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いけそらのこと

ここ福井県池田町で有志がゆるりと立ち上げた、子育ち親育ちコミュニティ「いけだのそら」(通称 いけそら)。私たち親子も3年近く、ゆるゆると参加させてもらっている。

初期の頃から、息子はよくお友だちと喧嘩したり泣きわめいたりしていたので、その都度私は頭をフル回転させながら、どんなふうに対応しようかと探ってきた。

参加者の間に「信じて待つ」「見守る」という共通認識があったから、「仲良くしなさい」「謝りなさい」という強制解決の道は選ばずにいられたものの、初めの頃は早く状況が落ち着くようにどんな言葉をかけるか必死だった。「でもそれは違うんじゃない?」などと、息子の言い分を否定する事もしばしば。

そのうち、周りの子どもたちが仲裁に入ってくれたりするようになり、私も解決を手伝おうとあれこれ言葉を継ぎたくなるのをちょっと抑えるようになった(放棄したとも言う!?)。

月日の経過につれ、息子が喧嘩したり泣き喚いたりすることも減っていった。育ち隊(運営メンバーや保護者のことをこう呼んでいる)のみんなの「評価せず、解決を急がず、待つ」という空気のおかげだな、お互いに見守り合えてありがたいな、ともはや過去のことのように思っていた。

ところが先月。

イベントとして開催された、いけそらの体験会とトークカフェが終わって片付けを始める頃、聞き覚えのあるわめき声が。

外へ出て見てみると、息子は「もうぜったい許さん!ぶっ殺す!」と言って友だちを追いかけ回し、泣きわめいている。

トークカフェで、参加者の一人として体験談も発表させてもらい充実感を感じていた矢先、一気に顔も心もひきつる。「うまいこと話せたとか調子乗ってたけど、私たち親子は何も変わってない…」。

早々に引き上げて帰る車中でも、息子は泣きながら「もう絶対会わん!ぶっ殺す」と繰り返す。私も頭の中でグルグルを繰り返す。

ぶっ殺す、か…。こんな言葉いつ覚えたんやろう?さすがに私はこの子の前でそんな言葉使ったこと無いで?いや、でも今まで何回もキツい言葉吐いたり悪態ついたりしてるからな。私のせいでもあるんかな…。

なんて声かけよう?
「殺すっていう言葉はよくないよ」「自分も相手も傷つけちゃだめだよ」「からかわれても気にしない、忘れよう」…うーん、どの言葉も何だかしっくりこない。

そういえば私も、厳しい母とかいじめっ子に対して「死ね」って思ったことあるわ。そうか、そうやな、そんなふうに思うこと…あるわな。

こういうとき、さんまさんやったらどんなふうに答えるんやろう?もしかしたら「それは腹立つわ!やってまえー!」って、大げさに賛同したりするかな?あぁ、よく分からんこと考えてたら可笑しくなってきた。泣き続ける息子の隣で半笑いの私。

大切にしているおもちゃをぞんざいに扱われて嫌だ。からかわれて悔しい。そんな息子の今の気持ちをただ聴き、「なるほど」「そうか」と頷いてみる。

帰宅しても車から降りる気配のない息子の訴えをもう一度だけ聴き、「よし、家に入ってお芋食べよう」と促す。家に入ろうとする息子の背中に、私は思わず「お母さんは翼くんが生きてるならそれでいい」という言葉をかけた。息子は、まだ涙の残る目でまっすぐに私を見つめ返すと「僕はこの地球にいることが嬉しい」と言った。思いがけず大きな言葉が返ってきたもんでびっくりして、こっちが泣きそうになった。

自分が地球(自然)とともにあるという感覚、そしてそれを嬉しいと思えることは、何でもないようで、実はとても尊くて心強いことなんじゃないだろうか。いけそらを通して自然の中で、そして「信じて待つ」見守りの中で遊ぶ経験を重ねるうちに、そうした感覚が育まれてきたように思う。これまでも、これからも、いけそらありがとう。

いけそらから持ち帰った焼き芋は冷めていたけれど、とても甘くて美味しかった。

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子育ち親育ちコミュニティ
「いけだのそら」
日時:毎週火・土曜日 10:30〜14:00
場所:wacca(福井県池田町野尻)
参加費:1組 1000円
https://ikedanosora.themedia.jp/
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