植物で振り返るオモイカネ杯~1株目~

やっほー! 植物たんこと三島彩子です。

普段はTwitterYouTubeで活動するVtuberにして学術たんと言われるアカウント群の片隅におります!
とりあえず植物が好きな人で、特に植物成分が好きです(ง ˙˘˙ )ว
あとクイズと美味しいラーメンが好きです。

そう、わたし、クイズが好きなんですよ。
本で読んだ、手で触れた、耳で聞いた、味わった、教わった、嗅いだ、調べた、これまでの人生で培ってきた全ての経験と知識を参加者同士が本気でぶつけ合うクイズが、好きなんです。
そしてバーチャルの世界には、そんなクイズ大会があるんです。その名も「オモイカネ杯」

主催者の思惟かねさんの言葉を借りれば「ネタ回答を笑う世間の風潮に反旗を翻し、高難易度のクイズを集め、正解者に惜しみない称賛の拍手を送る正統派のクイズ大会」です。
ここでは誰もが「衒学者」として後ろ指さされることを気にせず、思う存分全力で知をぶつけ合うことができる。そんなクイズ大会です。



2023年12月16日に第8回を迎えるこの大会は、毎回ペーパーテストの予選から始まり、本戦出場を希望した成績上位者16名が本戦に出場できるという流れになっています。
本戦では各出場者と大会主催者たちが作る問題を含め20問が出題され、成績上位者4名が決勝へ進出。決勝では全15問での勝負になります。

是非一度予選の問題も眺めてほしいんですが、普通に予選の時点で激ムズです。
仮に1問も正解できなかったとしても、全然おかしくないなと思える程度には激ムズです。慈悲などない。だが、それがいい。

それでいて、全く手も足も出ない問題ばかりではないんですよね。自分の持てる限りの知識を懸命に応用することで答えに肉薄できる問題や、極上のひらめきさえあれば正解できる問題がちゃんとある。そんな(少なくとも私にとっての)良問も揃っているのがこの大会の魅力の一つです。

熾烈な予選を突破して本戦にやってくるのはやはり猛者ばかりなのですが、そんな猛者でも正答者0となるくらいえげつない問題が待っています。
各出場者から繰り出される問題は「クセが強い」どころでは済まされない問題ばかりです。
問題文がラテン語だったり、古代中国の数学書から中国語で出題されたり、「これはリーマンのゼータ関数と言います」で始まる問題が出たり……。

そんな難問を突破した4名が競い合う決勝も当然のように超難問。
それでもちゃんと正解が出るんだからビックリよね。全編通じて正答率3割を目指して作られている問題群のはずが、終わってみると優勝者は8割近く正解していたりする。エグいて。

さあ、そんなオモイカネ杯の説明はこんなところにして、今日はこれまで開催された全7回の予選・本戦・決勝で出題された問題のうち、植物に関するものだけをピックアップして解説していきます。
では、まいる!

第1回本戦第5問

『英語ではlizard‘s tail、中国語では魚腥草(ぎょせいそう)などと呼ばれ日本三大民間薬の一つとされている植物は何でしょう?』

こちら、三島彩子さんの出題です。そうです、私です。私も出てるんです。第8回も予選応募しました。もし出たら応援よろしくね。

さて、答えはドクダミですね。

ドクダミ。なんかあんまり良い写真じゃないね。

日本にお住まいでお花を見たことがないという方は珍しいのではないかと思いますが、白い花びらのように見えるものは、実は花びらではなく総苞片というパーツです。真ん中の猫じゃらしみたいにモケモケした部分が、小さな花の集合体になっています。私はその様子を観察しようと地面にはいつくばっているところを近隣の小学生に見られて、それはもうすごい遠くを歩かれたことがあります。つらいね。

英語のlizard's tailはつまり「トカゲのしっぽ」という意味ですが、ドクダミの仲間にはこのモケモケがスラっと長い子もいるので、それでこんな風に呼ばれるみたいですね。同じドクダミ科のハンゲショウなんかを思い出す(もしくはググる)とピンと来るかもですね。ハンゲショウ属は学名のSaururusもギリシャ語で「トカゲのしっぽ」を意味する言葉が語源になっています。

