ドラフト2023④ 高校生投手

いつもはドラフトnoteの頭に持ってくる高校生編、この時期に持ってきてよかったと思っています。春先はまだ、「今年はそれほどか?」と思っていましたが、甲子園予選の頃には次々と大台突破する高校生や、アーチスト野手も台頭を見せ、少なくとも不作ではないなという気配になってきています。

今回は投手編、次回は野手編です。合計5つのnoteを書いた後で、上位指名予想をしてみようと思います。それでは本文!


【高校生右腕】

まず、ここ5年間の上位指名19人を眺めてみて気づいたことを。

・16人がMAX150km/h以上
・身長180㎝未満は2名のみ、身長183㎝以上が16人
甲子園出場や代表選出を果たしているのが14人
・2019年以降の15人のうち、1巡が11人を占める

このような傾向が見られます。特に4番目は少し驚くような内容ではないでしょうか。3巡目あたりで指名される高校生右腕がなかなか一軍戦力にならないという現実がシビアに受け止められているのか、どう転んでも1巡目は揺るがないような圧倒的な候補以外だと、上位指名がなかなか掴めなくなっているというのが現在のトレンドです。

もうひとつ、数字を並べます。MAX150km/h以上の高校生右腕の人数(※志望届の提出の有無は問わない。野手は除く)を、2008年から今年に至るまで羅列し、右には+身長180㎝以上の個人名(太字は上位指名)を載せます。ドラフトレポートさんを参照します。

2008 4人 甲斐
2009 3人 今村  秋山
2010 2人 西浦  一二三
2011 3人 北方  武田
2012 5人 大谷  藤浪  福田  星
2013 2人 浦嶌  三好
2014 5人 安樂  松本  佐野  藤井
2015 3人 純平  小澤  吉田
2016 8人 藤平  今井  島  濱地  小郷
2017 10人 吉住  山口  清水  牧  尾形  岡林  森井  古屋敷
2018 8人 引地  勝又  柿木  鈴木  定本
2019 14人 朗希  奥川  西  堀田  寛人  前  広輝  赤坂  飯塚  池田  西舘
2020 14人 宏斗  山下  中森  小林  田上  木下  内田  菊地  
2021 12人 風間  小園  森木  竹山  柳川  市川  細谷
2022 11人 優汰  響介  晴也  安西  赤羽  田村  別所  川原  バルザー    
2023 11人 日當  平井  木村  煌稀  史佳  平野  湯田  河内

2019年以降は常に10人以上で、そのうち身長180㎝以上の人数は8人前後。例年、この中から3人ぐらいは上位指名されており、甲子園出場経験や、身長などを踏まえると、日當直喜・平野大地・木村優人あたりが上位指名されそうかな、という印象です。(進学表明した選手は抜いて考えています)。

日當直喜(東海大菅生)

190/105という堂々たる肉体からMAX151km/hのストレート、マネーピッチでフォークを投げてきます。今春センバツでは17イニングで2失点、スタッツもまずまずでした。スペックで言えば今年の高校生右腕の中でもトップクラスです。

ただ、過去のドライチ右腕たちと比べると、エース級に育たないとおかしい、といえるほどの圧倒力はあるだろうか、という印象で、3~4巡目かなと予想します。投手育成に長けた球団なら育つかもしれませんが、フォームから見直していかなければいけないようにも見え、ヘタにいじって低迷させてしまうリスクを孕んでいるように思います。

平野大地(専大松戸)

高校入学してから、捕手から投手に挑戦。身長も181㎝あり、球速もMAX151km/hまで高めてきました。今春センバツでは初戦を完封勝利で飾り、2試合連続完投勝利。上位候補と話題です。センバツではスローカーブを投げる場面も多くありましたが、夏はカッターも投げるようになっているようです。

