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ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 レポート

アーティスト主体のアートフェア、ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023が京都で開催されている。会期は2023年3月5日まで。

6回目を迎える本フェアは、これまでのアートフェアの枠組みを超え、次世代のアーティストが世に羽ばたくきっかけづくりの場として、また来場者とアーティストとのコミュニケーションを生み出す場として、回を重ねるごとにアップデートを続けて参りました。
今回、真宗大谷派(東本願寺)とのご縁をいただき、名勝「渉成園(枳殻邸)」もメイン会場のひとつとなり、サイトスペシフィックな作品を展開いたします。また、2022年からスタートした批評の重要性を改めて見つめ直し、批評家の育成と活動の助成を目的として行われる、若手批評家育成プロジェクト「歴史・批評 ・芸術」の詳細も決定いたしました。今回も沢山遼(美術批評家)と山本浩貴(文化研究者、アーティスト、金沢美術工芸大
学講師)がアーティストの作品の批評を執筆、書籍化し国内外へ発信いたします。フェア開催にあわせて、シンポジウムやトークイベントも開催いたします。
そして、「ARTISTS’ FAIR KYOTO」のコンセプトに共感いただいた企業とともに、過去に「ARTISTS’ FAIR KYOTO」に出品した作家などとコラボレーションし展覧会を開催する「ARTISTS' FAIR KYOTO:SATELLITE 2023 」やフェア開催直前に開催される「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARD」 授賞式、2022年に「マイナビ ART AWARD」で最優秀賞を受賞したGoh Uozumi 新作個展、「ARTISTS’ FAIR KYOTO」と連携し開催される、椿昇の個展やアーティストスタジオのオープンツアーなど、多彩なイベントが融合します。

プレスリリース


冒頭挨拶

3月2日、プレビューに先立ち、ディレクターらの挨拶とアートアワードの授賞式が行われた。


椿昇(ディレクター)

欧米では日常的にアートを購入し、それで生活ができているのだが、日本では戦後、アートが教養となって見るべきもので買うものではなくなり、アートの産業化を妨げ、才能のある者が筆を折ることになった。
それを改革するため大学では多くの反対を押し切りセントマーチンと同じく卒制をアートフェアにし、今でも引き継がれ、今年は全体で2000万を売り上げ、一人で500万を売る次のスターもいる。ギャラリーはついていないし、100%売上げも作家のものとなるので、生徒たちにはスタートアップ企業と同じだといつも言っており、作品は高く思われるが世界からみれば日本の上がらない給料並みに安い、アートワールドに近づけるためARTISTS’ FAIR KYOTOを始めたのでぜひご支援を求めたい。


株式会社マイナビより挨拶

マイナビは「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくるを目標にHUMAN RESOURCE(HR)・メディア事業領域で様々なサポートしており、アーティストの可能性を切り開き新しい一歩を踏み出すという点に賛同し2023年より協賛している。既成概念を覆し自由に想像力を喚起し、そして共感、考察を導くアートはビジネスでも注目される。世界に羽ばたく若手アーティストが生まれることを期待したい。


ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARD


3月2日、展示プレビュー前にARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARDの授与式が行われた。審査員は飯田 志保子(キュレーター)、竹久 侑(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)、中井 康之(国立国際美術館研究員、京都芸術大学大学院客員教授)、椿昇(現代美術家 / ARTISTS' FAIR KYOTO ディレクター / 京都芸術大学教授)。


優秀賞

明石雄

八島良子

山西杏奈

山羽春季


最優秀賞

宇留野圭






各会場の様子

京都新聞ビル 地下1階


宇留野圭

推薦:田村友一郎ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARD 最優秀賞


山羽春季

公募、ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARD 優秀賞


𡧃野湧

推薦:矢津吉隆


林玲翔

推薦:鬼頭健吾

WEB上の地図をダンボール表面全面へ印刷し、折りたためてどこにでも運べる安価な世界を作る。地図は既製品で、ダンボールもプリントも発注しており自分の手作業をほぼ排除している徹底さがよい。後ろの地図はダンボールへ使用した地図のプリントで折りたたみ線を記入したもの。
作品ビジュアルと解説に少しふわふわしたところがあるものの、コンセプト優先な作品で会場では目をひく作品だった。



京都府京都文化博物館

福本健一郎

推薦:加藤泉


鮫島ゆい

推薦:名和晃平


山中雪乃

推薦:Yotta


Johnsmith

推薦:池上高志

人間と簡単なプログラムで駆動するマシンそれぞれ交互にドローイングをさせている作品。ぱっと見でどちらが描いたものか判別しがたい。人間の想像性に対する疑念を喚起させ、人の思考自体が単なる電気信号でしかないのであればマシンとの違いはいったい何なのかを考えさせる。作家の固有性のみならずヒューマニズムを否定するようなこのフェアでは最もコンセプチュアルアートなのではないだろうか。ただ、アンチヒューマニズムを指向しつつも、結果的にヒューマニズムを考えざるを得ないところにこのテーマの難しさがある。


