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ビジュツノゲンバ -梅津庸一個展「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」、版画工房カワラボ!編 その4

梅津庸一さんの版画制作の現場をお見せするビジュツノゲンバ、連載中に展示会場でとんでもないことが起きたようです。


管理に問題があり、作品集特装版に付く版画作品が紛失したと梅津さんがツイートしています
これまでの記事で紹介したように梅津さんや工房が大変な労力と時間、経費をかけて作品を制作してきたことを考えると大変残念なことですし、このようなことを起こしては美術作品を取り扱う会社としては疑問を持たれるでしょう。単に店頭の商品が一つ無くなったという程度で終えず今後の対策を考えてほしいものです。




さて、今日はリトグラフを刷っているところを中心に紹介しましょう。状況は搬入前7~8日前というところでしょうか。



「これ見てくださいよ!すごい大変なんです!でも上手くいってるでしょう」
と、到着するやいなや見せてくれたのがこの版です。
リトグラフ用の版でしょうか。紙に描いた造形を重ね合わせて一つに合わせているようですね。



カワラボ!の工房奥には大きなリトグラフ用の機械が2台あります。本日はその大きな方を稼働させ刷るようです。リトグラフはプリンターの平川幸栄さんが担当しています。
過去に作った陶芸作品の写真製版銅版の上へさらにひし形が連なるリトグラフをプリントします。プリントの上に別のプリントを重ねる技術のレイヤーというだけでなく、自身の旧作品の記録の上にあたらしい作品を重ねるような作品です。
銅版技術は記録と伝達のための最新技術でしたが現在は表現のために追求されるようになっていて、そのような歴史を遡るような作品でもあると話していました。紙も相当良いものを使っているとのことです。
機械が前後に動く度に色が重ねられ濃くなっていくのですが、どの程度が適切か、梅津さんと平川さんは常に対話しながら進めていました。


写真製版のリトグラフの上に手彩色を施したものへさらにリトグラフを重ねています。どの作品に対して今回のリトグラフを重ねるか、それによってどんな効果がでるかは推測できるもののやってみないとわからない事が多く、一回一回が決断のようでした。緊張感はあるものの、面白い効果がでると、声が上がっていましたね。
手彩色が際立っているとあたかもドローイング作品のようにみえますが、リトグラフの上にのせるととたんに版画作品のように見える面白い変化がおきています。


リトグラフを刷っている間、梅津さんは銅版画制作に向かっていました。やはり大きすぎでは…。普通ならこれだけに取り組み、十分に個展の目玉になりそうなものですが…


銅版画制作をしている間もリトグラフのできを確認するため呼び出されていました。こんな作品もあります。


一方で別の小さな銅版画を刷る作業も進んでいました。


次々と作品を選びリトグラフを重ねていきます。この作品はリトグラフをプリントする前後が比較できる記録になりました。



大型の銅版画も刷られていました。
本番でなく試し刷りなのですが、このあと破棄すること無く別の作品に活かされます。



そして2Fの制作室、他の作業をしている間に手彩色がほどこされた作品が乾燥を待っていました。




本日の梅津さん差し入れ。


そしてカワラボ!のディナー。




梅津庸一作品集『ポリネーター』刊行記念展
「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」

会期 :2023年4月1日(土)〜4月19日(水)※終了⽇は変更になる場合があります。
時間 :11:00~20:00
会場 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM(イベントスペース)
主催 :銀座 蔦屋書店
協力 艸居、Kawara Printmaking Laboratory Inc.、安藤祐美、みそにこみおでん、シエニーチュアン、阿部宏史、美術出版社
お問い合わせ :03-3575-7755(営業時間内) / info.ginza@ccc.co.jp
https://store.tsite.jp/ginza/event/art/32671-1314100327.html


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