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『究極の学び場 京大吉田寮』を5月に刊行します


吉田寮ってどんなとこ?

2019年以降、京都大学が学生を訴えるという裁判のゆくえは注目され、寮生側に一部勝訴の判決がおりた今年2月以降はメディアでの報道はとくに増えてきています。

それまで京都大学と吉田寮生は話し合いで関係を築きあげ、学生による「自治寮」としての長い運営の歴史があります。

現在も訴訟は続いているところですが、吉田寮に集う現役寮生、またかつて集った元寮生などに、その場でどのような経験をし、どのようなことを感じ考えたのかを語ってもらうことで立体的に吉田寮という場所の魅力を描きだしたいという思いで本書を刊行しました。

吉田寮紹介パンフレットのすごさ

じつは、吉田寮生・寮外生は毎年、自分たちの手でパンフレットを作成しています。電子版でも無料配布されていますが、その内容の充実ぶりからも場の豊穣な魅力をうかがい知ることができるでしょう。

人文科学研究所の藤原辰史先生は、「団体交渉について」という文章を寄せられています。

文学研究科の伊勢田哲治先生は元吉田寮生で、1987年入寮時の「在寮期限」の経験を振り返られながら、思いをつづられています。


毎年、力を込めて制作、配布されるパンフレット効果も大きいのだろうと思いますが、裁判に揺れているにかかわらず今年も新入寮生がたくさん入ってきたようです。

2000年頃撮影 

文化を知識を形成する「京都啓蒙」

山森亮さん(同志社大学経済学部)の文章では、京大や吉田寮界隈の限定された地域に知を求める人びとが集中して居住することに注目しています。

エディンバラ旧市街がアダム・スミス(経済学の父)らのネットワークによる「スコットランド啓蒙」の流れを生んだように、この界隈も文化や知識を形成する役割があるとして「京都啓蒙」という語で考察されています。


現代の社会では、人間同士が役割、機能や金銭関係でのみ繋がることで成立する場所が、ほとんどではないでしょうか。

生まれ落ちた家族をのぞくと、いまの日本では役割や金銭関係をとりはらったとたんに、居場所を失ってしまう人は多いはずです。

日本で最後の「アジール」ともいえるこの場の多様な魅力を、ぜひ本書で感じ取っていただければ幸いです。

試し読みできます

本書の中身を、以下のリンクから試し読みいただけます。

ノーベル賞を受賞された益川敏英先生へのインタビューは、以下の記事で一部公開しています。

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