ドラフト2022を俯瞰してみる

各球団の振り返りも終わりましたので、今度は視点を変えて、ドラフト2022の上位指名および支配下指名について俯瞰してみようと思います。ドラフトにおける優先順位は、もちろんその年の上位候補たちがどこまで突き抜けているかによっても変わってきますが、大まかなトレンドの流れも存在します。それらを見ていくことで、今後のドラフト予想の精度を上げられるのではないか、と思っています。

1 上位指名について考える

昨年も作りましたが、カテゴリ別・ポジション別に、2つのグラフを作りましたので、まずはそれをご覧ください。

昨年は上位指名の高校生野手が少なめでしたが、今年は例年程度の人数まで回復。今年は高校生が練習不足の影響からかあまり本格化していないと言われていましたが、上位指名の野手という意味で言えばむしろ増えているというのは興味深いところです。

昨年とても多かった大学生野手はさすがに少し減りましたが、それでもここ6年で言えば2番目に多い人数で、相変わらずの人気ぶりです。野口泰司・山田健太の指名漏れというショッキングな出来事があったにしてもこの人数なので、しばらくは大学生野手が9人前後は上位指名されると考えてもいいのではないでしょうか。

減ったところで言えば大学生投手が2名ほど減っていますが、昨年の大学生左腕バブルから一転、今年はMAX150km/h以上で実績もある大学生左腕がほとんどいなかったので、その影響かと思います。なお、昨年は4名のみだった上位指名大学生右腕は、今年は6名と微増しています。

ポジション別に見ますと、今年はついに、上位指名での投打の割合が50:50になりました。これまでのデータを全て洗い出したわけではないですが、どんどん野手の割合が増えてきて、今年ついに、という感じなので、この割合が翌年また急に変わるというのは少し考えにくいと思います。

その野手についてですが、昨年かなり多かった外野手が今年また更に増えて、ここ6年で最多の人数に。分かりやすく言えば、強打でCFも守れる選手の需要がかなり高まっています。

今年は二遊間が強い、と言われていましたが、蓋を開けてみれば昨年から1人増加していますが、大幅に増えるには至らず。昨年もそうでしたが、「守備は上手いが打撃に不安のある二遊間」よりも「打てる外野手」のほうが上位指名されやすくなってきています。

さて、ドラフトの前、こういうツイートをしましたが、これについても少し考えてみます。便宜上、上から順番に数字を打ちます。

❶全員が該当しています。森山暁生がMAX146km/hで上位指名というのは少し意外でしたが、ギリギリ満たしています。左腕と言ってもMAX148km/h未満だと少し上位指名としては怪しくなってきます

❷今年、かなり例外がありました。身長180㎝未満の高校生外野手が上位指名されることは稀で、仮に指名されたとしても、代表経験や甲子園出場経験がある場合ならあるいは、という感じですが、今年は代表や甲子園の経験のない、身長180㎝未満の高校生外野手が2人も上位指名されています。ただ、どちらも50m6.0で、肩も強く、打撃の破壊力もある選手です。今年に関しては、浅野翔吾という存在もいたからなのか、身体能力が高くて打撃力があれば、身長が少しぐらい低い外野手でも高評価されたということなのでしょうか。この傾向が翌年以降も続くようだと、上位指名予想の精度も上げられそうです。

❸少し説明不足がありまして、大学生や社会人に関しては、身長180㎝はそこまで壁ではありません。高身長という伸びしろがなくても、完成度が高ければ特に支障はないからです(それでも右腕の場合、身長175㎝はひとつの壁になってきます)。
ただ、甲子園未出場の身長180㎝未満の高校生右腕が上位指名されたのは少し驚きでした。2017年の石川翔(中日2巡)以来ですのでそこまでレアな出来事ではないですが、身長の低い右腕でもそこまで気にしないオリックスなので有り得たのかもしれません。

❹今年は高校も大学も代表チームが招集され、特に大学生に関しては、代表候補も含めれば、上位指名された16名のうち13名までもが該当しています。逆に、高校生に関しては、甲子園出場組ばかりが代表に選ばれたということもあるかもしれませんが、地方予選どまりの選手の上位指名が目立ったなという印象です。それでも野田海人が上位指名されているあたり、高校代表なんて何の意味もないというわけではなさそう。

