投球メカニクス(右腕)の観察点 前編

やっほーみんな息してる? みしマンです。前々回と前回の2回を使いまして、自分が言語化できるギリギリまで考えて、打撃メカニクスに関してのnoteを書きました。今回は投球編に移っていきたいと思います。なお、右腕と左腕それぞれについて話すと、説明が長くなってしまうので、何も注釈がない場合は、右腕について話すことにします。前後編の二本立てです。

●投球と打撃、どこが違う?

投球と打撃との大きな差は2つあると思っています。ひとつは、打撃は受動的動作なのに対し、投球は主導的動作であるということです。タイミングを測ったり、途中でやめたりする必要はありません。クイックモーションですと時間の制約がありますが、せいぜいそれぐらいでしょう。

もうひとつは、打撃より遥かに故障の確率が高いということです。先発投手は毎試合、100球かあるいはそれ以上も投げるのですから、出来る限り、肘や肩に負担の少ないようにしないと、痛みでパフォーマンスが落ちたり、手術しないといけなくなってしまいます。速く強い球を投げ続けられるかどうかはもちろんのこと、身体への負担が少ないかどうかは、メカニクスを見るうえで欠かすことのできない視点です。

●開始前

それでは実際に、フォームの最初から順を追って見ていきます。

開始前 足上げ 並進 トップ形成 腕の加速 リリース リリース後 

の7つについて書いていく予定です。前編では「並進」まで書きます。

開始前の形は大きく分けて3つです。走者がいるときのようにセットポジションで投げるか、ワインドアップ(ふりかぶる)か、ノーワインドアップ(ふりかぶらない)かです。足を肩幅ほどに開き、力まずに立てていられれば問題ないでしょう。

参考にする投手として、木下雄介投手(中日)と種市篤暉投手(ロッテ)を例にしようと思います。動画はこちらです。欲しい角度がない場合、違う動画も参考にします。この2人にした理由は後述します。両者とも常にセットポジションから投げる投手ですが、偶然です。

●足上げ

最初に「うで体」「あし体」について、雑にまとめます。自然と立った際、「うで体」は足の爪先に体重がかかりやすく、少し前傾気味なのに対し、「あし体」は足の踵に体重がかかりやすく、少し反り気味に立ちます。 「うで体」は左足を下ろす際、足が背中側に入って下半身が開きやすく、 「あし体」は背中側に入りにくく、下半身が自然には開きにくいです。  「うで体」はまず腕から始動することで、下半身も動いてくれますが  「あし体」は下半身から始動することで、腕をついてこさせます。

投手は小高いマウンドから片足で降りる動きがあるため、身体に素直な動きを心掛けないと無駄な力みが生じます。自分が「うで体」か「あし体」か知ることはとても有益と思います。筆者は木下投手が「うで体」で、種市投手が「あし体」と思っています。参考となるサイトを2つ貼ります。

では、両者が足を引き上げて立っているところを見てみましょう。

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「うで体」ですと、少し身体を捻り、足とグラブとを大きく引き上げて、上体と左足とを少し二塁側へ倒します。「あし体」はそのまま左足をまっすぐ上げ、股関節の高さまで膝を引き上げ、グラブは左膝のすぐ上に置きます(なのでセットポジションから始動する方が良いはずです)。片足で立つ際は踵に体重が乗りやすいため、爪先に体重がかかりがちな「うで体」には苦手な動きなのでバランスをとるため二塁側に体重をかけているのと、左足が接地する際、背中側に入りやすいので、少し上体を捻り、左足は巻き上げ気味に引き上げるのかなと思います。

ここで大切なのは、足を上げ切った際、軸足(右足)の股関節に体重を乗せ、踏込み足(左足)の股関節の少し下に潜り込ませる(軸足股関節に「はめる」)ようにできているかどうかです。二段モーションやヒールアップも、軸足股関節にはめるために行なうのでしょう。なお、ワインドアップは、ふりかぶった腕を下ろす反動で足を大きく上げることができ、ノーワインドアップは左足を一度後ろに引いてから動き出すことで、捻る動きに自然と勢いがつけられる効果があるのではと思います。ここで体重を軸足股関節に乗せておかないと、体重移動が不十分になり、フォームの後半で力を入れすぎたり、押し込むフォームになったりする恐れがあります。

●並進(前半)

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センターカメラと三塁側カメラとで、完全に同じフェーズではないのは申し訳ないです。「あし体」では、踏込み足を「く」の字のようにして踏み込むことが多いです。これは踏込み足が接地してから、地面を押し込んで、左の骨盤を押し戻し、骨盤を回すためです。「うで体」では「く」の字でないことが多いですが、佐々木朗希投手(ロッテ)のように、少し「く」の字のようになることもあります。

