夢で初恋の人に会ったこと 1

夢を見た。目が覚めたときも彼のことを鮮明に覚えていて、私は少し泣きそうになった。






「私たちが運命ならよかったのに」





私と彼の関係を表すなら、幼馴染みというよりはもはや腐れ縁だと思う。幼稚園・小学校・中学校も一緒。ただ家は歩いて10分かかる場所にあり、家に遊びに行ったことはなかった。それでも小学校一年生の時の地区のプール行事には、私と彼と仲が良かったもう一人の男の子とバスのふたりがけのシートに一緒に座って気づいたら、眠りに落ちた彼の頭が私の方によりかかり、ドキドキして寝れなかった。たまたま小学校の帰りが一緒だったら途中までふざけながら帰ったし、私と帰るときは彼はいつも少し遠回りをしていた。

小学校の時に流行ったプロフィール帳を交換した時、好きな人の場所に書く人がいなくて私はなんとなく彼を書いた。そしたらあっという間に私が彼を好きだと噂になり、からかわれることが多くなった。すごく恥ずかしくて泣いたこともあった。その後、彼も私を好きだと噂がまわったけれど、お互いを確かめることは一度もしなかった。

中学校は彼と二人だけで、学区外の場所に通った。二人とも同じスポーツをやっていたからだ。中学校でも三年間一緒だったのは先生達の計らいなのか。そこから私と彼の話した記憶はあんまりなくて、むしろ急雨に陰口を言い始めたのですごく嫌いだった。すごくショックだったし、悲しかった。2年・3年と彼と話すことはなく、私は別の人と付き合ったりしていた。

それでも、そんなある日。私と彼の話す人から意外な事を聞いた。彼が中学一年生の時、「すごく可愛いって私に毎日行ってきてて、うるさかったよ」って。でも正直、その時の私は彼のことが嫌いだったし、どうでもよかった。その後卒業まで一度も話すことはなくて、高校は別の場所へお互い行ったし、連絡先すら知らない。そんな人がなぜ、今になって夢に出てくるのか。



夢を見た。


教室にたくさんの小学校の人やら中学校の人やらがいて、私と彼の席は前後で、久々に話して、少し緊張した。それでもこうやって何年か振りに話せたことがすごく嬉しかった。その時中学校の頃の友達が隣に来てこう話した。

「こいつ、なんか急にお前のこと可愛くてどうしようもないから距離置き始めてさすごい不器用なことしてんなって思ってたのよ」

それを聞いた私は涙を流して、タオルに顔を精一杯押し付けていた。すごく嬉しかったし、すごく悲しかった。彼のいうことが本当なら私たちは、すごく何年もの間遠回りをしてきたと思ったからだ。でも私はただこれが聞けただけで幸せだなんて思った。






全部、全部私の都合の良い夢だって、わかってるけど。



これを聞けたから私たちの関係がやり直せるとか、あの頃に戻れないことははっきりわかっていたのかもしれない。

あのとき、彼も私を好きだったら、後一歩勇気を踏み出して聞けばよかった。

手を繋いだことも、キスもしたこともない人がなぜこんなにも心に残るのか。

それはきっと叶わなかったからだ。彼との未来が叶わなかったからこそ私はその先のありもしない事を想像して、悲しくなるのだ。

「私たちが運命ならよかったのに」と。

私と彼の道が交わることはもうないし、運命ではなかった、ただそれだけのことだ


きっとこれから先も、私の夢の中にはあのときのままの幼い彼が出てくると思う。






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