PTSDとは?トラウマってなんで苦しいのが過ぎ去っていかないの?【トラウマの心理学】③
トラウマは、トラウマ体験の影響う影響によって生じる、心の傷です。
それでは、どうして心の傷の状態が、残ってしまうのでしょうか?
このように、こころが、ゴムボールのような、弾力のあるものだと想像してみましょう。
そこに、PTSDの判断の前提となる非日常の恐怖体験や、PTSDの前提とはならないけれど、日常的に繰り返されてきたトラウマ体験、人間関係の中でのトラウマ体験が、圧力を、こころのゴムボールにぎゅーとかけると想像してみてください。
トラウマ体験から、こころへ、ぎゅーと圧力がかかり、こころが縮んでいきます。縮んでいくにつれて、心の傷の症状である、神経のたかぶり、再体験・侵入症状、回避が現れてきます。
このようなトラウマ体験の脅威が過ぎ去ったとき、しばらくして、縮んでいたこころのゴムボールは、元に戻ろうとします。
元に戻ると、先ほどあった、心の傷の症状はなくなります。
このように、元に弾力的に戻り、心の健康を回復する力を、レジリエンスともいいます。
しかし、トラウマ体験が過ぎ去ったとしても、心が縮んだままになることがあります。
こころがゴムボールのようなものだとすると、ゴムボールにかかる圧力があまりに高い場合は、ゴムボールは圧力に負けて縮んだままになるかもしれません。
また、非日常の恐怖体験ほどの強さはないとしても、日常的に繰り返される苦痛な体験の場合は、断続的に、こころに圧力をかけるので、心の傷の症状が持続しやすいかもしれません。
このように、心の傷、トラウマとしてのこるのかは、起きた出来事の本人にとってのインパクトの強さ、つまり、本人にとって限度を超えた力であったとか、命にかかわるような切迫した体験であったり、性の被害など、なかなか誰にも言いづらいトラウマ体験の場合は、心の傷の症状として残りやすくなります。
また、子どものころのトラウマ体験は、こころが十分な強さを持つ前の出来事なので、傷になりやすく、トラウマとして残りやすいです。
体験の仕方として、繰り返される出来事であれば、トラウマ体験の強さはそう強くなくても、傷が治りかけたところにまたケガをするということになるので、これも、傷がいえずに、トラウマとして残りやすといえます。
誰にも気づかれなかったり、誰にも言えないような形で、トラウマ体験があった場合は、なかなか周囲の助けを求めることもできず、傷が深くなるばかりで、トラウマとして残りやすくなります。
ここで、お伝えしたいことは、このように、トラウマ体験に対して、心の傷であるトラウマとして苦痛が残るのは、人として自然な反応であるということです。
トラウマとして、苦痛として残ると、結果として、生活しづらくなったり、行動範囲が狭くなったりします。
これは、トラウマをかかえる人にとっては、もちろん、大変なことなのです。
でも、無意識という視点からはすこし、違うことが言えます。
無意識からのメッセージとしては、ケガをしているから休んでほしい、ケガをするような危ない状況には近づかないでほしい、ケガをしているから緊急事態のようにいつでも逃げ出せるようにしてほしい、ケアを受けてほしい、というメッセージであり、自分が生き延びやすくするための働きをしているのです。
目に見える、体のケガなら、自分も周囲も、休む必要性、ケアをうける必要性はわかりやすいです。
ところが、心のケガはなかなか見えません。
だから、トラウマへの理解をみんながしていくことが、見えないトラウマを見える化することになります。
そして、トラウマは心のケガであるので、それが治っていないのなら、治してほしいという心のメッセージはとても自然なことなのです。
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