僕の好きなアジア映画59: JUNG_E ジョンイ
『JUNG_E ジョンイ』
2022年/韓国/原題:정이/98分
監督・脚本:ヨン・サンホ(연상호)
出演:カン・スヨン(姜受延)、キム・ヒョンジュ(김현주)、リュ・キョンス(류경수)
Netflixオリジナルの近未来SF映画です。こういうスタイルの映画は普段僕はまず観ることはないのですが、いくつかの興味で拝見しました。
まずは監督がヨン・サンホであること。映画監督のみならず、アニメ監督であり脚本家でもあります。映画監督としての作品は『新感染 ファイナル・エクスプレス』など、僕の苦手なホラーなので、実は僕、彼の映画は観たことがありません。唯一観たのはNetflixのドラマ『地獄が呼んでいる』で、これも十分にダークでグロいドラマでした。
だからこの映画も恐る恐る観たわけですが、本作は近未来SFであり、戦闘型アンドロイドを、過去の優秀な戦闘員の脳を復元して、容姿まで同じにして量産しようとしているという設定です。興味深いのは近未来の地球の景観。その仄暗い造形は『ブレードランナー』的なディストピアを思わせます。さらにアンドロイドの造形も、流石にアニメーションも得意なヨン・サンホと思わせる精密で心踊るものでした。これはこの映画の魅力の一つでしょう。
そしてもう一つは主演のキム・ヒョンジュ。美しい女優で僕もファンではあるのですが、それなりに年齢が上の方で、どちらかというとスポーティーな感じではないので、こういうSF、それもアクションシーンの多いドラマは適役かなって正直疑問に思いました。弁護士さん役とかが似合う知的なイメージの方なのですが、実は前述の『地獄が呼んでいる』でも弁護士さん役ながら、アクションもしっかり演じていました。本作で素晴らしいアクションを披露しています。
物語は率直に言って、想像を覆すほどの新鮮味があるものではないけれど、映画全体の造形という点では感心させられます。またアンドロイドかどうかを、質問に対する回答で判別するといったエピソードはブレードランナーへのオマージュなのですかね。美術的な面から見ると素晴らしいし、キム・ヒョンジュのファンにも楽しめるかなぁと。たまにはこういう映画もありかな。
この映画のもう一人の主役、『シバジ』でヴェネツィア国際映画祭 女優賞を受賞している名優カン・スヨンは、この映画が遺作となりました。ご冥福をお祈りいたします。
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