並進中は

①地面から見た場合に左右の骨盤が水平であるようにして

マウンドの傾斜から見た場合に軸足の股関節の上に踏込み足の股関節が乗っているような状態で

③頭を軸足股関節の真上あたりに置き

④あまり三塁側に上体を倒しすぎないようにして

⑤軸足を沈み込ませすぎないようにしつつ

⑥踏込み足股関節を少し内旋気味にして踏み込んでいきます

→①ができず、たとえば左の骨盤が右より上にあると、フォームの後半で今度は左の骨盤が下がってしまい、シーソーのような状態になって、上体が突っ込みやすくなってしまいます(コマンドも荒れます)

②ができていないと、体重が前方へまっすぐ動いていかず、踏込み足の接地後に下半身が横に回ってしまい、良くない現象を引き起こします(後述します)。①と②については過去にツイートしたものを貼ります。

③成人男性の頭部は体重の10%と言われています。「並進」の前半では体重は軸足股関節に残しておく必要があるので、頭の位置もその真上あたりに置いておいた方が良いと思います。ただし後ろに置いたとしても、目線は上げない方がいいでしょう

④上体を三塁側に倒すと、上体の回転が強くなる側面はあると思いますが、倒しすぎて上体の回転が強くなりすぎると下半身の体重移動が不十分になります。コマを回すと、その場にとどまろうとしますが、それと同じ原理です

⑤軸足を折りすぎ、沈み込むようにしてしまうと、体重が上手く前に移動しなくなります。低めに投げ込めるとして、かつては推奨された動きですが、強い球を投げ込むには不向きです

体重を、最後に鋭く前方へ移動させる準備をするためです。佐々木投手の別アングルの動画が参考になるかと思います。これをしないと、軸足にある体重が、並進の途中からゆっくり前に移動してしまい、下半身の開きも抑えにくくなり、体重移動のエネルギーも使いきれなくなります(回しこんで足を下ろす場合等)。また、回しこんで踏み込むフォームの場合、無走者なら安定しても、クイックだと体重移動が不十分になって出力が下がったり、出力を下げないようにするとクイックが遅くなったりする弊害があります。

●並進(後半)

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①軸足股関節がまだ内旋しきる前

②肩甲骨を寄せるような感覚で

③両肩のラインと同じ高さまで両肘を引き上げます

→①軸足股関節が内旋しきってしまうと下半身が前を向いてしまうので、まだもう少し耐えましょう。頭もまだ後ろに残し気味です

②手のひらを背中に向けるようにしながら肩関節を捻り、腕の力ではなく肩甲骨を寄せる感覚で両肘を持ち上げます

③両肘を両肩のラインと同じぐらいの高さまで引き上げないと、その後の動作に影響が出ます(持ち上げすぎても良くないです)。肘はあまり伸ばしすぎないように。肘を上から吊られるように持ち上げる感覚です。前腕に力を入れすぎない方が良いでしょう

グラブを差し出す向きについては、特にどちらを向けた方がいい等はないと思います。ただ、グラブを三塁側に大きく突き出し、壁を作って身体を開かないようにする意識はあまり持たない方がいいと思います。並進の後半、左肩越しに狙いを定めるという意味でも、あまりグラブを大きく三塁側に突き出すフォームは良くないかもしれません。あと、グラブを高く掲げるのは悪くないですが、それでも左右の骨盤は、地面から見て水平にしましょう。

「並進」は、エネルギーを溜める工程です。ここで肩甲骨の付け根あたりにエネルギーを溜め、下半身は捕手側へまっすぐ体重を移動させるための準備をします。このエネルギー充填をおろそかにすると、後半で無理に強い力をかけることになったり、上体が突っ込みすぎてしまいやすくなります。

●おつかれさまでした

投球メカニクスについて思うのは、打撃より遥かに個人差が大きいです。そのため、”こういうフォームで投げるのが良い”というより、まずはその投手のメカニクスを見て、このフェーズにはこういう弱点があると思うのだけどどうだろう?とか、このフェーズはとても素晴らしいので変えないように!というような指摘の方が的確なのだろうと思います。今回は木下投手・種市投手の動画を参考にしましたが、こういうフォームがいいのでみんな真似しよう!という意味で動画を使わせていただいたわけではないことは断っておこうと思います。個人的に、「うで体」「あし体」では、こういうフォームの投手が好きだなと思っただけのことです。

メカニクスの最後まで書こうと思っていたのですが、文字数が多くなりすぎたので、続きは来週に回します。途中までですが、よろしければ高評価していただけると励みになります。ではまた、来週お会いしましょう。



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