課題は、センバツのVS.広陵戦で露呈した感もありますが、ストレートに球速ほどの弾力がないように見えることでしょうか。センバツでも圧倒的なスタッツを残したわけではありませんでした。こちらも日當と同様、3~4巡目かなと思います。上位確定させるには、今夏の甲子園で凄まじい投球を見せれるかどうか、でしょうか。

木村優人(霞ヶ浦)

甲子園にはあと一歩届きませんでしたが、MAX150km/hのストレートに加え、身長185㎝と高身長。過去の例を見ても、身長185㎝からは、全国大会に行けなくてもドラフト上位指名されているケースは多いです。夏予選のスタッツを見ていますと四死球率2.00未満で、これは今年の上位候補右腕の中でもかなり優秀です。

特にネガティブな要素はないのですが、強いて言えばやはり全国での経験がないため、現段階のレベルが全国クラスなのかどうか把握しかねる面があると思います。彼もまた3~4巡目といった感じでしょうか。この3名とも、指名の流れ次第では上位指名に滑り込むこともありそうですし、下位にスリップすることもありそうです。

身長185㎝以上の投手で言いますと、MAX149km/hながら上位候補の一人と言われている坂井陽翔(滝川二)についても話さなければいけないでしょう。彼もまた高校から本格的に投手挑戦。フォームも悪くなさそうですし、変化球もとても良いとの話。夏予選のスタッツはまずまずでしたが、甲子園には届きませんでした。

まだまだ、高校代表に選ばれる可能性があるので、プロへのアピールの場がないわけではありませんが、実際に上位指名されるか?となると正直難しい面があると思います。日當・平野・木村の3名を完全に上回っているという客観的データが存在しないからです。ただ、たとえば3巡目は高校生投手で行く、と決めている球団があったとして、スカウトが意見を出し合う中、坂井が高校生右腕No.1です、という意見が通るなら、上位の可能性もまだあるでしょう。

上記の他の投手については、湯田統真高橋煌稀(仙台育英)は進学表明、河内康介(聖カタリナ)、平井智大(駿台甲府)は甲子園に行けず、高橋史佳(日本文理)に関しては甲子園登板こそあるものの、今夏の予選も含め、スタッツが非常に良くないという点が気になります。個人的には平井智大が、190/98の堂々たる肉体に加え、フォームも悪くなさそうで好みではありますが、四球がかなり多いので、支配下ギリギリぐらいかなという予想をしています。

身長180㎝未満の速球派右腕で言いますと、身長176㎝・MAX151km/hの早坂響(幕張総合)と、身長170㎝・MAX153km/hの今野一成(古川学園)が2強でしょうか。早坂はプロ志望との話ですが、今野はまだ分かりません。どちらもまだまだ未完成な面が大きいですが、高校生右腕の育つ土壌のある球団なら、指名してみる価値があるのではと思います。

【高校生左腕】

高校生左腕に関しては、MAX146km/h(できれば147km/h)以上だと支配下指名が見えてきます。もちろんMAXだけではダメで、先発として確かな実績があるかどうかが第一です。上位指名となりますと近年はほぼMAX150km/h以上が基本で、この数字に到達しているエース左腕なら、ほぼ確実に上位指名されています。ただ、これは右腕の場合も同じですが、いわゆる盛りガンにより、本当に出たのか?というようなMAX球速なら評価されないことも多々あります

今年はと言いますと、現段階で、MAX150km/h以上が3人、146~149km/hが5人です。2016年以降、高校生左腕でもMAX146km/h以上の投手はかなり増えていて、かつては上位指名確定だったようなこの数字でも指名漏れするケースすら出てきています。2008年以降で、MAX146km/h以上の高校生左腕の人数と、150km/h以上の左腕の名前とを、ドラフトレポートさんのサイトを頼りにして並べてみますと、

2008 3人
2009 1人 雄星
2010 3人
2011 2人
2012 4人
2013 3人
2014 3人 塹江
2015 2人 小笠原
2016 7人 寺島 堀 古谷 高橋 高山
2017 7人 金成
2018 5人
2019 5人 及川
2020 5人 松本
2021  10人 木村 泰 松浦
2022 9人 門別
2023 8人 東松 仁田 福田