金属をさまざまな処方でさびさせている。人の手によるマチエールではなく、化学反応で様々な模様が自然に浮き出ることに美を見いだす作品。



渉成園

八島良子

推薦:Yotta、ARTISTS’ FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARD 優秀賞

アートで食えることを目標とするこのアートフェアにおいては異質な作品ながらフェアのアートアワードを受賞した作品。ヴィジュアルで人の目を惹きつけるというより、じっくり作品を観察し、丁寧に解説する作家の言葉に耳を傾けることが必要な作品でフェア向きとは良いがたいが、様々な社会的問題を包括させ象徴する作品は我々鑑賞者を動揺させる力がある。特にプロジェクトをリアルタイムで見てきた者にとっては拭いがたいなにかを作家と共有することになるのではないだろうか。

瀬戸内海の離島・百島(ももしま)で三元豚の雌「モモ」を育てて食べるまでの全工程を自身で行い記録する。2019年よりリサーチを開始、同年12月に母豚へ精子を注入して人工授精を行う。2020年3月末に生まれた子豚の中から「モモ」を選択して4月末より飼育をはじめ、2021年3月末にと畜した。家畜としての豚の生と死に向き合いながら自己の愛情の変化を探り、また文化や宗教における豚と人間の歴史的関係を踏まえたタブーや差別を考察する。「モモ」という名前は、ドイツの作家であるミヒャエル・エンデの児童文学「モモ」に由来している。

作者WEB

日々の記録はInstagramに投稿されていた
https://www.instagram.com/p/CKJmt0CDk_u/?hl=ja


飼育中に豚と水浴びする模様の写真と、その豚を屠殺し解体した際にはいだ皮。そこに屠殺から解体の模様が映されている。


解体した豚の各部位一つ一つを冷静に記録をとるよう撮影した画像をパネルにしたもの。


飼育した豚の皮は非売だが、販売した映像の上映の際に貸出したり作家が出張して解説するなど、上映権契約も検討しているとのことだ。




囲み取材では椿は次のように語っていた。
このフェアはヤノベら関西だけでなく、小谷ら東京藝大の人たちと一緒になってやっていて、くすぶってないヤツいないか常にリサーチし、彼らに何度もチャンスを提供している。
成功している作家は、値段をそれほど上げず地に足をつけ、支援する人がずっと応援できるロングスパンで活動しているが、グローバルシーンはいびつで、流行ったものにみんな流れ、モノカルチャー化する。SNS、そしてコロナでより酷くなったが、リアルな現場で人に会うことで元に戻るから、常に現場をつくる。大事なのはトラストとダイレクトだ。
このアートフェアでは天才はみつけられないが、もともとそういうもので、淡々と専門的な仕事としておかしいわけではなく、先輩に後輩が続き会社化することでアシスタントとして作家を雇い経済をまわす。ギャラリーにつかず自分でやっていけるし、システム化することで、変わっていけるはずだ。
アートシンギュラリティについては、AIが僕らを支配する状態で、アートも行く先どうなるかわからないし、全て置き換わり人間のアートがなくなる、つまりアーティストは表面的には一般社会人のふりをしながら、パブリックエネミーといえるようなプライドがないとインテリア、コマーシャルにあわせることになってしまうため人間の認識を変えることに挑戦する。
それでもやはり食えないといけないと最後に締めていた。
アートで食えないことに対しては徹底抗戦しようとしており、アートで食えるという状況を作ることはまさに革命だというニュアンスで話していた。

冒頭の話をふくめ椿の話を振り返ると、ギャラリーショーではなく、アーティスト主体のアートフェアという他にないフェアは、アーティストが経済的に自立しギャラリーシステムからの自立を目指す具体的な活動のひとつとしてマーケットに対する対応ともいえるし、マーケットの時代における椿による巨大な作品ともいえるのではないだろうか。




概要

日程
2023年3月4日(土)・3月5日(日)
(内覧会 3月2日、3日)

時間
京都府京都文化博物館 別館、京都新聞ビル 地下1階 / 10:00 ~ 18:00(最終入場17:30)
渉成園(枳殻邸)/ 9:00 ~ 17:00(最終入場16:00)
※涉成園(枳殻邸)のアドバイザリー展覧会のみ3月12日(日)まで開催

会場
京都府京都文化博物館 別館
京都新聞ビル 地下1階
渉成園(枳殻邸)


チケット
■ 京都府京都文化博物館 別館:
一般 1,000円/ 大学生 500円(要・学生証)/高校生以下 無料(要・学生証)
■ 渉成園(枳殻邸):
一般 2,000円/ 大学生 1,000円(要・学生証)/高校生以下 250円(要・学生証)
■ 京都新聞ビル 地下1階:
無料
https://art-ap.passes.jp/user/e/afk2023_bunpaku


画像はプレス向け内覧会で撮影したものです。無断転載はできません。

レビューとレポート