それから、魚腥草ですが、この真ん中の「腥」という漢字に送り仮名で「い」とつけると何と読むか分かりますか? 正解は「なまぐさ-い」です。つまり魚みたいな生臭い匂いがする草だと思われているんですよね。英語でも他に「fish mint」という呼び名があるそうです。独特の香りの中にはデカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドなどのアルデヒド系の成分たちが含まれていますが、乾燥させると大幅に減ってしまいます。

日本では主に民間薬として使われますが、現在日本で医療用に処方される漢方薬148処方にドクダミ(生薬としては十薬と呼ぶ)を使ったものはないです。一般用漢方製剤(市販薬)であれば栝楼薤白湯(かろがいはくとう)と五物解毒散(ごもつげどくさん)があるかな。民間薬ってのは「おばあちゃんの知恵袋」的な感じでお茶とかにして使われるのこと薬で、漢方医学の理論に則って考えられた漢方薬とは区別して使われることのある単語です。

第1回決勝第7問

『化学工業が窒素固定に成功する以前、火薬に用いる硝石の原料としてたいへん重要であった、サンゴ礁に海鳥の糞や死骸が堆積し化石化した資源をなんという?』

植物どんぴしゃかといわれると微妙ですが、関係するので少し喋っときましょう。問題文では火薬について言及されていますが、肥料としても重要な資源ですからね。答えは「グアノ」ですね。DNAを構成する塩基ATGCのひとつであるグアニンはグアノから発見されたことでこれにちなんで名付けられました。

海鳥やアザラシ、コウモリなどの糞が堆積し、化石化したもので、窒素が豊富だったりリンが豊富だったりします。窒素やリンといえば、カリウムと併せて植物の三大栄養素なんていわれたりもするくらい、植物にとって重要な元素でして、作物を育てるための肥料に使われたんですよね。18世紀から19世紀を生きたイギリスの経済学者マルサスが著書『人口論』で触れているように、人口が増加していく中で食糧問題というのは極めて重大で、いかにして大量の作物を確保するかって話になった時に肥料ってのはとても大事だったんだよね。そう思うとハーバー・ボッシュ法がいかに偉大かわかるよね。

例えばTwitterでも話題のナウル共和国はリンを豊富に含むグアノを持っていたので、これを売って収入を得ていた国でしたが、資源の枯渇が問題となり、破綻状態となった過去があります。近年はまた採掘が開始されたみたいですね。

第2回予選第1問

『セリ、ナズナ、スズナ、スズシロ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザといえば春の七草ですが、この中で一番多いのは何科の植物?』
順番にセリ科、アブラナ科、アブラナ科、アブラナ科、キク科、ナデシコ科、キク科なので正解は「アブラナ科」ですね!

ホトケノザについては、「ホトケノザ」と呼ばれるシソ科の植物がいるんですが、春の七草でいうホトケノザはこの子じゃなくてキク科のコオニタビラコです。全然似てないです。
スズナはカブのこと、スズシロはダイコンのこと、ついでにゴギョウってのはハハコグサのことですね。
アブラナ科の植物はかつて十字花科と呼ばれていたように、十字型に4枚の花弁をつけることが特徴的で、野菜やハーブとして活用される子も多いです。

菜の花はアブラナ科。花びらが十字についてる。

ワサビもアブラナ科だし、辛子やマスタードの材料になるカラシナの仲間もそう。クレソンやルッコラもアブラナ科です。キャベツ、ハクサイ、チンゲンサイ、コマツナ、ブロッコリーもそうですね。
アブラナ科には、結構硫黄を使った辛み成分を作る子が多いです。大根おろしとかワサビの辛さですね。キャベツなんかもS-メチルメチオニンっていう硫黄の入った成分で有名だったりします。「キャベジン」って名前なら聞いたことある人もいるでしょう。ナズナに関しては、ついでに似た名前で同じアブラナ科(属は別)のシロイヌナズナも覚えとくと良いですね。
普通に生活していると効かない名前だと思いますが、植物で初めてゲノム解読された植物で、植物の研究とくればシロイヌナズナ抜きには語れないくらい重要な植物です。

