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ビジュツノゲンバ -梅津庸一個展「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」、版画工房カワラボ!編 その5

展示搬入まであと4日、直前の様子を今回は紹介したいと思います。


「ついに自分も箔を貼ることにしましたよ!」と、唐突に言われ何のことだかわかりませんでしたが、展示直前だというのに新しい表現を取り入れその技術を習得していたようです。作家がすぐこのようなことに取りかかれるのも工房制作ならではでしょう。箔はほんとうに薄く、貼るのも大変で、さらにけっこうクズが出てるうえに舞うので吸い込むと大変だと話していました。

 

展示用のポスターの制作に取りかかっていました。そもそも銀座蔦屋書店から求められておらずこのようなものは作らないらしいのですが、そんなことは関係なく必要なものとして全力で制作に取り組んでいました。阿部宏史さんがデザインした文字組に対して、パープルームらしく独自のレタリングを施していき、それをリトグラフにするというもの。ひたすら細かい作業が続いており、本日、助っ人にきていた方も急遽参戦していました。



レタリングしていた梅津さんがいつの間にか消えていたと思いきや、別の部屋で新作の制作をしていました。展示まで日がないというのに作品を増やして作業を増大させています。とんでもないですね。


別の箇所ではプリンターの平川さんが銅版画作品へリトグラフを施していました。銅版画のいわゆるマットにあたる部分へあえてプリントするため、マスキング部分を丁寧に決めていました。



リトグラフを上からプリントするため銅版画の制作をします。


銅版画のマット部分に手彩色が施され、そこにリトグラフがプリントされ、平川さんと梅津さんが色の出具合などを確認します。



そしてレタリング。全然終わる気配ないですね。
あんどーさんが別作業に取り掛かるため梅津さんに交代しました。


カワラボ!は雑然としているように見えますが、工房であり他の利用者もいるので作業終了毎に片付けが行われ工具は元に戻されますし、リトグラフのプリンターやプレス機は翌日使用するため丁寧に掃除がされます。しかし展示まで日がないのに作業がどんどん増えていく状況では片付けに手が回らず、梅津さんらしいいつもの修羅場制作現場のようになっていました。



手彩色を乾燥させていた作品、これは優品ですね。薄く溶かした油絵の具が独特な表情を作っています。この作品、搬入日にも乾燥しきっておらず、横にしたまま移動させるしかなくわざわざ専用の箱を付くって持ち込んだとか。


スマホでさっと撮った銅版の記録をそのまま写真製版してリトグラフにする作品です。記録として使われていた銅版画を最新テクノロジーのスマートフォンで撮影し記録、しかしそんなに性能よくないので画質は荒いですが、それをさらにリトグラフへ刷りました。手彩色も後で施します。





会場ではこんな感じになっていました。



制作で多忙の中、梅津さんは、銀座蔦屋から作品画像を送り価格を決めるよう催促されていたのですが、その時間を作れる制作状況ではありませんでしたし、商品のように価格を決めることと作品制作が一致せずノイズになっていたようでした。ギャラリーであればそれが業務ですし遂行するしかないですが、そのためにせめて制作現場を訪れどんな作業をしているか見て、何かしらのサポートを行うなど、作家への理解と適切なケアが必要でしょう。そうすることで信用を得られたのかもしれません。(取材中、作品の価格確認と画像撮影に一度来てはいました)。


カワラボディナー






梅津庸一作品集『ポリネーター』刊行記念展
「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」

会期 :2023年4月1日(土)〜4月19日(水)※終了⽇は変更になる場合があります。
時間 :11:00~20:00
会場 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM(イベントスペース)
主催 :銀座 蔦屋書店
協力 艸居、Kawara Printmaking Laboratory Inc.、安藤祐美、みそにこみおでん、シエニーチュアン、阿部宏史、美術出版社
お問い合わせ :03-3575-7755(営業時間内) / info.ginza@ccc.co.jp
https://store.tsite.jp/ginza/event/art/32671-1314100327.html


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