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クラシック音楽の敷居の高さはどこから来るのか?ーーー地方都市で海外アーティストを聴けるチャンスは無くなる?

今回は2本立てです。だいたいグチです。

クラシック音楽はなぜ流行っていないのか?を考えた時にまず思い浮かべるのは、年寄りが優遇されるシステムが構築されているから、という点である。

一般に、クラシック音楽は敷居が高いというイメージが流布されているが、その敷居の高さをより象徴しているのが、チケットの価格設定の高さである。実は、このチケットの高騰は最近始まったことのように思われる。

愛知には「クラシック名古屋」という会社があり、演奏会を企画・主催しているのだが、そのホームページに過去の演奏会が掲載されている。その中のいくつかの演奏会を見てみると、今とはチケットの値段が比べ物にならないものがある。10年前(2013年)の公演をいくつか取り上げた。

2013年1月
ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団
S席9000円
(※2023年公演はS席12000円)

2013年2月
フィルハーモニア管弦楽団/エサ=ペッカ・サロネン
S席18000円

2013年同月
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団/ヤニック・ネゼ=セガン
S席12000円

2013年4月
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団/ロリン・マゼール
S席26000円

2013年10月
イツァーク・パールマン
S席14000円

さて、海外アーティストのみを挙げた。さすがに、ウィーン・フィルやベルリン・フィルは今も昔も価格はほとんど変わらなかったが、サロネンやネゼ=セガンを見れば分かるように(どちらも世界的指揮者かつ世界的に有名なオケ)、今はこんな値段では聴けない、という公演がたくさんある。今は当時の倍以上はすると思う。

10年の間でこれだけ高騰するのには、色々な理由があると思うけれども、その理由を探るつもりはない。もっといえば、1席26000円でも十分に高い。つまり、海外の一流オーケストラを聴くということは、お金のない学生や働き世代の若い人たちにマッチングしていないということである。今では学生券やU25チケットが充実しているものの、数には限りがあるし、良席が保証されている物でもない。

演奏会に行った時に、2階の特等席やS席に座っている大半がお年寄りであることに気がつくだろう。はっきり言って、クラシック音楽はお金がかかるし、お金があるお年寄り達がチケットを買いやすいのは明らかなのである。

では、地方のオーケストラでリーズナブルに買ってはどうか?ということだが、なぜかシニアチケットや、シニアシートのようなものが設定されている演奏会や主催ホールが多い。こんな本末転倒なことがあるか?ということである。

一流オーケストラこそ、価格設定を何とかしなければ、若い人々が一流の音楽を聴く機会はもっと減るだろう。そして、その一流音楽家の演奏を聴ける「場所」も少なくなりつつある、という現状の話に繋がる。2本立ての2本目の話だ。

ここでいう「地方都市」を、愛知県に限定して話を進める。東京・大阪は基本的に演奏会機会が充実しているから考えない。

愛知県の某ホールは、クラシック専用ホールだけど、近年日本人の演奏家ばかり集めて(まあまあ有名どころを招聘して満足した気になってるのか知らないけど)、コロナ禍以前のような海外アーティストを招聘するような企画力の衰えが目に見えて分かる。しかも、マチネ(お昼)の公演だけになってしまって、「働きに出た後、少し立ち寄ってみようかな」という働き世代に向けたソワレ(夜)の公演を全くしなくなった。お年寄りが動きやすい時間に優しく、シニアシートや、お年寄り向けの企画は充実させて、若い世代をホールに入れようという気概は無い。ここにも、クラシック音楽が流行らない理由、つまりクラシック音楽の敷居の高さが浮き彫りになっている。お年寄りへの優遇システムの副作用がここにのしかかっている。

2024年にしらかわホールが閉館する今、もはや某ホールには期待できないので、愛知県のクラシック音楽文化にも期待感は無い。語弊があるので言い換えると、このように地方に住んでいては、海外で活躍するアーティストのような凄い音楽を聴くチャンスが巡ってこないのである。

それでも、我々のようなクラシック音楽愛好家は、限られたチャンスの中で魅力のあるよりよい演奏会を見つけ出しては、聴きに行ったり遠征に出かけたりする。愛知県で開かれる演奏会がひもじいわけではなく、もちろんぜひ聴きに行きたいと思えるような演奏会もたくさんあるし実際に足を運んでいるし、この地で活躍する演奏家も、招聘されるアーティストはほとんど全員一流だと思う。

しかし、クラシック音楽を一度も聴いたことのない人が、それを始める「入り口」となるのは、やっぱり素人でも「凄い!」と思えるようなプレイヤーの演奏会だと思う。そういうものに触れる機会を増やすためには、私にできることは限られるけども、できることはしたいと思う。

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