❺昨年は代表招集がなかったため、全国や代表の経験のない東都や六大学所属者の上位指名も多かったですが、今年に関して、それに当てはまるのは田中千晴ぐらいだったかなという印象です。

❻今年は全国や代表の経験がない選手のうち、身長185㎝以上もあろうかというビッグサイズの選手がそもそも少なく、これに当てはまりそうなのは斉藤優汰古川雄大田中千晴だけだったと思います(イヒネイツアが身長188㎝あるという噂もありますが信憑性は薄いです)。むしろ、身長180㎝未満の高校生の抜擢が目立ったという印象です。

❼少し前にも触れましたが、井坪陽生・西村瑠伊斗が50m6.0以下で(身長180㎝未満の外野手ながら)上位指名に選ばれています。ただ、もちろん、足が速いだけで上位指名というのはさすがに厳しく、+αで何ができるかが大事。守備が上手かったり、長打力があったりというのが問われます。とはいえ足はそう簡単に速くなるわけではないですし、瞬発力の証明なので、かなり大事なファクターです。

最後にもう一つ、自分のツイートを貼ります。

内田湘大と甲斐生海、加藤豪将の上位指名は意外でした。内田と甲斐は一塁メインだったので、上位は厳しいなと思っていましたが、前者はサードへのコンバート込みで、後者は外野手の可能性も見られているようです。とはいっても、どちらも全国や代表の経験はないですし、かなりポテンシャルに期待しての上位指名ではあります。
加藤豪将は指名順位が読みづらい選手ではありましたが、多田野数人(外れ外れ1位)と同等と考えると上位指名でも妥当といえば妥当です。既に、契約金と年俸をあわせて1億円という、多田野をもしのぐ契約を交わしたそうです。

上位確実と思われていた中では、安西叶翔が37番目の指名という、加藤豪将を除けば上位指名だったので認めてほしいぐらいですが、青山美夏人の4巡目というのは驚きでしたし、田中幹也の6巡、河野佳の5巡も意外でした(河野は現在、入団するか否か不明という状況です)。
青山は渡辺翔太より上の順位と思っていたら彼より下だったので、この両者の今後の成績は見てみたいです。田中幹也はフルシーズンでプレーできない可能性が高いことが、上位だと厳しいとみられたのかもしれません。河野佳は解禁年である今年のパフォーマンスの低さが、指名順位にも直結してしまったということでしょう。

川原・山田・野口に関しては、スリップどころか指名漏れというショッキングな結果でした。身長もフィジカルスペックも、球速や長打力もある選手たちの指名漏れは予想できず、twitterでもどよめきが起きました。順位縛りもあったのかもしれませんが、その場合、次の指名機会にはぜひとも指名されてほしいところです。
ただ、進学ならまだしも、社会人野球からプロに行く場合は就職ではなく転職なので、よほどの低い順位の場合、挑戦したものの3年で無職になる可能性もありますから、社会人野球の舞台で長く輝くのもひとつの立派な生き方だと思います。高校や大学で野球を続けるのは、途方もない金額がかかることなので、まずは親に恩返しするという判断も素晴らしいことです。

※なお、27名まで当てれたら上出来と考えていた僕の上位予想は、23名という散々な結果に終わりました。ドラフト1巡目の12人を全て当てたまでは良かったですが、澤井廉・田中晴也は迷いつつもリストから外してしまい、安西叶翔は37番目でニアミスという惜しい展開でした。ただ、今年、加藤豪将を上位指名と考えていた人は見かけなかったので、今年は35人予想だと考えれば、26人まで当てれたら上出来だったのかなと思います。

2 支配下指名について考える

これに関しても、2種類のグラフを作りました。

昨年と比べると、高校生投手が減っていますが、むしろ昨年の数字が多かったという感じで、例年と近い人数だと思います。上位でも多かった大学生野手は下位指名でも多く、ここ6年で最も多い人数になっています。2020年・2021年は大学生投手のクオリティが総じて高く、全体の人数も多かったですが、今年はそれ以前の数字に戻っています。

