わたし」という土台に、しっかりと菌糸をはり、その子にとっての「糀」(はな)を咲かせることができると思うのです。

 と、言いながら、私自身はというと、まだまだ宙をふわふわ漂っていて、土台もぼんやりとしています。まだまだ菌糸はぜんぜん伸びていないし、「糀」も咲かせることができていません。いつか自分にしか醸せない何かを見つけ、「糀」を咲かせるため、日々模索中です。


*画像は、いろいろな菌たちが共存してぷくぷく発酵している様子をイメージして描きました。人間の世界も、こんな感じになったらいいな♪

#発酵 #天然醸造 #子育て #発達障害 #共存 #待つ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?