第2回本戦第9問

『学名をBupleurum scorzonerifoliumといい、その根は四逆散や抑肝散など漢方に含まれる生薬になる、静岡県のある地方で良質なものが取れたことから名付けられたとも言われるセリ科の植物は何でしょう?』

こちらも私からの出題です。これは良い問題といってくれる人が多くてうれしかったですね。正解は「ミシマサイコ」、私「三島彩子」の名前の由来です。知識としてこの子を知っている人は少ないかもですが、答えが出ると「頑張れば解けたかも」と思っちゃう問題で、悶絶した方も多いんじゃないかな。
クイズとしては、まず静岡県のある地方というヒントから三島市を候補のひとつとして挙げられるか、そして、正答率3割を目指して作問しているのに、さすがに全くノーヒントの薬草に関する知識問は出さないだろうという読みができるか、辺りがキーになりそうです。

ミシマサイコ。散形花序っていう花の付き方をします。

ミシマの部分は、静岡県三島市が由来ですね。現在は主要な産地は宮崎県や熊本県、鹿児島県などになっています。絶滅危惧種ですが、普通に観賞用として買うこともできるみたいですね。時折ミシマサイコを見かけてつい買ってしまったという報告が届きます。うれしい。

学名についてはシノニム(すごく平たく言うと、正式でない学名くらいのやつ)がすごく多いので、後で見直すとちょっと微妙なシノニム引っ張ってきちゃったかもなあと反省しています。日本薬局方ではBupleurum falcatumとされていたりしますが、これはシノニムとされることが多いんじゃないかなと思います。ちょくちょく古い分類のまま更新されていないとこがあるんですよね、日本薬局方。
ただ、B. scorzonerifoliumもちょっと微妙で、今出すならB. stenophyllumとするか……いや、これもどうなんだろ。うーん難しい。

彩子……ではなく、柴胡(さいこ)という生薬の原料として知られており、この柴胡を使った漢方薬(柴胡剤と呼ばれる)も結構多いので、せっかくだから覚えておいてくれると嬉しいですね。中でも有名なのは、インターフェロンという種類の薬との併用で間質性肺炎という副作用を起こすことがあるとして大きく話題になった小柴胡湯(しょうさいことう)でしょうか。

第2回本戦第19問

『スペイン語 higado(イガド)、フランス語 foie(フォワ)、イタリア語 fegato(フェガート)など「肝臓」を意味する語彙の由来となった果物で、古代ローマの政治家 大カトーがカルタゴの脅威を強調するために演説で用いた故事で知られるものは?』

こちらラテン語たんからの出題です。自分以外から植物の問題が出ると嬉しく思っちゃいますね~正解は「イチジク」です!

イチジク属の学名がFicusですから、これを知っていれば、単語の見た目が似てるので一発ですね。同属にはガジュマルなど観賞用として有名な子たちもいますし、R Sound Designの楽曲『flos』にも出てきますね。英語でもfigです。元々はフォアグラのことを「イチジクいっぱい食べさせて太らせた肝臓」みたいに呼んでいたらそのうち省略されて、あろうことか「イチジク」の方が「肝臓」を意味する言葉として残っちゃったみたいですね。

漢字では無花果と書くように、一見花をつけずに突然果実をつけるように見えますが、花嚢という袋状の器官の内側に小さな花をいっぱいつけます。こういうお花の付け方は、イチジク状花序とか隠頭花序とか呼ばれます。

イチジク属の花。そりゃ無花果と書きたくもなる。

大カトーのエピソードは、すごくフランクに言うと、新鮮なイチジクを元老院の議員たちに見せて「ねえ見て! これね、カルタゴ産のイチジク! こんなに新鮮なの!! カルタゴの脅威はすぐそこってことだよ!!!」ってして元老院の議員たちが「マジかよカルタゴ滅ぼさなきゃ」ってなったよって話ですね。ですよね?



え。もう4700字……!?


これはちょっと1回では書ききれないかも……というか、読みきれないよね。
ってなわけで、まず初回は5問だけ解説して終わっておきます!
たぶんまた続きを書くからお楽しみにしてくれよな!!

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