ポジションで見ても、今年は投手が少ないですね。ここ6年で最少です。支配下全体で見ても、昨年は二遊間の指名が少なかったですが、今年は指名された3人の社会人野手全員が二遊間だったというところにも顕れているように、2019年以降の標準並みの人数へ回復。上位は貰えずとも支配下は勝ち取った格好です。

なお、近年はパワーアームのサイドスロー右腕がトレンドになりつつありますが、今年は大卒4年目の社会人右腕が2人も指名されており、トレンドの強さを証明しているかのようでした。一時期、下位指名の社会人投手が殆どいなかった時もありましたが、今年は7名が指名されており、2018年以前の数字に戻りつつあります。

あと、おそらく、このグラフを見て感づかれたと思いますが、今年は支配下指名の人数が少ないです。今年の支配下指名は68名で、不作と言われた2008年ごろの人数と近いです。そして、さらに注目すべきは、育成指名の人数が支配下指名の人数に肉薄しているということです。当初は限られた球団だけが指名しているという感じでしたが、今は育成指名に参加しないと驚きの目で見られるようになってきていますし、10名以上も指名する球団もひとつではありません。

ただ、言葉を選ばずに言いますと、育成枠は、支配下指名がプロ野球の正社員とすれば、育成は契約社員のようなもの。育成でもOKかどうかはよく考えて、後悔のない選択をしてほしいですし、自軍の育成枠の人数が多くてチャンスが巡ってきにくいようなら、他球団の育成へ移籍するのも手だと思います。

たとえば、元ソフトバンクの茶谷健太は支配下契約を切られ、ロッテへは育成選手としての移籍でしたが、ロッテ移籍後、1年で支配下契約を結び、2022年オフ現在、89試合に出場しています。プロは「誰かが見てくれている」ことに期待するのも良いですが「自分を見てくれ」とセルフアピールするのも大事です。好成績を残していても育成から上がれそうにないなら、他球団の育成に飛び込んでみるのも選択肢の一つだと思います。

他の着眼点でいいますと、候補は少なかったとはいえ、支配下指名された大学生捕手が吉田賢吾だけ、それも6巡目というのは驚きでした。野口泰司のみならず、石伊雄太の名前もありませんでした。これは数年前から思っていますが、今のドラフト、支配下指名されただけでも、少し前の上位指名のような重みがあります。6~7年前の上位指名クラスが倍の人数に増え、彼らが6巡目までを埋め、それまでの下位指名クラスが育成指名されているような状況です。それだけ、3巡目以降が実力拮抗しており、指名の読みづらさが増している気がします。

ただ、2015年頃まで何人もいたような、なぜ上位指名されたか分からないサプライズネームに関しては、今は考えなくていいところまで来ています。何かしらのポイントが気になって上位予想から外したものの、実力に関しては疑いない選手がランクインしているという印象です。

●おつかれさまでした!

最後にもう一つだけ、自分のツイートを貼ります。「指名漏れ」と書いてありますが、社会人に関しては、指名を希望していたのか分からないので、「名前が呼ばれなかった」とお考えください。

ざっと名前を思い出しただけでもこれだけの方々の名前が、育成指名にもありません。喜びの裏で、おそらくそれ以上の人々が悔しい思いをしています。彼らの名前を思い出すたびに、こちらも心にズシリと重いものを感じます。指名された方々は、指名されたかった多くの方々に「勝てねえよ」と思わせるような活躍をしてほしいものです。

10月下旬はありがたいことに、プライベートで多くの楽しい予定があり、ドラフトのことを振り返るnoteを書く時間が取れませんで、今更になっています。今月はぼちぼち、時間があります。書けそうなときに書いてnoteを投稿していきます。
次回は、指名された選手の中で、メカニクスが良さそうに見える選手をピックアップして紹介します。昨年も書きましたが、予想以上に好評だったので今年もやろうと思います。目標は今月中旬です。それではまた次回。それまで、僕も皆様もお元気で。

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