2008年以降、150km/h以上の左腕が3人以上いるのは2年ぶり三度目。ただ、2年前も実際に上位指名されたのは1人だけでした。今年は東松と福田が上位かな、と予想します。

東松快征(享栄)

178/89という、はち切れそうな肉体からMAX152km/hのストレートを投げ込む武骨な速球派。ストレートで制圧できる相手なら手も足も出させないような投球を見せます。スカウトが口をそろえて「上位候補」と言うだけの凄味があります。

ただ、ストレートに対応されてしまうと脆さがあり、今夏の予選でも愛工大名電に攻略されて序盤に大炎上してしまうという場面がありました。今のところ甲子園出場経験はありませんが、高校代表候補に選ばれており、代表選出されて活躍すれば、まだ1巡目の可能性もあると思います。

福田幸之介(履正社)

ライバル・前田悠伍のMAXを追い抜き、150km/hに到達。今夏はついに前田悠伍を押さえて甲子園出場も果たした履正社の左腕。四球が多かった投手でしたが、今夏は許容範囲内に収めており、開催中の甲子園でも好投しています。

マイナス要素を挙げるとすれば、まだ球が抜ける場面が少なからずあるように、本当の意味で制球難を払拭したかとなると疑問が残るという可能性でしょうか。さすがに1位どうこうの投手ではないと思いますが、2-3巡目での指名は十分にあるのではないかと予想します。

仁田陽翔(仙台育英)はいわゆるエース格ではなく、リリーフで投げたり、先発しても5回まで投げ切らないことが多いので、上位どうこうではないと思います。今春までは四球が多い投手でしたが、今夏はかなり減らしている点を踏まえると、5巡目前後での指名はありそうです。どうやらプロ志望とのことなので期待したいです。

前田悠伍(大阪桐蔭)

浪速の浮沈艦。3年生になってからはあまり公式戦での登板は多くありませんでしたし、指の皮がめくれるアクシデントもあってスタッツも良くないですが、そんなことを感じさせないぐらい、甲子園の通算スタッツを見ていても全ての数字が圧倒的です。

強いて言えば、MAX148km/hでまだ150km/hに届いていない点ぐらいしかマイナス要素はありませんが、ここからビルドアップすれば1年もあれば突破しそうな数字ですし、気にすることもないかなと思います。入札する球団があるかどうかは分かりませんが、宮城大弥(オリックス)のように外れ1巡での指名の可能性も含めれば、最初の12人に入ってくる可能性は高そうです。同タイプの石田隼都(巨人)は4巡目でしたが、彼よりも出力は高いでしょうから。

他の146km/h以上の面々ですと、杉山遥希(横浜高)はスタッツがそこまでよくない点が気になりますし、黒木陽琉(神村学園)は四球の多さが気になります。須藤奨太(明和県央)は被安打が多すぎるのがリスキーですし、そもそも黒木と須藤はプロ志望なのかも正直わかりません。武田陸玖に関しては、野手編のほうで取り上げようと思います。

おつかれさまでした!

まだ甲子園で勝ち残っている高校に所属している投手もいますし、高校代表もまだ発表されていないので、今後さらに評価を上げる投手もいると思いますが、ひとまずここで区切ってnoteにまとめました。

最近は上位指名の大学生投手でも、一軍主力先発になるまで2年ほどかかることも多いことを踏まえると、高校生投手を上位指名するのであれば、2~3年目には大学生投手なら1位指名されるようなレベルにまで伸びないと、上位指名した意味が薄くなりますから、高校生投手の上位指名はかなりシビアに見られるところがありますね。

次回は高校生野手編について書きます。今年の甲子園が終わる頃には書き上げたいと思います。それでは、またねー。

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